純愛
ヒロイン名前設定
この小説の夢小説設定〇ヒロインの苗字と名前が設定できます。
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〇ヒロインの妹の名前が設定できます。
無しの場合は、『莉子(りこ)』になります。
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火事!?
『かかか、火事って…!?うちが!?なんで!?』
「落ち着け。早く逃げるぞ!」
『ま、待って!うえ着ないと…』
私は洗濯機に手を突っ込み、さっき入れたYシャツを出す。
『あれっ…どこ行った?』
「これを着ろ」
『!』
そう言ってクラピカは、自分の着ているYシャツを脱ぎ、私に強引に着せた。
「行くぞ」
『う、うん』
私の手を強く握り締め、上半身裸の状態でバスルームを飛び出すクラピカ。
リビングに出ても煙や炎が上がっている様子はなく、そのまま二人で玄関で慌ただしく靴を履いた。
リビングには莉子達の姿はなかった為、先に外に逃げ込んだんだと逃げるのに必死の中、頭の片隅で思った。
ガチャッ
ざわざわ…
外へ出ると、近所の人達や野次馬の人だかりが出来ていた。
「あ、お姉ちゃん!!良かった!」
『莉子!』
家から少し離れたところで、莉子達がいるのを発見。
莉子は少し泣きそうな顔をして、私に駆け寄る。
『どうしたの!?火事だって…?』
「う、ん…そうみたい…見て…」
『え?』
莉子の目線をたどると…
家のお隣さんの家のキッチンから、白い煙と炎が上がり、もうすぐ私達の家に届きそうになっていた。
『火事って…お隣さんの?』
「そうみたい…お姉ちゃんがお風呂に入ってすぐに、右隣のおばちゃんが来て教えてくれて。みんな直ぐに逃げなさいって」
『…………』
右隣のおばちゃんは、いつも私達の面倒を見てくれるおばちゃん。
炎が上がっているのは、反対の左隣の家だ。
「消防車はまだこないのか!?」
「このままだと、どんどん燃え広がるぞ!!」
近所のおじさん達が、慌ただしくしている。
そしてとうとう炎は発火先のキッチンから、私の家の屋根に火が移った…
「お姉ちゃん…どうしよう…お母さんもいないし…」
『…大丈夫だよ』
私は莉子の手をギュッと握った。
本当は全然大丈夫なんかじゃない。
不安で不安で仕方がない。
でも莉子の前なんだから、しっかりしないと…
「大丈夫だ」
っ!
その時、クラピカがボソッと言って私の背中をそっと撫でた。
具体的なことはなんも言ってないのに、クラピカがそう言うと本当に大丈夫な気がしてくる。
なんて頼りになるんだろう…
単に私が、クラピカのこと好きだからかな?
いや。
それだけじゃないよね…
ピンチの時、クラピカはいつも私を助けてくれるんだよ…
ウーウー…
ウーウーウーウー…
「消防車来たぞ!」
「みんな離れろ!」
消防車が二台、救急車も二台。
狭い住宅街にやって来た。
少しだけホッとする私…
「皆さんは下がってください!」
「怪我人はいませんか!?」
消防車と救急車から、それぞれの隊員が慌ただしく出てくる。
「凛ちゃん!」
『あ、おばさん…』
すると、野次馬の中からいつもお世話をしてくれている隣のおばちゃんが私に駆け寄って来た。
「無事でよかった~探してたのよ」
『おばちゃん達も無事で良かったです…』
「田中さんちのキッチンからの火災ですって!揚げ物やってたら、突然鍋から火が出たらしいわよ」
『そうなんですか…』
田中さんとは、炎が出た家の名前。
『それで田中さんは…?怪我とかはされてないんですか?』
「田中さんの奥さんは大丈夫よ。でも火を消そうとして近づいた旦那さんが、腕を少しヤケドしたみたいだけど…でもたいしたことないって。今のところ、他に怪我人はないって」
『そうですか…』
良かった…
.
「凛ちゃん達も本当に無事で良かったわ。火災に早く気づいて良かったわね…もし遅れてたりしたら…………」
?
