番外編
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クリスマス当日。
マフラーと、なんとか明け方までかかって編み上げたニット帽を、クリスマスカラーでトッピング(紙袋に詰めただけ)し、一息つく。
よしっ、プレゼント完了!
なんとか間に合ったぁ~。
両手を上げて、くわ~~~っと大きな伸びをしたところで、ふと動きが止まる。
これから、部屋の掃除をして、食材の買い出しに行って、料理作って、あと、飾り付けと…後は…えーと………。
まだまだやることがいっぱいで途方に暮れる。
ホントに夜、クラピカが帰って来るまでにできるのかな……。
万歳の両手が力なくヘロヘロと落ちてきた。
……でも、クラピカは誰にも渡さない。
絶対絶対、渡すわけにはいかない。
だってわたしはクラピカが大好きだから。
誰よりも誰よりも…
世界で一番、愛してるから。
今宵はクリスマス・イブ。
クラピカのハートと胃袋をガッチリ掴んじゃうんだから‼
よし!頑張る!!
ソフィアは堅い決意の元、勝負(料理)に挑んだーーー…
ーーーー…
「クリスマスに肉じゃが…」
ケーキの箱を持って帰宅してきたクラピカが呟いた。
やっぱり……。
なんかね、男の人の胃袋を掴むには、日本の民族料理の肉じゃがだって昔師匠が言ってたから一番効果的な気がしてさ。
一般論よ、一般論。
お袋の味的なね、アレよ。
でもクリスマスに肉じゃがは違うよね。
薄々はね、わたしも気づいてたんだけどね。
『クラピカ、ごめんね、肉じゃが…』
「凄いなソフィア、こんなに作ったのか!」
『え……あ、うん』
「こんなに大変だったな。嬉しい、礼を言う」
一瞬肉じゃがに目を奪われた様子だったクラピカは、次の瞬間には屈託なく喜んでくれた。
『う、うん。いっぱい食べてね』
さすがクラピカ。
クリスマスに肉じゃがだろうが、そんな小さなことはこだわらない。
ソフィアとクラピカは食卓を囲んで座り、テーブルに並べた料理を二人並んで食べた。
二人で過ごす初めてのクリスマス。
なんとかクラピカを迎えることができ、ソフィアはとてつもない解放感にひたっていた。
『あのね、いろんなチキンのお料理考えてみたんだけど…』
どれも上手く作れなかったの。
『男の人ってフライドチキンが一番好きでしょ?だからコレにしたの』
鳥の唐揚げですが。
味付けをして揚げただけの、鳥の唐揚げがわたしの実力でいっぱいいっぱいでした……。
「あぁ、これが一番美味しいな」
クラピカは美味しそうに唐揚げを食べてくれた。
クラピカ、相変わらず優しいなぁ…。
『クラピカ、シャンパン開けようよ!』
「あぁ、そうだな」
やっぱりクリスマスにはシャンパンだよね♪
「…………」
………?
『開けないの??』
シャンパンを出したもののなぜか開けるのをためらうクラピカ。
「いや、シャンパンは後でゆっくり飲まないか?」
クラピカの藍色の瞳が何かを訴えかける。
『……そ、そう?』
あとでゆっくりって……。
もっと夜が更けてからってこと?
…あ。それって、あとでゆっくりわたしを酔わせちゃおうってこと??
え~~~/////
やだぁ~~~♡
『もうクラピカったらぁ~///』
ソフィアはクラピカの肩をぺシぺシ叩いた。
「なんだ?」
『うん、なんでも!それならそれでっ。うふふ♡』
シャンパンを開けないことにソフィアは納得したものの、クラピカはなんだか落ち着かない様子だった。
『クラピカ、この野菜スープ綺麗でしょ?野菜を全部星形にくり抜いたんだよ』
「…………」
『クラピカ?』
「あ、すまない。なんだ?」
『だから、このスープ綺麗でしょ?野菜を全部星形にくり抜いたんだよ』
「あぁ、そうか……」
優しい表情で返事はしてくれるものの、なんだか心ここにあらず。
これはもしや夜が更けてからのコトに気持ちがいっちゃってるとか?
