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ハンター試験編
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合格者ゼロの結果に受験生達は、当然誰一人納得のいく者はいなかった。
中には机を壊し、暴れる受験生もいたがメンチは頑なに決断を変えない。
すると、突然空からハンター協会のマークが付いた飛行船が現れ、一人の老人が飛行船から飛び降りる。
余裕な面持ちで地に足をついた老人は、審査委員会ネテロ会長 ハンター試験の最高責任者だった。
合格者ゼロ人の結果にネテロ会長は審査員メンチにも実演との形で試験をやり直すことを命じた。
試験の課題は“ゆで卵”。
内容は、マフタツ山に生息するクモワシの卵を崖から飛び降りて取って帰り、ゆで卵を作るという単純なテスト。
リリー達5人は無事に二次試験を合格した。
第二次試験 後半
メンチのメニュー 合格者43名。
――――――…
「お疲れ様でした。次の目的地へは明日の朝8時到着予定です。こちらから連絡するまで各自、自由に時間をお使い下さい」
合格した受験生達は、ぐったりしてそれぞれ床に座った。
ゴンとキルアは嬉しそうに飛行船の中を探検しに行く。
元気そうな二人を見たレオリオは、疲れ果てた口調で話す。
「元気な奴ら…オレはとにかく、ぐっすり寝てーぜ」
「私もだ。恐ろしく長い一日だった」
『わたしも…』
レオリオ、クラピカ、リリーの三人は広間の壁に寄り掛かって座った。
クラピカの隣にくっついて座るリリーにクラピカは尋ねた。
「リリーはゴン達と探検しに行かないのか?」
『ううん、疲れたもん…それにクラピカと、一緒にいたいし』
リリーは少し照れながら話すとクラピカを見つめにっこり微笑む。
それを聞いたレオリオは、内心驚いた。
「(おいおい!リリーはクラピカが好きなのか!?オレはオジャマだってかァ?)」
レオリオは席を外そうかと思った瞬間、クラピカが立ち上がる。
「すまないが…私は別の場所で休む」
クラピカは素っ気なくリリー達の側から離れていった。
「なんなんだアイツ…リリー気にすんな。クラピカはちと変わりもんだからなァ」
『うん…』
リリーは少し暗い表情でレオリオの励ましに頷いた。
クラピカ…
わたし、なにかいけないことでも言ったかな?
そういえば…
クラピカってわたしと全然目を合わせてくれないし、なんだか冷たい。
もしかして、わたしのことが嫌いなのかな…?
リリーはクラピカが気になって眠れず、あれから30分が経過した。
レオリオは隣でぐっすり眠っている。
リリーは立ち上がり、クラピカを探しに歩き出した。
廊下を歩いてクラピカを探すが中々姿が見つからない。
もう戻ろうかと諦めたとき、廊下の窓から外の景色を眺める一人の金髪の少年が立っている。
クラピカだ。
リリーは彼をじっと見つめた。
その視線に気づき、クラピカが振り返ってくれるのを待った。
だが、クラピカは外の景色を見つめたまま。
クラピカは…
いったい何を考えてるの?
『クラピカ…』
ついにたまらなくなったリリーが呼ぶと、クラピカは気がついて彼女を見た。
「……なんだ」
リリーはぐっと息を詰める。
聞くのが怖い…
けど、知りたい。
『クラピカは…わたしのことが嫌い?』
静かに尋ねるリリーに、クラピカは視線を外の景色に戻し、静かに答えた。
「いや…そうではない」
『そう……それならよかった!』
リリーは気持ちを切り換えてクラピカの隣に移動する。
外の景色を見てみると、それは都会の美しい夜景。
『うわ~綺麗!!宝石みたいだねっ』
リリーは笑顔でクラピカに話しかける。
クラピカは景色を眺め口を開かないまま。
沈黙が続く中、リリーは負けずにクラピカに話しかけた。
『わたし、夜景始めて見たの!こんなに綺麗だったんだね!…ハンターになったら世界の色んな所に行けるよね?そしたらわたし、たくさん外の世界見てみたいな〜』
その言葉にクラピカはリリーを見つめる。
ソフィアとそっくりな声に5年前の思い出が甦る。
―――オレが外の世界を見せてあげよう。
―――うん、約束ね!!
間近でリリーを見たクラピカは、ますますソフィアの面影が重なった。
「本当に盗賊で育ったのか?5年前のことは覚えていないのか?」
真剣な目で突然質問をしてくるクラピカに、リリーは目を見開いた。
『クラピカ…急にどうしたの?』
クラピカは我に返ると、すまない…と言って前を向く。
『私はずっと盗賊育ちだよ。でもまだ盗賊の仕事はしたことないけど…。5年前のことは…ごめんね、やっぱり思い出せない』
「…そうか」
話を聞いたクラピカは、一瞬切ない表情をした。
『私もずっと聞きたいことがあるんだけど…初めてクラピカと会ったとき“ソフィア”って名前呼んでたよね?誰なの?』
「……聞いてどうする」
『どうもしないけど、ちょっと気になったから…』
「………」
クラピカが口を開きかけた瞬間、横から甲高い声が聞こえる。
「ねぇ二人とも!ゴン見なかった?」
二人は声が聞こえた方に視線を向けるとズボンのポケットに手を突っ込んだキルアの姿だった。
『キルア!ゴン?知らないよ??』
「あれ?おっかしいな~どこ行ったんだぁアイツ。まぁいいや、二人はここで何してんの?」
『夜景見てたの。キルアも見て!すごい綺麗だよ!』
それを聞くとキルアはリリーの隣に並んでしぶしぶ窓から夜景を眺めた。
「ほんとだ。…クラピカはまだ寝ないの?」
キルアはクラピカをじっと見つめて問いかける。
何かを察したクラピカは軽く微笑みながら答えた。
「いや、そろそろ私は失礼するよ。キルア達も明日に備えて早めに寝た方がいい。それじゃ…」
クラピカは背中を向けて広間に戻って行った。
クラピカの姿が見えなくなったのを確認すると、リリーはその場で深くため息をつく。
『はぁー…結局誰だかわからなかったなー』
リリーの呟きに、キルアは問いかける。
「何が?」
…どうしよ。
キルアに相談してみよっかな?
