番外編
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風がひんやりとする季節、冬。
マフラーなしではさすがに外を歩く気にもなれない。
ソフィアは毎朝仕事に向かうクラピカを見送り、専業主婦として家事と料理をし、幸せな新婚生活を送っていた。
しかし…
『あ~なんか気持ち悪いっ…吐きそう~』
昼食を食べていると、突然激しい吐き気に襲われ、ソフィアはトイレに向かって走った。
吐いたのなんて風邪以来だ。
なんか胃にあたったのかな??
…あ、もしかして昨日食べたお刺身かも‼
クラピカ大丈夫かな!?
だが、帰宅したクラピカは胃の調子は悪くなく健康だった。
夕飯を食べている時も、たびたび吐き気に襲われた。
「明日、病院に行くんだぞ」
そんなソフィアの様子に心配したクラピカはそう提案し、さっそく次の日ソフィアは病院に行くことにした。
一通りの症状を説明して、尿検査と血液検査をする。
あとは結果を待つだけ。
しばらく経ち、診察室へ呼ばれ…医者はソフィアの顔を見て、ニコッと笑いながら結果を口にした。
「おめでとうございます。妊娠3ヶ月ですね」
…妊娠。え、妊娠!?
『ホントですか!?』
ソフィアは思わずパイプ椅子から立ち上がり、大声で尋ねた。
「は、はい。そうですよ。妊娠8週目に入ったところです」
医者の話を全て聞き診察室から出ると、ソフィアは満面の笑みを浮かべた。
やっっったぁ!!
クラピカとわたしの、赤ちゃんだぁっ!!
早くクラピカに伝えなきゃ!!
嬉しさと幸せの余り、廊下を走るソフィア。
あ、いけない、いけない。
走っちゃダメなんだ。
ソフィアは走りたい気持ちを抑えながら、落ち着いて歩き、病院を出てから急いでクラピカに電話をかける。
プルルルル…プルルルル…
なかなか出ない。
仕事中だし忙しいのかな。
諦めて切ろうとしたその時…
「もしもし…」
『あ、もしもし!?クラピカ!?』
「あぁ」
『あのね、今大丈夫!?』
「いや、悪いが忙しい。後でかけ直そう」
『あ、ちょっと待って!!報告があるの!!』
「なんだ?(それなら聞かねばよかろうに…)」
『あのね、驚かないで聞いてね!!』
「あぁ」
『ぜったい驚かないでね!!』
「分かったから、早く言ってくれ」
『実はね、クラピカとわたしの…赤ちゃんデキてた!!』
「………な、…赤ちゃん??」
『そう!赤ちゃん!!クラピカとわたしの!!』
「何ィ!!!?」
……え、今のクラピカ??
クラピカとは思えない驚き声にソフィアは目を丸くした。
「そ、それは本当か!?」
『本当だよっ!!妊娠3ヶ月だって!!』
「そうか、妊娠か!!」
『うんっ♡あ、仕事中にごめんね!またね!!』
ガチャ、プープープー。
電話はソフィアによって一方的に切られてしまった。
クラピカは携帯を片手にその場で呆然と立ち竦む。
望んでいた妊娠の事実に嬉しすぎるせいか、思い出しては幸せな満面の笑みを浮かべては口元を手で隠す。
一目を気にして真顔に戻るが、思い出しては再び噴き出して笑みを浮かべるクラピカ。
普段、冷静で余り感情表現を表に出さないクラピカだが、喜びMAXの今は完全にねじが緩んでしまっているようだった。
ソフィアが妊娠したという事実に驚いたのは、クラピカだけじゃなかった。
ソフィアは片っ端みんなに電話をかけた。
ーーーキルア。
「こ、こども!?マジッ!!?」
ーーーゴン。
「ウヒョーーーーーッ‼」
ーーーレオリオ。
「アチッ、アッチ‼」←ホットコーヒーをこぼして火傷。
ーーーセンリツ。
「え、妊娠!?」
ーーーラディウス。
「なっ、なんじゃと!!?」
大騒ぎになったゴン、キルア、レオリオ、センリツは居ても立っても居られず…