もう、クラピカのエッチ~/////
なんてね。
その時…
プルルルルルル♪
クラピカの携帯電話が鳴った。
待ちわびたように、素晴らしく早い反応でジーンズの後ろのポケットから携帯を手にしたクラピカは、椅子から立ち上がった。
「ソフィア、すまない」
そう言って足早に部屋から出て行ってしまった。
え、ナニゴト??
玄関の外からクラピカの話声が密かに聞こえる。
ソフィアは、玄関のドアに張り付いて耳をくっつけた。
……………。
話し声は聞こえるものの聞き取れない。
あ、そうだ。
ソフィアはしゃがんでドアの手紙受けを指先でこじ開けた。
いてて…。
スーッと外の冷たい風が流れ込むのと同時にクラピカのジーンズが目の前に見える。
声もぐんと近くなった。
あ、聞こえる。
「……すみません……今から行き……ローズさん……」
全身が心臓になったかのようにドクンと波打った。
ローズ…。
今、彼は確かにローズと言った。
電話の相手はローズさんなんだ…。
……聞かなきゃよかった。
「わっ!」
ふいにドアを開けて入ってこようとしたクラピカが、妙な格好で玄関にしゃがみ込むソフィアに、驚きの声を上げた。
「ソフィア、なぜここに座ってるんだ。思わず蹴飛ばすところだったぞ」
ギクッ。
ソフィアは手紙受けの高さにしゃがんだまま、恐る恐るクラピカを見上げる。
わたしを見下ろすクラピカと目が合う。
ヤバい…盗み聞きしてたのバレちゃった?
『あ、あの…ヨガ』
「…………」
『あの……、ヨガも兼ねて、ちょっとね……』
……どんな言い訳~!?
ヨガやったことないし!!
ヨガ兼ねて何する!!
このポーズのどこかヨガ!?
「ソフィア…」
『あの、ヨガは……』
「すまないが、用事が入った」
『うん……』
「すぐ戻る」
クラピカはコートを取りに行った。
『………え』
今、なんて?
「ソフィア、本当にすまない」
コートを着たクラピカは、そのままドアを閉め、出て行ってしまった。
車のエンジンをかける音がする。
玄関に妙な格好のまま、ポツンと残されたソフィア。
え、なになに。うそ……
クラピカ、行っちゃった。
ローズさんのところに?
今日でなくちゃいけないの?
イブなのに??
…イブだから?
今日逢う事に意味があるってこと?
ソフィアは呆然としたまま立ち上がり、ヨロヨロとソファまで歩いた。
糸が切れたみたいに、トスンとソファに座り、小さなテーブルにいっぱいに並ぶ、死ぬほど頑張ったお料理をぼんやりと眺める。
……肉じゃが、結構煮くずれてる。
唐揚げも、揚げすぎて全体的に黒っぽい。
わたしのお料理がヘタクソすぎて、クラピカ行っちゃったのかな。
胃袋も掴めなかった。
負けちゃった…。
ーーーー…
すぐ戻るって言ってた気もするけど。
遅いな…
もう戻ってこないのかな……。
プレゼントもまだ渡していないのに。
ソフィアはまた冷蔵庫までヨロヨロと歩き、クラピカの持ってきてくれたシャンパンを出した。
冷蔵庫の前に座り込み、シャンパンをじっと見つめる。
どうやって開けるんだろうか。
中身が吹き出すから冷蔵庫でよく冷やしておいてからってクラピカが言ってたけど。
別に吹き出そうがかまわない。
ソフィアはキャップシールを剥がした。
針金をはずして、そして栓を……、固い。
なんとかぐりぐり回していると、ちょっとずつ緩んで、やっとシュボンとはずれた。
同時に中身があふれだす。
わわっ!
