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ハンター試験編
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私は急いでルクソ地方に向かった。
とてつもなく嫌な胸騒ぎがする。
心臓の音が耳まで聞こえ、手足が震える。
ニュースで流れていた事実が未だに信じられない。
いや、信じたくない。
私は懸命に走り続け、気が付けばルクソ地方に辿り着いていた。
村に向かう途中、一瞬鉄の臭いがした。
近づく度に心臓の音と寒気がより増してくる。
私は村に着き、立ち竦むと自分の見た光景に言葉を失った。
私が最後に見た村の面影が一つも残っていない。
沢山の家が焼かれ、死体が無惨に転がり、大量の血の臭いが鼻につき、時々吐き気に襲われる。
私は放心状態のまま村に足を踏み入れる。
父さん…母さん…
どこにいったんだ。
ソフィア…ソフィア…
私はひたすら無数に転がる死体から家族、仲間、ソフィアを探した。
仲間の眼は無惨に抉り捕られ、家族は父だけが見つかった。
そして…
ソフィアと母はいくら探しても見つからない。
家と一緒に焼かれてしまったのか。
絶望の中、焼かれずにそのまま残された家を見つけ、私はその家のドアを開けた。
そこには…
向かい合わせに座らせて無数に刻まれたソフィアの両親の死体。
惨殺体の側には賊が残したメッセージ…
『我々は何ものも拒まない。だから我々から何も奪うな』
私の中から抑えきれない怒りが込み上げる。
それと同時に無数の涙が目から溢れだした。
オレ達が何をした…
ただ生きて、平凡に暮らしたかった。
ただ、それだけのことだ…
何故オレ達から何もかもを奪う?
オレの夢はもう叶うことがない。
もう家族と食事をすることも…
友達と遊ぶことも…
そして…
ソフィアとの約束を守ることも。
あの幸せだった日々は、もう戻らない。
二度と、戻らないのだ。
クラピカは、我を忘れて声に出して泣き叫ぶ。
オレが悪いんだ。
早く村に帰っていれば…
もっとソフィアの傍にいてあげれば…
ソフィア…
どうか…オレを許してくれ…
クラピカは、しばらく拳を強く握ると、目を深い深い緋色に染めた。
許さない…
絶対に、奴らを許さない…!
必ずオレが
奴らに復讐してやる……!!
――――
―――――…
「打ち捨てられた同胞の亡骸からは一つ残らず目が奪い去られていた。今でも彼らの暗い瞳から語りかけてくる。"無念だ”と…幻影旅団を必ず捕らえてみせる!!仲間の目も全て取り戻す
!!金持ちの契約ハンターになれば様々な情報が聞き出せる」
レオリオは険しい顔でクラピカに伝える。
「だがそれはお前さんがもっとも嫌う誇りを捨てた飼い犬ハンターになるってことだぜ!?」
「…私の誇りなど仲間の苦しみに比べれば意味のないものだ」
話を聞いたリリーは、切ない表情でクラピカを見つめた。
クラピカにそんな残酷な過去があったなんて…
今までずっと一人で、すごく辛かったよね。
寂しかったよね…
苦しかったよね…
リリーはクラピカの話を想像をすると目頭が熱くなり、ぽろぽろと涙を流した。
それを見たレオリオは慌ててリリーに話しかける。
「オメェ…まさか泣いてんのか!?」
『ごめん…なんでだろっ…急に涙が…っ』
クラピカは自分の話を聞いて泣いている人を初めて見て驚いた。
「なぜリリーが泣くんだ。私は同情を買う為にこの話をした訳ではない!」
『うん…分かってる…っ、でも…』
リリーは泣き止む様子はなく、ずっと涙が溢れだす。
リリー…
お前はきっと心の優しい女性なのだろう。
だが私は、初めて出会ったときから思っていた。
何故お前は、ソフィアとこれほどまでに似ているんだ。
顔も、声も、喋り方も、面影も…
リリーを見ると、ソフィアの姿、思い出までもが浮かび上がる。
ソフィア…
もしもお前が生きていたら、こんな姿だったのか?
クラピカは切ない表情で、泣いているリリーを見つめた。
「私の話を聞いて涙を流したのはリリーが初めてだ。私の為に泣いてくれたのならすまない…」
そこでレオリオが話題を変えようとリリーに質問した。
「オイリリー!!もォ泣くなっ!!オメェはなんでハンターになりてェんだ!?」
リリーは少しずつ泣き止み、落ち着いてから口を開いた。
『…わたしはハンターをやってた師匠に2年ぐらい育てて貰ったの。わたし、なぜか子どもの頃の記憶が全然思い出せないんだ…。そしたら師匠がハンターの仕事を教えてくれたの!