3日後、クラピカとソフィアの家に全員が集合した。
テーブルには4人からのお土産とお酒やジュース。
全員はテーブルを囲んで座り、ソフィアの妊娠祝いで乾杯の準備をする。
乾杯の音頭をとるのはソフィア。
ソフィアは笑顔で元気よく言った。
『ソフィア、妊娠しましたぁ~っ‼』
その乾杯の音頭に、軽くズッコケる5人。
全員乾杯をして一口飲むと、ゴンがしみじみと嬉しそうに話し出す。
「ソフィアがママになるのかぁ~!なんか不思議だなぁ~‼」
『そう?♡』
浮かれてるソフィアに、キルアが尋ねる。
「大丈夫か?」
『え、なにが??』
「子どもが子どもを産んで大丈夫かってこと」
その質問に同意するレオリオとクラピカ。
「確かにな~」
「そうか…」
『ちょっとクラピカまで!なに言ってるの!?』
「いや、私の事も含めてだ」
『もう、大丈夫だよ!』
「なんで?」
再び問いかけるキルア。
『なんでって…』
軽く不機嫌なソフィアの隣で、ゴンが楽しそうに話す。
「どっちかなぁ~??男の子か女の子!!」
『そうだね~♪』
「分かるんだろ!?ほら、あの男か女はいつ決まるんだ!?」
レオリオの質問にソフィアは嬉しそうに笑って答える。
『6ヶ月過ぎたら分かるけどね!!女の子かなぁ~?知りたいなぁ~!でも楽しみにとっておきたいよ~なぁ♡』
センリツはクラピカとソフィアに笑って問いかける。
「二人はどっちなの?」
「え、まだそこまでは…な?」
『ねっ♡』
二人はお互い目を合わせて、幸せそうに笑う。
「どっちだろ~!?オレはどっちがいいって言うと…」
「誰もゴンの意見なんて聞いてねーだろ?」
素っ気なく言うキルアに反抗するゴン。
「だってさ~‼」
『いーよ♪ゴン聞かせて!!』
ゴンは目を輝かせた。
「いいの!?じゃあ……どっちもいいなぁ~‼」
またもズッコケるレオリオ。
「なんだぁ!?期待させやがって!!」
「でもさー、問題はどっちの似た性格だってことだよな」
キルアの発言にソフィアは眉間にしわを寄せる。
『どーゆう意味?』
「いや、ソフィアに似たらいろいろ大変そうだよな~」
『なんで??』
「なんでって…ね?」
ソフィア以外は考え込み、静かな何とも言えない空気に変わった。
『も~なんなのよ~!』
「あ、よく男の子だと母親似とか言うわよね。でもそれは外見の話よね…性格はどうなのかしら?」
悩むセンリツにキルアが嫌そうに答える。
「強い方に似るんじゃないの?」
「…私ではなさそうだな」
クラピカの言葉に疑問を浮かべるソフィア。
『なんで??』
「いや、何となくだ」
「ソフィアにかぁ~」
ため息をつくキルアにソフィアは怒り気味で尋ねる。
『ちょっとイヤな訳?キルア!』
「やっぱ男の子かなぁ~‼」
再び目を輝かせて言うゴンにレオリオは目を見開いた。
「オメェさっきからずっと考えてたのか!?まぁ、男の子だったら楽しいよな!!男と言えばキャッチボールだぜ!?キャッチボール!!」
「キャッチボール?」
疑問を浮かべるクラピカ。
レオリオは楽しそうに話し出す。
「父と息子と言えばキャッチボールだ!!夕方の公園でキャッチボール。言葉なんかいらねー。ピュッと投げてバシッと受ける!またピュッと投げてバシッと受けるんだ!!」
「それも悪くないな」
「だろ!?投げて受ける…その単純な繰り返しだ!!」
レオリオは椅子から立ち上がってつづけた。
目の錯覚か、レオリオの上からスポットライトが当てられているかのように見えてくる。
「父と子に言葉なんかいらねー!キャッチボールすることでお互いの言葉が通じ合う。父は息子の投げる球で成長を肌で感じる!!」
「おい、なんかレオリオの一人舞台だぜ?」
「そうだね…」
呆れ口調で呟くキルアとゴン。