ソフィアは慌ててビンに口をつけた。
ああ、ちょっとこぼしちゃった。
ま、いっか。
もう、口つけちゃったし、このまま飲も。
ソフィアはなんだか味もよく分からなかったが、シャンパンをビンのままびぐびぐと飲んだ。
クラピカ…クラピカ…クラピカ……。
心の中でクラピカの名前を繰り返す。
クラピカ……。
今頃、ローズさんと会ってるのかな…。
ああ、そうか。
車に乗る予定があったから、シャンパンを飲まなかった。
ローズさんに逢いに行くためにシャンパンを飲まなかったんだ。
それをあとでわたしを酔わすためだなんて、のん気で幸せな勘違いが出来るわたしって、なんておめでたい。
今思えば、今日のクラピカはなんだかソワソワしてた。
どれくらい時間が過ぎたんだろう。
もう帰って来ないんだ……。
こんな風にいなくなっちゃうなんて。
クラピカ……。
ソフィアの身体中の細胞に寂しさとシャンパンが染み渡る。
アルコールにフワフワとした思考は、あらぬ方向へ転がり始めた。
クラピカ……。
クラピカに会いたい。
もう会えないのかな。
そうだ。
こんなとき、ドラマでは突然彼氏が交通事故で死んじゃって、もう帰って来ないよ。
まさかもう二度と逢えないなんて思いもしなかった彼女の方は、いつまでも彼の事を忘れられずに悲しみを背負って生きていくの。
クラピカは車だし、車の事故で死んじゃったらどうしよう。
わたし、クラピカがいなくなったら生きていけない。
クラピカが死んじゃったらどうしよう……!
ソフィアは単なる想像に涙がポロポロこぼれてきた。
勝手な妄想に悲しくて悲しくて、声を上げて泣いた。
クラピカ!
クラピカ……!!
『うぇ~ん、うぇ~ん』
その時。
突然玄関のドアが開いた。
「ソフィア!鍵開いてたぞ!閉めとかないと危ないだろ!!」
クラピカが怒りながら入ってきた。
『!!!!』
クラピカだ…!
生きてた……。
ソフィアは、目を見開いて息を吸い込んだ。
クラピカはソフィアの涙でぐしゃぐしゃな顔を見て、ぎょっとした。
「ソフィア!?」
床にしゃがみ込んだソフィアに、クラピカは慌てて駆け寄った。
「ソフィア、どうした!?大丈夫か!?」
クラピカは両手でソフィアを包むようにして、顔を覗きこむ。
『クラピカぁ~、うぇ~ん、よかったぁ~~っ』
安心した途端、ますますどっと涙が溢れた。
ソフィアはセキを切ったように盛大に泣いた。
シャンパンの酔いも回り、ソフィアはクラピカの胸の中で子どものように泣きわめく。
クラピカはソフィアを抱き締めながら、頭を撫で続ける。
『クラピカが、いなくなっちゃって…悲しくなって…っ』
やっと喋れるくらいに泣き止んだソフィアは、クラピカに涙と鼻水をティッシュで拭いてもらいながら、たどたどしい言葉を話す。
「ソフィア、本当にすまなかった」
クラピカはただひたすらソフィアに謝った。
『ロ、ローズさんに会って来たんでしょ??』
言いながら、また涙が押し寄せた。
「ああ、やはりそうか。誤解させてしまったな、すまない…」
クラピカはまたティッシュで涙を優しく拭いてくれた。
それから、まだ着たままだったコートのポケットから小さな箱を出し、ソフィアの手に握らせた。
「ソフィア、これ。クリスマスプレゼント」
『!?』
銀のリボンのかけられたその箱を固まったまま見つめるソフィア。
「ソフィア、開けてみてくれ」
固まったままのソフィアをクラピカが柔らかな声で促した。
『………っ、うん』
ソフィアは震える手でリボンを取り、箱を開けた。
中身を見て、ソフィアは息を呑んだ。
そのまま、またしばらく固まってしまった。
涙もいつの間にか止まっていた。
「ソフィア?」
箱の中で輝いていたのはダイヤの指輪だった。
シルバーリングに大きめのダイヤモンドが光っている。
でも、わたし…指輪持ってるのに。
これはもしかして……
『…………』
「ソフィア?」
『…あ、ありがとう…すっごい綺麗!でも指輪…』
「あぁ、これは婚約指輪だ。今更ですまないな」
『え……』
「私はお前にちゃんとしたプロポーズもせず、婚約指輪も渡さずに入籍した。だから、今改めて言わせてくれ」
クラピカは真剣な眼差しでソフィアを見つめた。
「ソフィアを世界で一番、愛している。改めて、私と結婚してくれ」
ソフィアの目に再び止まっていた涙がこぼれ落ちる。
