オリジナル編〚完〛
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呆然とログハウスに戻っていたソフィアは、気がつくと深い森の中にいた。
『ここは……どこ??』
半泣きになりながら周りを見回すソフィア。
何も見えない。
まさか、わたし……遭難した…!?
うっそうと茂る木々が、空を覆うように広がっている。
もっとも、木々の間から空が見えたところで、何の役にも立たなかっただろう。
その日は空が曇り、月明かりはまったく望めない状況だったのだ。
もうすぐ10月になる季節だからか、場所が場所だけに、肌寒いほど気温が低い。
完全な闇の中、ソフィアはとにかく明かりや建物が見えるものを探しながら歩く。
足元がよく見えない。
気を付けながら山道を進んでいたその時、突然足を滑らせて下に転がり落ちた。
『…いった、い…!』
ソフィアは起き上がり、ゆっくり立ち上がるが左足をくじいてしまったのか、ズキズキと痛む。
足の痛さにソフィアはその場に座った。
心臓が早鐘を打っている。
もしこのまま、みんなの所に戻れなかったらどうしよう…
寒いよ。痛いよ。
怖くて、怖くて、涙が出てきた。
ハンター試験でも暗い森の中で迷子になり、一人で泣いていた。
こんな時に思い出すのはやっぱりクラピカの顔。
突き放されても…冷たくされても…
助けに来るはずのないスーパーマンを心のどこかで待っている。
なんで待ってるんだろう。
クラピカはもう助けに来てくれないんだよ??
…と自分に言い聞かせる。
忘れられない温もり…
仲間といても心のすき間は埋まらなかった。
いつも誰かをクラピカと比べてしまっていた自分にやっと気づく。
やっぱりわたしには…
クラピカが…クラピカがいてくれなきゃ…ダメなんだよ。
『クラ…ピカ…!』
無意識に呼んだ名前が、涙で揺れている。
ソフィアは心の中で必死にクラピカの名前を呼んだ。
その時…
後ろからガサガサッと音がした。
『っ…!?』
ソフィアの心臓が、跳ね上がった。
反射的に音がした方へ振り返る。
瞬間、明るい光に照らされてソフィアは眩しそうに目を細めた。
「…ソフィア!」
ソフィアを見つけてほっと安心し笑みを浮かべたその人物に、ソフィアは大きく目を見開いた。
………クラピカだ。
来てくれた…
「大丈夫か!?」
心配した表情で近寄り、膝を折って視線を合わせるクラピカ。
ソフィアはクラピカの腕の中に強く抱きつき、安心したからか子どもみたいに声を出して泣きわめく。
この温もりを知っている。
突然、クラピカの脳裏に見たこともない情景が浮かんだ。
「………」
暗い、あれは何処だ。
同じ夜の森の中で、少女が私の腕の中で泣いている。
だが、少女の顔が分からない。
ソフィアの泣き声にはっと我に返り、クラピカはソフィアに優しく話しかけた。
「もう大丈夫だ、どこか痛むところはあるか?」
ソフィアは涙を拭きながら頷くと、左足を触った。
クラピカはその左足を懐中電灯で照らしながら状態を見た。
「足をくじいたのか…後で私が治してやる。とにかく戻るぞ、皆が心配している」
ソフィアは頷いた。
震えは相変わらず収まらず、指の先は氷のように冷たいまま、戻らない。
すると、ぽたぽたと雨粒が落ち始めてきた。
『……雨?』
クラピカはソフィアの体を抱きかかえ、歩き出した。
夢のお姫様抱っこにソフィアは瞬きした。
あたたかい。あたたかいけど…
『…待って、重たいよ!それに帰るんじゃないの??』
相変わらずガタガタと震えながらソフィアが首をめぐらせると、半分諦めたような顔でクラピカは答えた。