「「こんな球を投げるようになったのか!?」息子も父の強さを肌で感じる!!「父さん凄い!早く父さんみたいになりたい!!」大人になったら一緒に酒を飲む。
そして、人生を語るんだ!自分の知っていることをよォ、全て伝える!!イヤ~そん時の酒は、うめぇだろ~なぁ~‼」
レオリオはいつしかソフィアとクラピカの後ろに回って二人の肩に手を置き、3人で遠くの希望の光を見つめるかのように言った。
キルアはいたずらな笑みを浮かべて、話し始める。
「そんな可愛かった息子がどんどん大きくなって、あっという間に父を追い越す。なんでも喋ってくれたのに何も話さなくなる。口を開いたと思えば…「メシ‼うるせーなぁ‼別に」
それぐらいしか言葉を聞かなくなって、そして…「たまにはキャッチボールでもするか?」と聞くと、息子は「ばっかじゃねーの!?一人でやれよ!!」それでもめげない父は「お前は将来どんな大人になりたいんだ?」と質問する。
そして返ってきた答えは……」
「「「答えは!?」」」
「「………」」
唾を飲み込み、尋ねるゴン、ソフィア、レオリオ。
黙って答えを待つクラピカとセンリツ。
そして、キルアは怒号を上げた。
「オレは親父にだけはなりたくねーんだよ!!」
「そんなぁ!!」
「!!」
大きくショックを受けるゴンとクラピカ。
「実際そんなもんだろ?」
夢もないキルアの発言にレオリオは目を吊り上げて怒号した。
「それはオメェだろ~がァ!!ったく、夢の話してたのにオメェはぁ~!!よしっクラピカ‼!気を取り直して次は女の子の話しよーぜ!!」
「あぁ、そうだな」
「女の子は可愛いぜ?男と違ってな、オレの娘なんか…」
「ぷっ…」
軽く噴き出して笑うキルア。
嫌な予感を感じたレオリオは、クラピカの耳元で呟いた。
「…クラピカ、キルアがいねーところで話そーぜ?」
「あぁ(汗)」
「幸せね~きっとソフィアとクラピカの子どもは」
優しい笑みを浮かべて言うセンリツに、ソフィアは嬉しそうに聞く。
『そうかな?』
「えぇ。幸せよ、みんなに祝福されて産まれてくるんだから」
『うん、そうだね!』
ソフィアは幸せそうに笑って、優しくお腹を触った。
翌日。
産婦人科に来たソフィアは、待合室の椅子で母子手帳を嬉しそうに眺めていた。
診察室に呼ばれ、赤ちゃんの状態をチェックする。
女医はソフィアの顔を見て、笑みを浮かべて結果を口にした。
「順調だね」
そう言って母子手帳を渡す。
ソフィアは嬉しそうに母子手帳を受け取った。
『あ、はい!ありがとうございます!』
「別に私は何かしたわけじゃないから。出産は病気とは違うの。私はそれをサポートするだけ。頑張るのは全部あなた」
『なるほど、そうですよね!』
女医はまじまじとソフィアを見つめて言った。
「まぁ丈夫そうだし、安産型でもあるしね」
『あ、どうも…』
やった~っ!!
順調だってっ♪
安産型って言われたし、ちょっと安心かなっ☆
あ~早くお腹の赤ちゃんに会いたいなぁ~‼
帰り道…ソフィアは何度もお腹をさすって笑顔を浮かべた。
その頃、クラピカは…
自宅で未だにゴン、レオリオと子どもネタで相変わらず盛り上がっていた。
ゴンはクラピカの向かいの席でクラピカを見つめて笑顔で話す。
「ね~クラピカ。もしソフィアとクラピカの間に女の子が産まれたらぁ~」
「あぁ」
「ぜっったい可愛い女の子だよね~‼」
「勿論だ///」
クラピカはだいぶ上機嫌。
隣にいたレオリオもクラピカに話しかける。
「女の子はホンットに可愛いぞ~‼パパが大好きでいつだって一緒だ!!オレの娘なんかな、オレが仕事終わるのを楽しみに待ってんだ!!オレだってそーだ、娘に会えるのを楽しみで仕事が終わると早く帰りたくてたまらねーからな!猛ダッシュだ!!