世界で一番だなんて…
嬉しい。嬉しいよぉ~っ。
ソフィアは涙を流しながらも、幸せ溢れる笑みを浮かべた。
『…はい!』
その笑顔にクラピカは、ほっとして笑う。
「良かった…」
『ホント、死ぬほど嬉しい!!』
「ハハ、死んだら困るな」
『クラピカも生きててよかった!』
「ん?」
『あ、な、なんでも!』
クラピカが妄想で死んじゃったことは口が裂けても黙っとこ。
クラピカはそっとソフィアの左手をとり、指輪をソフィアの薬指にはめた。
ソフィアはまじまじとその指輪を見つめる。
ダイヤがキラキラしてる。
キレイ~。
「実は、クリスマスプレゼントにずっと婚約指輪をあげたかったんだ」
『うん』
「内緒で準備してソフィアを驚かせたかった」
『…うん』
それ、わたしと一緒だ。
「だが、指輪となるとサイズがある。実はお前の指のサイズを不覚にも忘れてしまい、だがお前に聞くとバレてしまうからな。
それに聞いたところで、どうもソフィアは自分の指輪のサイズを知らないだろうと思ってな」
あ……、確かに自分の指輪のサイズ知らないや。
『そうだ…、この指輪なんでわたしにピッタリなの!?』
「あぁ、それで職場の仲間に相談したらローズさんを紹介してくれてな。彼女の家がジュエリー専門店の経営をしててな」
ジュエリー専門店。
宝石の似合いそうなローズさんにぴったり。
お金持ちのお嬢様なんだな。
「彼女も将来そこを継ぐために資格を取って、今は専門的な勉強中らしく、驚くことに指輪のサイズが手に取るだけで、だいたい分かるんだそうだ」
『え、すごい!』
「手を触ると100%確実だと言うから、それでローズさんにお願いして…」
『あ!握手!それであの時、ローズさんわたしと握手したんだ!』
「あぁ、偶然会ったふりをしたが、実はあの時、ソフィアの買い物時間を調べて待ち伏せしていたのだよ」
『……そうだったんだ』
「ローズさんは商売上手でな、指輪も自分の所で買って欲しいと頼まれて、色々とアドバイスをしてもらったんだ」
『あ……』
「だが、いざ選び始めると中々良いのが見つからなくてな、ローズさんに指輪のカタログも持ってきてもらったんだ」
『あ、レストランで会ったときも?』
「あの時もカタログを見せてもらう事になってたんだが…ソフィアに勘付かれると思ったからな」
そういう事だったのか。
クラピカ、わたしのために……。
「散々見せてもらって、やっとその指輪がソフィアに似合いそうだと思ったからな」
こんな綺麗な指輪が似合うって思ってくれたんだ……。
「だが、それを取り寄せるのに少し時間がかかると言われてな。
どうにかクリスマスまでに間に合うようにと無理に頼んだんだが…そしたら本当にギリギリだった」
『これ、取りに行ってくれてたんだ。わたしてっきりローズさんに…』
「あぁ、指輪が来たという連絡はローズさんだったが、直接店の方に行ったから今日はローズさんと会ってはいない」
『なんか、誤解してごめんなさい…』
「いや、私が悪いんだ。段取りが悪くて、当日までバタバタしてしまった。もっと早くから準備しておけばよかったんだ。
要領が悪くて本当に情けない」
『そんなこと…』
「クリスマスに妻を泣かせるなんて最低だな」
クラピカは悲しそうな顔で言った。
『そんなことないよ、最高のプレゼントだよ!ありがとう……あ!わたしもプレゼントがあるんだった!』
指輪に舞い上がって忘れるところだった。
ソフィアはベッドの下に隠していたクリスマスカラーの紙袋を出してきた。
『これ!わたしから』
紙袋を差し出すとクラピカは、驚きで目を大きく見開いた。
「料理がプレゼントじゃなかったのか…」
『それとこれは別だから。クラピカ、開けてみて!』
クラピカは袋から中身を取り出した。
「ソフィア、これ手編みか?」
クラピカは帽子とマフラーを広げた。
『ヘタクソで恥ずかしいんだけど…』
「お前、編み物出来たのか?」
『まさか全然!あ、レストランで会った時に一緒に居たルイさんっていう先生に習ってたの。ごめんね、内緒で編み物教室に通ってて…』
「そうか…。クリスマスプレゼントの準備でお互い誤解してたんだな」
クラピカは言いながら、ニット帽をかぶり、マフラーを巻いてくれた。
「ソフィア、どうだ?」
クラピカがにっこり笑う。
ドキンッ‼
ちょっとちょっと!!