「そうしたいのは山々だが、雨が酷くなりそうだ。何処かで雨宿りした方がいいだろう」
クラピカの予感は的中したらしく、ごろごろと雷の音が響き出した。
ソフィアは目を見張る。
『でも…どこで雨宿りするの??』
「途中で山小屋を見つけた。そこでいったん待機しよう」
雨粒の量が増えていき、やがて絶え間ない雨音が響き出す。
嫌われたと思ってた。
クラピカは…優しい。
喧嘩をしたのに、わたしを助けに来てくれた。
わたしの体を抱きかかえるクラピカ。
雨は叩きつけるような激しい雨に変わっていく。
雨で濡れた服が冷たくて、クラピカの温もりが感じられない。
雨の音で、クラピカの鼓動さえも聞こえない。
雷が落ちる音にソフィアはクラピカの服をギュッと強く掴んだ。
「…大丈夫か?もう少しだ」
抱きかかえられたまま頷くソフィア。
クラピカの心配してくれる優しい声。
最近までは普通にしてくれていた事なのに、なぜか今日に限って涙が込み上げてくる。
いつものクラピカだ、いつものクラピカに戻った。
クラピカはいつもわたしの隣にいて、空気のような…
うまく言えないけど、いて当たり前の存在だった。
終わりを意識した時、初めて気づいた事。
空気がないと呼吸ができない。
クラピカがいないと、わたしは生きていけないんだ。
こうして助けに来てくれたのは記憶を思い出したから?
お願い、お願い…クラピカ。
もう離れないで。
ずっとわたしのそばにいて。
クラピカの髪の毛から垂れる雨の雫が、ソフィアの頬に切なく落ちる。
気がつけばソフィアの目の前には、木に囲まれ木材で造られたぼろぼろの小さな山小屋が建っていた。
これ以上むやみに動き回ると体力が消耗し、一刻を争う。
クラピカはソフィアを抱きかかえたまま扉を開けて、ほこりだらけの山小屋に土足で上がり込んだ。
ソフィアを暖炉の側でゆっくり床に下ろし、舞い上がったほこりを吸い込んで大きなくしゃみをする。
『えっぐしゅん、ふぇっ…しゅんっ』
おまけにけほけほと咳き込むので、見かねたクラピカは声をかける。
「大丈夫か?」
『うん…クラピカ、寒いよ…』
雨で全身がびしょびしょに濡れているソフィアは、寒さでがたがたと震えていた。
「待っていろ、いま火を熾すのを探している」
真っ暗な小屋の中、クラピカは懐中電灯で照らしながらマッチやライターを探す。
すると偶然にも床にライターを見つけ、急いで暖炉の側で床に落ちていた紙に火をつける。
しかし、ライターが火花のようにしか点かず、それに紙が湿気で湿っているためか中々燃えない。
「くそっ…点いてくれ」
何度も何度も紙にライターの火をつけ、やっと紙が燃えた。
それを暖炉の枝に点けて、暖炉の枝が段々と大きく燃えていく。
ソフィアは寒さに震える声でクラピカの背中を見つめて問いかける。
『記憶…思い出したの?』
お願い…そうだって言って。
「…いや、まだだ」
その言葉にソフィアの祈りをあっさりと打ち砕いた。
するとクラピカは突然、上の服を脱ぎだした。
クラピカの上半身裸の姿を見た途端、ソフィアの心臓がきゅうに跳ね上がった。
バクバクと鼓動の音が派手に走り始める。
クラピカはその服を乾かす為、置いてあった椅子にかける。
わけもなく固まってしまったソフィアに、クラピカが振り返った。
「濡れた服を着たままだと体温が奪われる。お前も早く脱げ」
『え…!?///』
「早く脱げと言っている、そのままだと危険だ」
ソフィアは慌てて首を横に振った。
『だ、大丈夫だから!!///』
「こんな時に恥ずかしがるな」
『でも…』
嫌だ、すっごく恥ずかしいよ。
なんでクラピカはそんな平気な顔していられるの??