ハンターは世界の色んなところに行けて、色んな情報も得られるから記憶を思い出す手掛かりになるんじゃないかって…だからハンターになりたいの!」
話を聞き、疑問に思ったクラピカは問い掛ける。
「記憶を思い出せないのか…リリーは家族はいないのか?」
その質問にリリーは一瞬、暗い顔をした。
「両親はいないけど…兄と姉が10人以上いるよ!でもみんな盗みや殺しの仕事をしててわたしもその仕事をやらされそうになったから嫌で家出したの」
「そうか…」
盗みや殺し…おそらく盗賊だろう。
一瞬幻影旅団が頭に浮かんだが、この世界に盗賊は他にいくらでもいる。
クラピカはあえて盗賊の話には触れなかった。
黙って聞いていたレオリオは、一瞬考えたが話し出した。
「…悪いな。オレにはお前らの志望動機に応えられるような立派な理由はねーよ!オレの目的はやっぱり金さ!!」
その発言にクラピカは気持ちを抑えきれずレオリオに怒りをぶつける。
「ウソをつくな!!まさか、本当に金でこの世の全てが買えるとでも思っているのか!?」
「買えるさ!!物はもちろん、夢も心も人の命もな!!」
怒りを感じたクラピカは更に激しく怒鳴り付ける。
「許さんぞレオリオ!!撤回しろ!!」
「なぜだ!?事実だぜ、金がありゃオレの友達は死ななかった!!」
一瞬その場の空気が氷つく。
リリーは恐る恐る口を開いた。
『…病気?』
レオリオは一瞬黙り混むと再び口を開いた。
「決して治らない病気じゃなかった!!問題は法外な手術代さ!!オレは単純だからな、医者になろうと思ったぜ!ダチと同じ病気の子供を治して”金なんかいらねェ"ってそのコの親に言ってやるのが夢だった。
笑い話だぜ!!そんな医者になるためには、さらに見たこともねェ大金がいるそうだ!!
わかったか!?金、金、金だ!!オレは金が欲しいんだよ!!」
レオリオも友達を亡くして辛い思いをしてたんだね…
この時、リリーは師匠の言っていた言葉を思い出す。
「ねぇ!私の師匠が言ってたんだけどね!“人は願いを叶える為に生まれてきた”んだって。だからレオリオ、絶対にいつか立派な医者になれるよ!!」
リリーは笑顔でレオリオを元気付けた。
レオリオはその励ましの言葉に「おうよ!!」と元気よく返した。
叶えるため…
その言葉にクラピカは、切ない表情を見せるとリリーから目を逸らした。
『あ…見て!!』
目の前を見ると段々と光が差してくるのに気づく。
「「『出口だ!!』」」
三人は急いで出口に向かった。
『……ここは』
出口を出るとそれは予想もしなかった暗くて、霧に覆われた広い湿原だった。
次第に出口の扉が閉まり、試験官サトツが話し出す。
「ここはヌメーレ湿原。通称“詐欺師の塒"。
この湿原にしかいない珍奇な動物達、その多くが人間をもあざむいて食糧にしようとする狡猾で貪欲な生き物です。
二次試験会場へはここを通って行かねばなりません。
十分注意してついて来て下さい。
だまされると死にますよ」
試験官が再び歩き出し、受験生311名は一斉に走り出す。
「ちっ、またマラソンの始まりかよ!!」
『もぅ終わったと思ったのにぃ~(泣)』
すると周囲の霧が段々と濃くなり始めた。
『うわっ…霧で何も見えない!』
焦るリリーにクラピカが強い口調で話しかける。
「はぐれるな!私の服を掴め!!」
リリーは言われたまま咄嗟にクラピカの服を掴みながら進んだ。
「レオリオーー!!クラピカーー!!リリーーー!!キルアが前に来た方がいいってさーーー!!」
ゴンの声だ!!
キルアもゴンも無事だったんだ!!
リリーは一安心するとレオリオが大声で怒鳴る。
「どアホーー!!行けるならとっくにいっとるわい!!」
「そこを何とか頑張ってきなよー!!」
「ムリだっちゅーの!!」
ゴンとレオリオのやり取りを見て、緊張感のなさにリリーは逆に感心する。
すると突然。
「うわぁあああああ――‼‼」
前の方から、激しい悲鳴が聞こえた。
『なっなに!?』
リリーの心臓が突然跳ね上がる。
すると次々に激しい悲鳴が前と後ろから聞こえた。
辺りは濃い霧で状況が全く分からない。
そこへ突然…
リリー達に目掛けてトランプが激しく襲いかかってきた。
「ってえ―――――!!!!」
レオリオの左腕に一枚のトランプが突き刺さる。
クラピカは咄嗟に二刀流でトランプを跳ね返し、 クラピカの後ろにいたリリーは助かった。
「レオリオ!!」
危険を感じ取ったゴンは急いでレオリオの居場所に駆け付ける。
レオリオは左腕の滴る血を押さえながら霧の奥から姿を現した人物に怒鳴り付けた。
「てめェ!!何をしやがる!!」
するとその人物は怪しい笑みを浮かべてトランプで遊びながらゆっくり近づいてきた。
「くくく…◆試験官ごっこ★」
next…