名前設定無しの場合は、ヒロインが『リリー』になります。
ハンター試験編
ヒロイン名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クラピカは、暗い闇の中にいた。
ひどく寒い、どこまでも広がる闇。
ここにいるのは、私だけだ。
他には誰もいない。
一人でいるのには、慣れていた。
その時、後ろから声が聞こえた。
「…見つけた!クラピカ、探したよ」
とても懐かしい声。
クラピカは反射的に後ろを振り返ると、ソフィアがクラピカを見つめて笑っていた。
「なんでここにいるの? ここ、暗いし、寂しいし…早く、帰ろう」
「…どこに」
硬い声で呟くクラピカに、ソフィアは目を丸くした。
「クラピカの家だよ。決まってるじゃん」
私の…家?
もう私の家は残っていない。
家族もいない。
友達もいない。
ソフィアもいない。
幻影旅団に全て奪われて。
ソフィアが目の前にいるのは…幻だ。
もうこれ以上、大事な人を失いたくない。
だから、一人でいるのが一番いいんだ。
するとソフィアは、少し呆れた目をして苦笑した。
「もう何言ってるの? …わたしはクラピカの傍にいるよ。近くにいる。だから、帰ろうよ。一緒に…」
ソフィアは優しく微笑んだ―――…
朝日が顔を出した頃、クラピカはゆっくりと目を開けた。
右肩に何かがのしかかっていて、重たい。
視線を向けると、隣にはリリーが自分の右肩に頭を乗せて眠っていた。
そして、自分に毛布がかけられていることに気づき、いったいいつから隣にいたのか。
全く気がつかなかった自分に、少し驚いた。
気持ち良さそうに眠っているリリーの顔に、5年前に見たソフィアの無邪気な瞳が重なる。
クラピカは恐る恐る、毛布に隠れたリリーの手を優しく握って、再び目を閉じた―――…
「皆様、大変お待たせいたしました。目的地に到着です」
アナウンスが流れると同時に、受験生達は窓の外を見た。
それは、高くて大きなタワー。
受験生達が降りる準備をする中、リリーは未だ熟睡していた。
「おい、リリー!! 置いてくぜ? そろそろ起きろ!!」
何度も肩を揺さぶるレオリオに、リリーはのろのろとやっと目を覚ました。
『うぅ~ん…眠い…。あと1分だけ…』
眉にシワを寄せ、再び目を閉じ始めたリリーに、今度はクラピカが眉を寄せて、激しい口調で起こした。
「おいリリー! お前は試験に受かる気があるのか? 早く起きろ!!」
『…クラピカァ…?』
すっごく眠たい…。
体が重いし、全然疲れが取れた気がしないよぉ…。
低血圧で朝が弱いリリーは、やっと目を覚まし、ふらふらと立ち上がると、顔を洗いに化粧室に向かった。
飛行船がタワーの頂上に到着すると、扉からぞろぞろと受験生達が降り始める。
そこは、何もなく、誰もいない静かな場所。
いったい何が始まるのかと、受験生達はそわそわと周りを見渡した。
すると、一人のハンター協会員が説明し始める。
「ここは、トリックタワーと呼ばれる塔のてっぺんです。ここが三次試験のスタート地点になります。さて、試験内容ですが…試験官からの伝言です。
生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間。それではスタート!!」
合図が出ると、受験生達は下に降りる方法を模索した。
一人の受験生はタワーの外壁をつたって降りていくが、怪鳥の餌食となった。
リリー達は隠し扉を探しながら、地面に違和感がある所を手分けして探す。
カコン…
『…ん?』
もしかして、これかな??
『ねぇ! みんな!! あったよー!!』
最初に地面に違和感を感じたリリーは、皆を大声で呼んだ。
その場所には、5つの隠し扉がある。
ちょうど5人だったので、それぞれ扉の位置につき、リリー達は隠し扉の穴の中に入っていった。
タワーの中に入ると、そこは出口のない部屋。
どうやら、ここからゴールまでの道のりは、5人で多数決をして乗り越えなければならないルールらしい。
5つ用意されたタイマーをリリー達は手首につけると、出口が現れた。
「このドアを開けるならマル、開けないならバツ」の多数決から始まり、リリー達は多数決を繰り返しながら道を進んでいった。
しばらく進んでいくと、リリー達が辿り着いたのは…
闘技場だった。
だが、その闘技場の周りは深い奈落となっており、真っ暗で何も見えない。
一歩足を踏み外すと、死が待ち受けているに違いないと、リリーはぞっとした。
「…見ろよ」
キルアの言葉に4人は目を凝らして、奥で並んでいる人物を見た。
5人の人物は白装束に顔を隠され、全員手錠がかけられている。
すると、その一人が手錠を外され、顔に被された布を脱ぐと、筋肉質で、頭にいくつもの針で縫われた跡がある男性だった。
その男は、リリー達にルールの説明を始めた。
「勝負は一対一で行い、各自いちどだけしか戦えない!! 順番は自由!! お前達が3勝以上すればここを通過することが出来る!! 戦い方は自由!! 片方が負けを認めれば残された片方を勝利者とする!! この勝負を受けるか否か、採決されよ!!」
その説明を聞いたリリー達は、再び多数決で迷わずマルを押した。
薄く笑みを浮かべた男は、再び口を開く。
「よかろう、こちらの一番手はオレだ!! さぁ、そちらも選ばれよ!!」
緊張感が漂う中、誰が最初に行くのかと沈黙が続く。
…あの人、めっちゃ強そうだな。
でも、師匠に鍛えてもらった技を使えば戦える!!