それにもし、わたしの記憶を忘れた今のクラピカに蜘蛛の刺青が見られてしまったら…
絶対にまずい。
『…いや、脱ぎたくない』
その言葉にソフィアに詰め寄って、クラピカは怒りの感情をはらんだ目でソフィアを真っ直ぐに見下ろした。
「お前がなぜ震えているのか分かるか?その震えは寒さに寄る身震い、シバリングと言って低体温症の初期症状だ。
濡れた身体でいると寒さで体温が奪われ、激しく疲労してエネルギー補給が追いつかないと、低体温症になり、疲労凍死に陥る事がある。死にたくなければ、早く服を脱いでこれを使え」
そう言い放つと、クラピカは近くに合った毛布をソフィアに投げた。
『…ご、ごめんなさい』
わたし、バカだね…
こんな時に恥ずかしがって…わがまま言って。
ソフィアはクラピカに背を向けて、言われた通りに服を脱ぎ始める。
下着は付けたままで、身体を見られないよう毛布に包まる。
それを確認したクラピカは、右手の鎖を具現化した。
「怪我は確か左足だったな、見せてみろ」
『あ、うん。……っ!』
ソフィアはズキズキと痛む足に顔を歪めながら、毛布から左足をクラピカに出した。
クラピカは何も言わずに”癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)”を使って自己治癒力の強化により、ソフィアの左足を完治させた。
「…これでもう大丈夫だ」
え、もう?
ソフィアは左足を動かした。
『…ほんとだ、全然痛くない!すごい!あっという間に治しちゃうなんて、クラピカの鎖ってまるで魔法みたい!』
毛布一枚で子どもみたいに笑顔を浮かべて話すソフィアに、クラピカは少し照れたようにぷいっと横を向いて答えた。
「…そうか」
ソフィアは、ふと思った。
毛布を使っているのはわたしだけ。
クラピカ、きっと寒いよね??
本当は一緒に毛布で温まりたい。
ソフィアはクラピカの姿を見つめながら、胸の中に飛びついてしまいたかった。
………わたしに、勇気があれば。
でも今のソフィアに、そんな勇気はない。
本能のままに行動できればそれはそれでいいのかもしれないけど、そうしてしまって嫌われたらどうしようという不安もある。
それに今、クラピカに抱きついてしまえば、その先に起こる事が、ないとはいえない。
クラピカとまたあの頃みたいに戻りたい。
もう一度…クラピカと一つになりたい。
でも、この刺青が刻まれている限り…
怖くて、いざとなったら踏み出せずにいる。
その時…
ピシャーンッ!!!!
近くで大きな雷が落ちた。
ドクンと、心臓が跳ね上がる。
ガクガクと全身が震える。
ソフィアの様子に気づいたクラピカは訝しげに眉を寄せ、それから軽く目を瞠った。
「…お前、雷が怖いのか?」
ソフィアは頷いた。
ソフィアの心にうがたれた傷がある。
家を飛び出し、夜一人でおびえていた。
ゴロゴロ…
雷の音が空の奥から鳴り響いている。
かすかな音が、ソフィアの鼓膜に突き刺さる。
びくりと身を竦ませて、ソフィアはぐっと目を閉じ耳を両手で覆った。
ーーーかえりたくない…でもこわいよ…
幼い少女がいる。
膝を抱えて震えている。
ママとパパは、どうしてケンカしてるの?
大人はどうして、ごめんなさいって言えないの?
好きでいっしょになったんでしょ??
それなのに…どうして??
ゴロゴロ…
あの音はなに?
もしかして、かみなりの音??