リリーは、初めてクラピカと出会ったときに人違いをされたこと。クラピカの過去のこと。
避けられてること。クラピカに質問されたこと。
全てを話した。
『…ってことなの。キルアどう思う?』
「どう思うって言われてもオレにはわかんねーよ。けどソフィアってヤツ、たぶんクラピカと同じ同胞で大事なヤツだったかもな」
『やっぱりそう思う?そうだよね、クラピカの恋人かなぁ…ねぇねぇ!わたし、見間違われるぐらいソフィアって人に似てるなら、その人と何か関係あるのかな?』
「はぁ?関係?」
『生き別れの姉妹か親戚とか…』
「んなわけねーだろ。 もしそれならリリーはクルタ族の生き残りだろ?ソフィアってヤツはたぶんとっくに死んでるだろうし、お前と何の関係もねーよ 」
『だよねー…』
夜景を眺めながら考えるリリーにキルアは不満そうな表情で問いかける。
「…お前さぁ、クラピカのこと好きなの?」
単刀直入の質問に、リリーは一瞬真っ白になった後、慌てて声を上げた。
『そんっ、そんなんじゃないよ!!もうキルア何言ってんの!?』
「しっ、声でけーよ」
『…だって』
リリーは軽く頬を膨らませながらキルアを睨んだ。
「さっきからクラピカのことばっかりだし、見え見えだっつーの」
『だから、そのっ。仲間としてだってっ!!あー、そういえば、キルアの家族は何してるの?』
慌てふためき、しどろもどろで話を変えたリリーにキルアは口を開いた。
「…殺し屋」
平然と答えるキルアに、リリーは一瞬目を丸くするが、すぐに話し出す。
『そうなんだ。わたしの家族も…殺し屋じゃないけど、盗賊やってる』
その話を聞いたキルアは一瞬驚くと、安心したように笑った。
「マジかよ!お前はぜってぇ殺しとかに縁がねえヤツかと思った!!」
『私は違うからね!家族だけ盗賊やってて私はずっとお留守番だったからさ、具体的にはどんなことしてるのか知らないけど…』
「へぇ~」
こんな偶然もあるんだな…。
「いた!!キルアー!!」
声がした方を見ると、ゴンが笑顔でリリー達の元に近づいてくる。
「おい、どこ行ってたんだよゴン!探したぜ?」
「ごめんごめん!ちょっと迷っちゃって!あれ?リリー起きてたんだ!」
『うん、ちょっと眠れなくて。でもそろそろ寝るね!キルア、ありがとう』
リリーはゴンとキルアに微笑むと明日ね、と手を振って歩き出した。
リリーの背中を見送るキルアは、リリーを呼び止める。
「リリー、言い忘れた。アイツ(クラピカ)とは余り関わらねー方がいいぜ?そんな気がすっから」
キルアの言葉に疑問を抱き、何度か瞬きをするリリー。
『どうして?』
「オレの勘!おやすみ」
リリーは意味が分からないまま取り合えず頷くと再び歩き出した。
二人のやりとりを見ていたゴンはキルアに問いかける。
「ねぇ、キルア?アイツって誰のこと?」
「…なんでもねーよ。探検の続きしよーぜ」
二人はその場を後にした。
広間に戻るとクラピカは壁に寄り掛かって熟睡し、隣のレオリオは口をポカーンと開けて眠っていた。
二人とも、気持ち良さそうに眠ってるなぁ…
でもあんな過酷な試験だったのに受験生を床で寝かせるってどうなのよ!
と少し腹を立てたリリーは、毛布を貸してほしいと試験管理室に向かった。
3人分の毛布を借りてきたリリーは、寝ている二人の上に静かにかける。
リリーは眠っているクラピカの顔をじっと見つめた。
クラピカって…
本当に顔キレイだなぁ…。
まつ毛も長いし、羨ましい。
リリーは惚れ惚れとした顔でクラピカを見つめ、我に返ると自分も隣で寝ようと立ち上がった。
すると。
「………ソフィア………」
クラピカの声。
視線を向けると、クラピカは一筋の涙を流していた。
クラピカ…
あなたは夢の中でもあの過去を思い出してるの?
ソフィアって人。
きっとクラピカの大事な人だったんだね。
クラピカ…
私はあなたに何が出来るかな?
夢の中でぐらい過去に囚われないで幸せな夢を見せてあげたいよ。
クラピカを…支えたい。
この時、リリーはクラピカの涙を見て、心からそう思った。
next…