オレは親バカだからな~これを言っちゃなんだが…スゲ~天使のように可愛いぜ?////」
「そうなのか///」
「い~なぁ♡」
レオリオの話にクラピカとゴンは何度か相づちを打ち、羨ましそうに想像しながら耳を傾ける。
「風呂だって一緒だ!!しかもこんなこと聞いてくるんだ!!「どうしてパパは付いてるのに、わたしのは付いてないの??」なんて無邪気な質問してくるからよ~‼もう~可愛過ぎて思わず照れちまってよォ~‼///」
「それは…参ったな////」
想像しただけで頬が紅くなるクラピカ。
ゴンは顔を手で覆わずにはいられなかった。
その時、リビングの裏の扉ではキルアがいたずらな笑みを浮かべている。
「もう少しやらせてやるか」
話しに燃えてきたレオリオは、更に話をつづけた。
「しかもよォ~小学生になったら、きっともっと可愛いにちげーねーぜ!?授業参観で何度も後ろに振り向く娘!!そんな娘に笑顔をたしなめながらぜってェ思うぜ?…ウチの子が一番可愛い~ってな!!///」
レオリオは立ち上がり、子どもの作文を読む真似を始めた。
「「わたしのゆめ!」彼女の番だ!!もう心配で心配でしょうがねェパパ!!」
ゴンとクラピカは祈るように手を握って立ち上がり、想像で目に浮かんだ娘に言った。
「ガンバレッ!!」
「頼む!!」
「「わたしのゆめ、わたしのゆめはおよめさんになることです!おおきくなったらパパとけっこんしたいです!!」感動の告白!!パパは涙腺が緩み、もう涙を止めることは出来ねェ~‼人目もはばからず泣いてしまうパパ…!!」
レオリオの話に思わず涙が出そうになっているゴンとクラピカ。
娘の感動話に幸せと夢あふれる3人の空間。
そのとき…
「そんな娘もやがて大きくなり、最近はパパと遊んでくれない」
突然のキルアの声にとてつもなく嫌な予感がする3人。
扉が豪快に開き、姿を現したキルアは、いたずらな笑みを浮かべながら遠慮なく話をつづける。
「久しぶりに早く帰宅したパパは「一緒にお風呂に入ろうか?」と誘ってみるが、まるで汚いものを見るかのように「チッ…」軽蔑な眼差しで見られてしまう」
ショックで暗い表情に変わったゴンとクラピカは、ガクンと椅子に腰を下ろす。
「中学生になった娘に「一緒に買い物でも出かけようか?」日曜日に誘うパパ。だが返事はつれない。「お金ちょーだい、友達と行くから!」そして最近どうやら娘には付き合っている男がいるらしい…」
クラピカとゴンは驚愕する。
「なんだと!?」
「そんなぁ!!」
キルアは二人の後ろに回り、耳元で楽しそうに呟く。
「しかも、その男は…」
三人は慌てて耳を塞いだ。
まるで天国を見た後に地獄を見させられているかのような三人。
そのとき…
『ただいま~‼』
「あ……」
帰ってきたソフィアにキルアが気づいた。
『え、みんなどうしたの!?』
ソフィアが驚くのも無理はない。
ゴンとレオリオは放心状態。
クラピカはテーブルで頭を抱えてひどく落ち込んでいる。
キルアは残念そうに言った。
「あーあ、止め刺そうと思ってたのに」
さっぱり状況が分からないソフィアは、クラピカに話しかける。
『クラピカ?どうしたの??』
呼ばれて顔を上げるクラピカの目には涙が少し溜まっている。
「いや…行こうか…」
『…うん』
ソフィアとクラピカは部屋に向かった。
キルアは二人を見送ると、椅子に腰を下ろしてテーブルに置いてあるチョコレート菓子を食べる。
「ボリボリ…惜しかったな」
ゴンは暗い表情で呟く。
「なんでオレまで…」
しばらく呆然としていたレオリオだったが、やがてふつふつとたぎる怒りをあらわに怒鳴り散らした。
「て、て、て、てめェ~~~ッ!!オレ達を苦しめて楽しいかッ!!?」
「うん、楽しいよ」
すらっと平然に言い返すキルア。
レオリオは何も言えずにその場で固まる。
室内は静まり返り、キルアのボリボリとチョコレート菓子を食べる音だけが響き渡っていた。
その頃、部屋に戻ったソフィアは喜びに満ちた笑顔でクラピカに話しかける。
『聞いて聞いて!病院で赤ちゃん見たの!!ちっちゃくって可愛かったの!へその緒でつながってるんだって~!』
「そうなのか!私も見たかった。性別はまだか?」
『まだわかんないよっ!』
「女でも男でも無事に産まれてきてくれれば、それでいいな」
『そうだね~♡』
突然、ソフィアのお腹に耳を当てるクラピカ。
「パパだぞ?聞こえるか?」
『ママですよ~!分かりますかぁ?』
目を合わせて笑い合う二人。
『もうクラピカの親バカ~♡』
「やかましい、お前もだろ」
赤ちゃん、早く抱っこしてあげたいな。
わたし達の赤ちゃん…絶対可愛いはずだね。
……赤ちゃん。
あなたは幸せになれる。
だってこんなにも想ってくれてる人がいるんだから…絶対幸せになれるよ。
ソフィアは、病院のモニターに映っていた赤ちゃんの姿をぼんやり思い出した。
あんなに小さな口で、一生懸命呼吸している。
あんなに細いへその緒で、一生懸命栄養をとっている。
あんなに小さい体で、一生懸命生きようとしている。
今わたしのお腹の中で、必死に生きてるんだ。
大好きな人との赤ちゃん。
愛するクラピカとの…大切な大切な赤ちゃん。
今日のこの日の事は、一生忘れないから。
絶対、元気に産んでみせるからね。
next…