さっきまで晴れてたのに、突然激しい雨が降り始める。
夏なのにひどく寒くて、ガタガタと震えの止まらない子ども。
繋がれた木の根元で体を硬くして、時が過ぎるのをただひたすらに待っている。
雷が落ちる音は、鳴り響く度に少女の心に、抜けない刺を突き刺した。
暗い、寒い、怖いよ…
誰かーーーーーーー。
耳をふさいで身を硬くしていたソフィアは、ふいに温かさを感じてそっと目を開けた。
ソフィアは何度か瞬きして、かすれた声で呟いた。
『…クラピカ?』
いつの間にか、すぐ横に座っていたクラピカは、ソフィアの方に体を向けて優しくソフィアの頭を撫でる。
「落ち着くんだ、ここにいれば安全だ。直に収まる。それに…」
クラピカは真っ直ぐにソフィアの目を見つめた。
「私が傍にいる」
ーーーママ、パパ…。
抱えた膝に顔を押し付けて、耳をふさいで身を硬くしていた少女。
その傍らには、一人の少年がいた。
木の根方に背をもたせ掛けていた少年は、すぐ傍らにうずくまった少女の頭を、何度も何度も撫でていた。
《泣くな、ソフィア。こわがるな》
少年はーーークラピカは、繰り返し繰り返し、ソフィアの頭を撫でては言い続けた。
《ソフィア、大丈夫だ。オレがいる、こわくないよ。独りなんかじゃないから、泣かなくていいんだ。雨が止んだらいっしょに帰ろう》
身を硬くしていたソフィアが、疲れて眠ってしまうまで。
眠ってしまったソフィアの目尻に伝う涙を拭い取って、自分の膝を枕にする少女の頭を、ずっと撫でていたーーー…
「もう、怖くないだろう?」
優しく微笑みながら尋ねるクラピカ。
その笑顔を見て、切なさで涙が込み上げる。
あの時といっしょだね。
でもね、どうしてかな。
こんなにも近くにいるのに…おかしいね。
クラピカを遠くに感じてる。
「…どうしたんだ?まだ怖いのか?」
気遣うクラピカに、ソフィアは沈痛な面持ちで訴える。
『怖いよ…』
「大丈夫だ、そのうち…」
『そうじゃなくて…』
ソフィアは激しく頭を振った。
深呼吸をして、クラピカをすがるような眼差しで見つめた。
『……このまま、ずっとクラピカが記憶を思い出さなかったらと思うと、怖いの…』
怖い…
ずっと記憶を思い出さず、私からいつか離れてしまう日が来るのではないかと。
カッコ悪くても…情けなくても…
それでも手放したくない。
クラピカの温かさに守られて、その優しい目に見つめられたい。
何もかもを捨ててでも、一緒にいたい。
誰にもあげたくないんだよ…
いつしか雷は止み、激しい雨音が静かな雨音に変わっていく。
黙然としているクラピカに、ソフィアは涙を浮かべた切ない瞳で静かに尋ねた。
『……クラピカ、わたしにキスして?』
クラピカは目を見開き、慌てて視線を逸らす。
「…ば、馬鹿者。いきなり何を言い出すんだ」
しかしソフィアは、自らクラピカに顔を近づけた。
『お願い…』
キスをしたら思い出すかもしれない。
それに、クラピカが今わたしのことどう思ってるのか知りたいの。
だから…
「駄目だ!私は…」
何を言いたいのか分かってる。
だけど今は聞かない。
聞きたくない。
ソフィアはそのまま目を閉じてキスの体勢をとる。
正直、クラピカは男としての理性は崩壊寸前だった。
無造作に見える鎖骨、熱くなって色づいた頬、ふっくらとした唇…
もう抑えられる訳がない。
興奮状態で藍色の眼が段々と緋色の眼に染まってゆく。
クラピカの手のひらは次第にソフィアの頬へと近づき、温かい手が触れた時、ソフィアの胸の鼓動はよりいっそう激しさを増した。
もうすぐ吐息が重なり合おうとしていることを感じる。
唇が触れ合うまであと約1㎝というところで、ゆっくりと距離は離された。
どうして。
待ってたのに…どうしてしてくれないの??
されると思ってたばかりにされないとなると無性にしたくなってしまう…本能。
ソフィアは不安げにクラピカを見上げた。
「…今度はキスをせがむのか、お前は本当に悪女だな。誘惑し、何股もかけ、次はキスで許して貰おうと根端か?」
『え、なに言って…』
「貴様はキルアやレオリオにこのような色目を使って今まで落としていたのか」
『きゃ…っ』
「ここで終わらせるのが名残惜しいのなら、続ける」
冷たい緋の眼で告げて、その場にソフィアを押し倒し、覆い被さったクラピカ。
冷ややかな目線にソフィアは固まった。
この人は誰…?