おばちゃんは、私の後ろにいるクラピカを見て…急に黙り込んだ。
そしてすぐに、私を見て頬を赤くした。
「あら、そうだったのね…大事な最中に火事なんて、災難だったわね」
は…?
大事な最中って…
ハッ………!
私はクラピカのブカブカのYシャツを羽織り、中はブラ姿。
クラピカは上半身裸のまま…
私達って…
周りから見たら、アノ最中に火事になったみたいに見られてる…!!?
『お、おばちゃん!違うんですッ!!』
「いいのよっ!おばちゃん誰にも言わないから!お母さんにだって黙ってるわよ」
『だから違くって…!!』
どう言えば分かってくれるの~っ!?
「…プッ」
すると、私の後ろで拭き出して笑うクラピカ。
ちょっと!
あんたも笑ってないでフォローするかちゃんと否定なさいよね!!
近所で変な噂たったら、たまったもんじゃないよ…
「凛ちゃん!」
!
すると、火災元の家の主の田中さんの奥さん登場。
私を見つけて、走って近づいてきた。
「大丈夫!?ごめんね、本当に!私ったらうっかりしてて…も~なんてお詫びすればいいのか…」
田中さんは興奮状態で、今にも泣きそうになっていた。
『落ち着いて下さい!私達は大丈夫ですから…それより旦那さん怪我したって聞きましたけど、大丈夫ですか?』
「ええ。今ちょうど救急隊の人に看てもらってるとこよ。たいしたことないヤケドらしいけど、念のため病院に行くってい………」
『?』
会話の途中、突然私の胸元を見て固まる田中さん。
そしてその目は、私から後ろにいるクラピカに移る…
すると…
「う、うぅ~」
『た、田中さん!?』
急に目を潤ませ、今にも泣きそうになる田中さん。
「ごめんね~~~~~大事な日にこんなことして~~~~おばさんのことずっと恨んでもいいからね~~~」
田中さんは号泣し、大声で叫び始めた。
『だ、だから違うんです!私はお風呂に入ろうとしただけでっ!』
田中さんをなだめながら、誤解を解く私。
クラピカは肩を震わせて「ククク」と笑っていた。
そんなやり取りをしていたおかげか、燃え盛る炎を見る暇もなく、気がつくと火はぼや程度まで落ち着いていた。
そして火が完全に消え自宅を見た時、少し心が傷んだ…
「火は消えたけど…結構ダメージが残ったね…」
『うん…』
少量の煙が上がる中、莉子が呆然としながら私に話しかけた。
私の家の田中さんの家側の壁は、真っ黒になり所々燃えて穴が空いてしまっている。
火災に早く気づいたせいか、火は幸いにも早めに消されたけど、よく見ると爪痕は結構残ってしまった…
でも、そんなことあんまり言ったら悪いよね…
田中さんちは、1階のキッチンほぼ全焼だし…
「うわ~んあなた~」
「生きててよかったな~」
…………。
泣きながら抱き合う、田中さん夫婦。
けど、田中さんは結構元気そうだけど(笑)
普段からすごい明るい人だから、こういう災難があっても前向きに受け取れる人なのかも。
「…大丈夫か?」
すると、私の隣にクラピカがやってくる。
『…うん、平気。てかクラピカは大丈夫なの?寒くない?』
まだ上半身裸のままだけど…
「問題ない、9月だがまだ暑いからな」
『まあね…』
家の中に入って服取りに行きたいけど、まだ許可が出てないしな…
「心配するな」
『…!』
そう言って、私の頬をムニッとつまむクラピカ。
「凄い肉付きだな」
『や、やめてよ!』
クラピカの腕をペシッと叩く。
「そうその顔だ。お前はそうしていればいい」
『………』
クラピカってば、わざとやったのか…
私が落ち込んでると思って…
.