編み目の揃わないようなヘタクソなニット帽なのに、クラピカが被るとなんでこんなにかっこいいの~~~っ////
イケメンの旦那さんでよかったー!!
『クラピカ!すっっごく似合ってるよ!!』
わたしのヘタクソさをクラピカの美貌でカバーしてくれてるよ…。
「そうか、よかった。凄く温かい」
『ホント?』
「本当だ。ほら、温かいだろう?」
クラピカはソフィアを抱き締める。
きゃっ////
『もう、そんなに強く抱き締めないでよ~っ////』
……あれ?
デジャブ??
「お前はこんなに頑張ってくれたのにな」
ソフィアを離したクラピカは申し訳なさそうな顔をする。
『なに??』
「泣かせてしまって本当にすまない。ほんの30分にしたって心細かっただろう」
え。
ほんの30分だったの??
もっと果てしなく時間が過ぎたような気がしてた。
『えと、もう、そんな、だってこんな綺麗な指輪…』
「ソフィア、罪滅ぼしに何でもしよう」
『え?』
「何か欲しい物があれば買ってやる。行きたい所があれば連れて行く」
『いや、そんな…』
「何でもいい、ソフィアの気が済むように何でも言ってくれ。たとえ罰ゲームでも構わない」
『いやいやいや、クラピカったら』
もう十分だよ!
この指輪だけでどんだけでもおつりがくるよ!!
『…………』
が、ふと魔が差した。
『じゃあ…』
「あぁ」
クラピカが頷く。
『ひゃっ…』
「ひゃっ?」
『百回わたしにキスして!!』
強気で言おうとしたけど、ちょっと声が裏返ってしまった。
クラピカは、すぐに意味が読み込めなかったのか一瞬キョトンとした。
「…それは、罰ゲームか?」
『だ、だって罰ゲームだってやるって言ったじゃん』
「今から、百回もソフィアにキスしていいのか?」
『………、ん?』
「あ……、いや、確かに罰ゲームもやると言ったからな、男に二言はない。しょうがない、ソフィアに百回キスしよう」
覚悟を決めたようにクラピカは宣言した。
ソファに並んで座るクラピカの長い腕が、ソフィアを柔らかく包む。
「ソフィア、百回数えといてくれ」
『うん、わかった』
そして、キスを待ち受けるべく唇を尖らせ準備の整ったソフィアに、クラピカの唇が重なる。
クラピカ……。
とろけそうになりながら、ソフィアは頭の中で数を数えた。
いーーーーーーーー……ち……
…?
いーーーーーーーー……ち……
あれ…??
ソフィアはクラピカの胸を軽く押して離れた。
『ぷはっ…!ちょっとタイム、クラピカ、今何回目??』
「まだ1回目だが…」
『え?ちょっ、長い!1回が長すぎ!』
「なら、もっと早くヤレと?」
『や、そういうワケじゃないんだけど…』
「私は罪滅ぼしに、最大限の誠心誠意に心を込めてキスをしてるのだから、ソフィアは私の真摯な反省の気持ちと愛情を感じていてほしい」
『…あぁ、そうですか』
…なんかクラピカ気合い入ってる。
これ罰ゲーム……??
それからクラピカの長い長いキスは続いた。たぶん。
わたしはなんと不覚にも10回くらい数えたところで眠ってしまったらしい。
クラピカの腕の中はあんまりにも居心地が良くて、キスはとろけそうで。
うっとりと満たされていく気持ちと反比例に身体中の力がふにゃふにゃに抜けて行った。
そもそも、ここんとこ、お料理と編み物で睡眠不足が続き、シャンパンの酔いも手伝い、あと、泣くとだいぶ体力消耗するんです。
わたしはクラピカの腕の中で反省と愛情を感じながら、心地よい眠りへといざなわれてしまった。
そして、夢を見た。
大きくて綺麗なツリーがあって、宝石のようなキラキラ光るお花畑でクラピカにお姫様抱っこで運ばれてて…まるでクラピカは王子様のようだった。
空っぽのシャンパンに気づいたクラピカに、朝一でこってりと怒られることを、わたしはまだ知らない…
クリスマスの王子様
end♡