ほんとにクラピカなの??
前までの優しいクラピカの面影はどこにもなく、あるのは突き刺さるような冷たい緋の眼の視線。
クラピカは、低く冷めた声で問いかける。
「これがお前の望みなのだろう?覚悟はいいか?撤回するなら今だぞ」
ソフィアは怖くなり、クラピカの横頬を平手で叩いた。
クラピカは呆然とし、ソフィアに視線を戻す。
その目に映った姿にクラピカは目を見開いた。
瞳は緋色に変わり、辛そうに顔を歪め、涙を流すソフィア。
我に返り、同じ緋の眼だと確信したクラピカはソフィアの体から離れる。
「その眼は…」
ソフィアはクラピカを睨みつけると、離れて壁の隅に移動した。
あなたはわたしの好きなクラピカじゃない。
キルアに抱き締められて、何も抵抗しなかったせいでクラピカを傷つけたのは確かだよ。
でも、わたしの目の前でネオンと手を繋いだりしてたのを見て…わたしだって傷ついたんだよ??
それなのにわたしだけが悪いの??
わたしもクラピカがもう、信じられないよ…
ソフィアは毛布に包まって泣きながら、ひたすら時が経つのを待った。
頭の奥ががんがんと痛む。
まぶたが熱い。目尻が冷たい。
あれ?いつの間に寝ちゃったんだろ…。
ソフィアは起き上がって腫れぼったい目をこする。
朝日が射しているのかやけに部屋が明るい。
目の前の床に人影を見つける。
ソフィアは息を呑んで、その人影の正体に顔を向けた。
その目に映ったのは…
扉で顔を真っ赤にして立ちすくんでいる若い白人の登山客ふたり。
ソフィアは、突然心臓がたたかれたように跳ね上がるのを自覚した。
慌てて立ち上がり、暖炉の前で眠っているクラピカを叩き起こす。
『ちょっとクラピカ!起きて!!』
突然、叩き起こされたクラピカは、いささか不機嫌そうに言った。
「…朝から騒がしいな、なんだ。………!!!?」
上体を起こしたその時…クラピカは目を大きく見開き固まった。
ソフィアの胸を見て微動だにせず、頬を紅く染めるクラピカに、どうしたのかとソフィアはその視線の先を見た。
そういえば、昨夜雨で濡れたから服を脱いで上下とも下着だけだったのだ。
幸い毛布でお腹(刺青)は隠れていたが、ブラが丸見え。
しかもドアと窓からの日差しで部屋が明るい為、はっきりと見えている。
ソフィアは急に顔から火が出るほど恥ずかしくなり、悲鳴を上げた。
『…きゃぁぁぁぁぁ~!!!!////』
その悲鳴で「失礼しました‼////」と若い登山客ふたりは慌てて扉を閉めて走り出した。
慌てふためきながらソフィアは近くにあった自分の服で体を隠す。
『見た!?見たよね!?うわ~ん!!(泣』
「いや、その…」
クラピカは目を逸らしながら口元に手を押さえていた。
見ていないと言えば嘘になる。
これは正直に見てしまったと言うべきだろうか…
そういえば、毛布の隙間から一瞬ソフィアの腹の辺りに刺青のようなものが見えた。
クラピカは気になり、慌てて着替えているソフィアの腹部に視線を向ける。
横から腹部を覗かせたとき、やはり細い足のような刺青がちらっと見えた。
まさか……
クラピカは眉を寄せて、ソフィアに近づいた。
「その腹にある刺青はなんだ?見せろ」
『え!?そ、そんなのないよ!!』
「いいから見せてみろ」
『やだっ!!』
ダメ…!!
もしこの刺青を見られてしまったら…!!
がっしりと服を掴んでお腹を隠すソフィアに、クラピカは無理やり服を上に上げて腹部を覗いた。
腹部に刻まれた刺青に…
クラピカは大きく目を見開いた。
next…