『ありがと』
ボソッとそう口にした後、少しだけ泣きそうになった。
家が少し燃えて悲しいからとか…不安だからだとかじゃない…
クラピカがいて、安心したからだ。
肩の力がスッと抜けたよ…
「お姉ちゃん、お母さんから電話…代わってって」
『え?お母さん?』
莉子が自分のスマホを私に差し出す。
お母さんに連絡したみたいだ…
私は莉子からスマホを受け取り、耳に当てた。
『もしもし?』
「ちょっと大丈夫なわけーーーー!!!!!!?ケガはーーーー!!!!!?」
う…
すっごいボリューム…
『大丈夫だよ。莉子からも聞いたでしょ?』
「聞いたけど心配よっ!!ったく火の管理はちゃんとしろよ、田中さん(42)!!」
お母さん…
さりげなく田中さんの奥さんの歳バラさなくても(笑)
「あ~心配よ、もうっ。こんなことが起きるなんて想定外だったわ」
『なにを今更…本当に私達は大丈夫だよ。クラピカもいるし…』
まるで自分の彼氏みたいな言い方しちゃった。
でも、今はクラピカに甘えちゃダメかな?
クラピカに頼れるって事だけで、凄く安心できるから。
それに、お母さんにだからいいよね。
「そりゃあ分かってるわよ。クラピカくんと同居させてて良かったわ…今回ばかりはお母さんも焦ったわ」
『私も。家が少し燃えちゃったし…』
「どれくらい燃えたの?」
『リビング側の壁と…あと屋根が少しだけ。二階はそんなに被害はないから、幸いだった…』
それぞれの部屋が二階にあるから、私物は全部部屋に入ってるし…
「…そう。家の事は心配しないで、お母さんが全部やるから…明日の朝一にそっちに行くから、明日は学校休みなさい。莉子にもそう言っといて」
『分かった』
それから少しお母さんと話して、私は電話を切った。
「お母さん、何だって?」
莉子にスマホを渡す私。
『明日来るって。家の事は心配しないでってさ』
「そう…」
不安そうな莉子。
私は莉子の肩に手を回した。
「家が燃えちゃうのって悲しいね…」
『そうだね…』
焦げた家から目をそらして、周りを見る。
野次馬は少し減ったが、まだ見物人は少なくはない。
これだけ近所の連中がいるなら、きっと莉子の友達にも伝わるはず。
明日は学校休むとしても、これから学校で莉子はどんな扱いを受けるかな…
私の通ってる高校はここから離れてるから、同じ学校行っててこの火事の事を知ってるのはクラピカとレオリオだけ。
きっと…私達から言わない限り、知られることはない。
だけど、莉子は違う。
莉子の中学はすぐそこだから、同級生はほとんど近くに住んでる。
これだけ見物人がいるなら、ほぼ知られててもおかしくない。
かわいそうとか…同情されるのは、ちょっとキツイかも…。
できればそっとして欲しい…
大丈夫かな、心配だな…
「莉子。コンビニでも行くか?のど乾いただろ?」
田中さんちの火事の後をレオリオと見ていたクラウスくんがクルッと振り返り、莉子に声をかけた。
「うん…お姉ちゃんたちもいる?」
『…お願いしてもいい?なんでもいいから』
「わかった」
莉子とクラウスくんは、二人で近くのコンビニへ歩き出した。
そんな二人の背中をずっと見ていると…
「あはは」
しばらくして、莉子の笑っている横顔が見え声が聞こえて来た。
クラウスくんと他愛のない会話をして、笑ったようだ。
「…莉子はクラウスに任せておけば大丈夫だ」
!
近くにいたクラピカが、私にそう言った。
.