わたし、強くなるって決めたんだ。
『みんな、私が行くね!!』
すると、音を立てながら闘技場への足場が現れ、リリーは闘技場へと進み始めた。
「リリー、駄目だ!!」
強く腕を掴まれ、リリーは振り返る。
腕を掴んで声を上げたのは、クラピカだった。
レオリオも詰め寄って、語調を荒くする。
「おいリリー!! オメェは女だぜ!? 女一人であんなヤツと戦ったら死ぬぞ!?」
「そうだ! リリーは最後にしろ!! 私達が先に3勝すれば、リリーに順番は回らない」
リリーは首を竦めて、クラピカとレオリオを上目遣いに見上げた。
『…確かに心配する気持ちは分かるよ。でも、女だからって特別扱いされたくない! それに、こんな時の為に師匠に鍛えられてきたから…自分を試したいの!!』
それを聞いたキルアは、冷たい目をして言い放つ。
「だからって、お前にアイツは倒せねーよ」
『…………』
リリーの目が大きく揺れた。
ぐっと唇を噛んでうつむくと、リリーはクラピカの手を無理矢理振りほどき、黙って闘技場に進み出した。
頭に血が上っているクラピカは、さらに激しく怒鳴る。
「リリー! 戻るんだ!!」
だが、リリーは振り返らず、クラピカの言葉を無視して闘技場に辿り着く。
男は狂気の宿った目をして笑った。
「勝負の方法を決めようか。オレはデスマッチを提案する!! 一方が負けを認めるか、または死ぬまで戦う!!」
リリーの顔に、明らかな動揺の色が浮かんだ。
硬く拳を握りしめ、リリーは覚悟を決めて答えた。
『…分かった! 行くよ…!!』
男は猛スピードでリリー目掛けて走ってくる。
クラピカ達は必死に目を凝らして、リリーを見守った。
リリーは突進してくる男の攻撃を避け、男の顔目掛けて右足で力強く蹴りを繰り出した。
「…女のくせになかなかやるな」
男は次から次へとリリーに攻撃を仕掛ける。
リリーは腕でその攻撃を防御し、敵が一瞬隙を見せた時、再び蹴りを繰り出す。
すると、男はリリーの右足を掴むと、そのままリリーの首を掴み、上に持ち上げた。
『…ぐぁ…っ!』
声にならない喘鳴が、リリーの唇からこぼれ落ちる。
リリーは必死に敵の片手を両手で振りほどこうとするが、力が入らない。
息が…苦しい…!!
ドクン、と。
クラピカの心臓が跳ね上がる。
「…どうだ、苦しいか? なんならこのまま息の根を止めてやるぞ」
その言葉に、リリーはこれ以上ないほど大きく目を見開いた。
そして…
リリーの目が、一瞬緋色に染まる。
「……………まさか…あれは…!」
緋の眼…?
立ちすくんだまま、クラピカはリリーを見つめた。
足が、動かない。
苦しんでいるリリーの傍に、駆けつけたいのに。
その名を呼んで、助けてやらなければと、思うのに。
見てもいられなくなったレオリオとゴンが、リリーに激しく声を上げた。
「リリー!! 早く参ったと言っちまえ!!」
「リリー!!」
キルアは狂気の目で敵を見つめ、手を変形させる。
リリーは、血の気の失せた顔で必死に声を振り絞った。
『…ま…い…っ…た…!』
その言葉を聞いた男は、薄く笑うとそのまま手を離す。
リリーは地面に崩れ落ちた。
みんな…
ごめんなさい。
わたし、勝てなかった。
何も出来なかった。
師匠…ごめんね。
自分の力がこんなにも弱かったなんて気づかなかったよ。
師匠の弟子として、情けない…。
ゲホゲホと激しい咳をして、肩を上下にしながら息を吸うと、リリーはクラピカを目だけで探した。
だが、視界が段々と狭くなる。
「リリー!!」
クラピカの、声だ。
優しくて、力強い響き。
わたしの、大好きな、声。
『…クラ…ピ…カ………』
リリーはクラピカの名前を呼ぶと、静かに気を失った―――…
next…