『うん…莉子、結構落ち込んでるみたいだったから…クラウスくんがいてくれて良かったよ』
莉子とショックを共有できても、あんなふうに笑わせることは出来ないな。
そこまで、私には余裕がないよ。
「今何時だろうな。スマホ家の中だ…」
『多分10時は過ぎてるよね?』
きっともう11時近いと思うけど…
『ごめんね。クラピカ達は明日も学校なのに、遅くなっちゃって…』
「謝るな。お前のせいではない」
『でも…』
まだお風呂も入ってないし…
『家の中に入っていい許可が出たら、悪いけど今日はクラピカの家に帰ってもらえる?』
壁とかの修理が終わらないと、きっとうちにはしばらく住めないと思うし。
「ああ、そうしようと思っていた…家の中に入れる許可が出たら、お前と莉子も荷物をまとめるんだ」
『え?それって…』
「お前達も私の家に来るのだよ」
『………』
”お前達も”
”私の家に来るのだよ”
今のクラピカの言葉が、頭の中でこだまする。
『えええええー!-!!-!!!!』
そして私の声が、響き渡った。
ガコン
ぴっ
ウィーン…
クラピカの家のマンションの、エレベーターに乗り込む私達。
噂には聞いていたけど、クラピカの自宅はすごいでかいマンションだった。
あれから警察や消防士からの事情聴取などで時間を取られ、やっと家の中に入るのを許可されたのは12時過ぎだった。
それから最低限の荷物を持ち、私達4人はクラピカのマンションにやって来た。
レオリオは急遽、友達の家に行ってもらい帰宅した。
心配だからと言って田中さん夫婦が車で送ってくれたのだが、クラピカの家のマンションはうちから車で10分程だった。
こんなにゴージャスマンションが、クラピカの家だったなんて…
いや、前にちらっと自宅の場所を聞いてたから…なんとなくこのマンションの存在は知ってた。
けど…
中に入ってみると、思ったよりもすごいなぁ…
エレベーターもなんだか高級感を漂わせる感じだし。
エントランスも綺麗だったし、それになんといってもオートロックだし!
クラピカのお母さんって、すごいセレブ?なんだなー
海外に住んでる上、日本にはこんな立派な家を持ってるなんて…
エレベーターに乗りながら、そんなことばかりを考えてしまう私。
チーン…
エレベーターがクラピカの家の階に着く。
私達はぞろぞろとエレベーターを降りて、先頭を歩くクラピカについていく。
静かだなぁ…この時間帯だから当たり前だけどね…
廊下広いな~
何もかもが広くて、綺麗!
「ここだ」
クラピカが一番奥の部屋のドアの前で立ち止まり、ポケットから鍵を出した。
そして手慣れた手つきで鍵を開け、ドアをそっと開けた。
「…どうぞ」
「入れよ~靴は適当に脱いで~」
先にクラピカとクラウスくんが中に入り、家の中に入って行く。
私と莉子はやや遠慮がちに玄関に足を踏み入れて、キョロキョロと辺りを見渡した。
玄関も広~い…
綺麗にしてるし…
「…いつまでそこにいる。早く入れ」
あ…
荷物を置いて戻って来たクラピカが、私と莉子を呆れながら見る。
私は靴を脱ぐ前にピンと背筋を立てて、莉子の頭を後ろからグイッと押して、頭を下げさせる。
そして…
『お世話になりますっ!』
深々と頭を下げた。
「…!」
顔を上げると、クラピカはキョトンとした顔をしていた。
そしてすぐに、プッと吹き出した。
「お願いします!」
ちょっと恥ずかしくなりながら、靴を脱ぎクラピカの家に入る、私と莉子。
.
長い廊下を歩いていくと、広いリビングに出る。
リビングも凄く綺麗だけど、なんか綺麗過ぎるかな?
生活感がないというか…
まるで引っ越してきたばかりの部屋みたい。
でも、当たり前か。
クラピカは4月にここに引っ越してきたばかりで、すぐ私達と同居しちゃったから…
この家に生活感がなくて、綺麗過ぎて当たり前なんだ…
「部屋はこっちだ。二人で同じ部屋か別々か、どうする?」
「『一緒で』」
クラピカからの問いに、私と莉子は同時に答える。
「なら、一番奥の部屋で。あの部屋なら広いし、日当たりがいい」
『ありがとう』
「ありがとうございます」
また軽く笑うクラピカに、私と莉子はお礼を言った。
そして案内された部屋に入り、私は莉子と荷物の整理をしていると…
「風呂空いたけど…どっちか先に入っちゃえば?」
髪が濡れたクラウスくんが、私達の部屋を覗き込む。
いつの間にかクラウスくんはお風呂を済ませたみたいだ。
『クラピカは?』
「最後でいいって」
『そう…じゃあ一緒に入ろっか?』
私は莉子に目を向けた。
莉子は「うん!」と言い、私達はお風呂に入った。
『はぁ~サッパリ~』
「広くて綺麗なバスルームだったね」
お風呂を済ませた私と莉子は、髪をタオルで巻き、バスルームから出てリビングへ。
リビングには、クラピカとクラウスくんが床に手をついて何かやっているみたい…
『…何やってるの?』
私と莉子は、二人に近づいた。
「床拭きだ」
「兄ちゃんの手伝い~」
『え?掃除!?』
クラピカ達は、濡れ雑巾で床を拭いていた。
『どうして今やってるの?』
今、夜中の2時ですけど。
「客が来ているのに床が汚いのは、さすがに良くないからな」
『え!そんなっ…いいのに!全然汚くないし…気になるなら私がやるよ!』
「もう終わった。客に掃除をやらせるわけにはいかない。私は風呂に入ってくる」
「オッケー。片付けはオレがやっとくよ」
クラウスくんはそう言って、バケツや雑巾を片付けに行った。
なんか…クラピカ達にすごく気を使わせちゃってるな…
掃除なんて、本当いいのに…
でも逆に考えると、クラピカ達も私の家に来た時は、毎日こんな気持ちだったのかも。
だからクラピカはバイトしたり、私達の重荷にならないようにしてくれてる。
その行為がずっと分からなかったけど、今は分かった気がするな…
他人同士が生活するって難しいね。
「莉子ー俺の部屋でゲームやる?」
バケツを片付けたクラウスくんが、莉子に話しかけた。
「やるやる!その前に髪乾かして来てもいい?ドライヤー私の部屋なんだ」
「俺ので良かったら貸すよ」
「本当?ありがと~」
莉子は、クラウスくんの部屋に入って行った。
思春期の男女が、部屋で二人きり……
ちょっと心配になったが、私は自分の部屋に行きドライヤーで髪を乾かした。
髪を乾かした後、クラウスくんの部屋から莉子の笑い声が聞こえたりしてきて…
ちょっと安心した。
コンコン
「もう寝るか?」
ドキッ!
雑誌を読んでいると、開いていたドアをクラピカが叩いた。
お風呂上がりのクラピカは、髪が少し濡れていてタオルを肩にかけていた。
私は雑誌を閉じて立ち上がり、クラピカに近づく。
『どうしようかな…なんか眠れなくて』
「何か温かい物でも飲むか?お袋がよく飲んでいる紅茶があるのだが」
『本当?じゃあ頂こうかな…』
温かいものが、ちょうど飲みたかったんだよね。
電気を消し部屋から出て、クラピカとキッチンへ行く私。
『クラピカはまだ寝ないの?』
「ああ、私もまだ眠くないからな」
『そう…』
.
無理してないかな?
でも、私がそう聞いたとしてもきっとクラピカは『大丈夫』って言うはず。
キッチンに着くと、クラピカは棚からティーポットを出した。
『お母さん、紅茶好きなの?』
「ああ、コーヒーよりも紅茶派だな。…いい歳してコーヒーは未だカフェオレしか飲めないのだよ」
『ハハ、女の人はそういう人多いんじゃない?』
私もコーヒーは砂糖とミルク入れるし、莉子も同じ。
あ!でもお母さんはブラック派だ!
だけど、あの人は女捨ててるからなぁ(笑)
ガチャ
すると、クラウスくんが枕を持って部屋から出て来た。
『どうしたの?』
「莉子、ゲームやってたら俺のベッドで寝ちゃった。今日は兄ちゃんの部屋のソファーで寝ていい?」
「…ああ」
クラウスくんは「サンキュー」と言って、クラピカの部屋のドアを開ける。
『クラウスくんカッコイイーーー♥』
クラウスくんの行動に、思わず私はそう叫んでしまった。
クラウスくんは「う、うるせー」と言って照れながら、クラピカの部屋のドアを閉めた。
『良かった…ちょっと心配しちゃったよ、私(笑)』
「クラウスと莉子のことか?」
『…!』
ホッとする私を見て、クラピカは見透かしたように言った。
『そう。同い年だし、中学も住んでる家も一緒だから仲良いのは当たり前なんだけど…やっぱりお互い思春期だから、ちょっと気になるな』
「思春期ってお前…お前も今思春期だろう?」
『う…そーだけど!私と莉子の思春期とは違うの!』
「そうか、クラウスなら安心しろ。ああ見えて結構紳士だからな」
『うん…私もそう思う』
少しでも疑っちゃって、なんか申し訳なかったよ…
「湯が沸くまでソファーに座ったらどうだ?」
『あ、うん…ありがとう』
クラピカの言葉に甘え、リビングの大きくてオシャレなソファーに腰を掛ける私。
クラピカに紅茶を入れてもらうなんて、なんか変な感じ…
こんな夜中まで付き合ってもらっちゃって、本当申し訳ないな。
でも、今はクラピカに甘えちゃお。
こんな機会ってもう絶対ないし!
好きな人の家に泊まれて、しかもこんな夜中で一緒に居られることって、すごーーーっくレアだよね!?
火事があったことは災難だったけど、いいふうに考えればちょっとは明るくなれるかも。
ってゆうか、そう考えてないとやってられないわ。
「…どうぞ」
湯気があがったティーカップを私に差し出すクラピカ。
私は「ありがとう」と言い、カップを受け取った。
クラピカは私の隣に座り、ペットボトルのお茶を飲む。
私もクラピカが入れてくれた紅茶を、一口飲んだ。
『…おいしい』
その紅茶は、めちゃくちゃ美味しかった。
「お袋が何処からか取り寄せていつも買っている紅茶だ」
『へぇ』
きっと、ものすごく高いんだろうな。
そんな味だし。
「…少しは落ち着いたか?」
『え?』
そう言ってリモコンに手を伸ばし、テレビをつけるクラピカ。
『うん…さっきよりは』
「先程も言ったが、余り重く考えるな。ここに好きなだけいてくれて構わない。それに明日には、ひとみさんも来てくれるしな」
『そだね…ありがとう。でもなんか…興奮しちゃって…とても眠れそうにないの…あ。』
やば。
『こ、興奮てのは変な意味じゃないから!火事に対しての興奮で…』
「分かっている」
ぷっと笑うクラピカ。
クラピカの家にいるだけで、いつもよりも倍は緊張する…
”興奮”の意味も、今は違う意味を想像してしまう。
なんでだろう…
いつもひとつ屋根の下に住んでるのに、なんでこんなに違うの。
とりあえず、話を変えよう!
『か、火事なんて…当たり前だけど初めて経験したよ…やっぱりすごい怖いものなんだね』
あんまり変わってないけど、興奮というフレーズさえ出さなきゃ大丈夫だろう(笑)
「…そうだな。お前が風呂に入った瞬間、近所の人が家のドアを叩いて来て、火事だと知らせてくれたんだ」
『そうだったの…全然きづかなかった』
.
うちのバスルームってリビングの話し声とかあんまり聞こえてこないんだよね。
でも不思議と、お風呂の中に入ると聞こえてくるんだよなぁ…
『…火事に気づいたのが、私がお風呂に入った後じゃなくて良かったよ』
裸だったら、逃げ遅れてたかもだもん。
そう考えると、本当怖くなる…
「私は、お前がたとえ全裸でも抱えて外に連れ出していたな」
『…っ!』
ぜ、全裸って………
なに言ってんの…///
「いや真面目な話だ。恥ずかしいことよりも、命の方が大事だろう」
『そそ、そうだよね…』
興奮とかよりも、もっとドキドキする話になっちゃったよ…
でも気にしない!
これは真剣な話なんだから。
「お前が助かって良かった」
『…………』
テレビに目を向けながら、クラピカは肩の力を抜いたように言った。
その表情は嘘をついているのでも、ふざけてるのでもなくて…
真剣そのものだった。
クラピカに申し訳なく思った。
ここまで心配してくれたのに、違う方向のことばかり考えて…
『ありがとう…』
私はポツリと言った。
クラピカは何も言わなかったけど、無視したわけではないことは分かった。
家は火事になっちゃったけど、まだクラピカとの繋がりは終わってない。
こうやって、クラピカの家にいるんだから…
それが運命なのか…
それとも腐れ縁なのか…
まだわかんないけど。
いや、そんなことはなんだっていいの。
ただ、クラピカのそばにいたい。
大好きだから…
next…