オリジナル編〚完〛
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ソフィアは、休みの許可と準備の為、いったん館に戻った。
『失礼しまーす。ネオン?』
ネオンの部屋に入っていったソフィアは、すぐ横に本が飛んできたので思わず立ちすくんだ。
室内は、それは惨状だった。
「ヤダーーーーーーーーーーー!!!!ゼッタイ行くのーーーーーーーーー!!!!」
ネオンが部屋の物を投げながら、絶叫し泣きわめいている。
暴れているネオンにライト、クラピカ、センリツが必死に止めようとしていた。
だがネオンの暴れがおさまることはなく、更に口調も激しくなっていく。
「クラピカと一緒じゃなきゃヤダーーー!!わたしもキャンプに行くのーー!!!!」
とうとう折れたライトはネオンに優しく許可を出した。
「分かった、ネオン。一緒に行ってもいいが、帰ってきたら溜まった分の占い頼んだぞ」
「グスン…うん、ぜったいやるもん!!」
やっと室内が静かになり、ライトはクラピカ、センリツ、ソフィアに振り返った。
「娘もまだまだ遊びに出かけたい年頃だ。すまないがネオンも連れて行ってくれ。お前達3人が着いていれば大丈夫だろう。ただし、明日の昼までには必ず無事に連れて帰って来るように。いいな」
「「『はい』」」
「それじゃ、ネオン。早く仕度をしなさい」
「はーーーい!!パパ、ありがとっ♪」
泣き止んだネオンは嬉しそうに仕度を始めた。
まさかの事態にソフィアは複雑な心境だった。
クラピカはモテるから仕方がない。
だからってわざわざネオンにキャンプの事、話さなくてもいいのに。
クラピカは一瞬こっちをちらっと見たが、すぐに目をそらし部屋を出て行った。
ーーー2時間後。
アルニ山のバス停に到着したソフィア達は、ゴン、キルア、レオリオと再会した。
初めて見るネオンの姿に3人は目を丸くした。
「……って誰だ?この子?」
ソフィアに問いかけるレオリオにネオンは笑顔で元気に答えた。
「ネオンです!よろしくっ♪♪」
「え!!じゃあ…クラピカ達のボス!?」
驚くゴンにクラピカは頷いた。
レオリオはクラピカにいきなりヘッドロックをかましながらバス停のそばを離れる。
「おいっ…離せっレオリオ!!いきなり、なんだ!!私を何処に連れていくつもりだ!!」
「おいおい!なんであの女も連れて来たんだよ!!」
「ボスからの頼みだからだ、何か来てはいけない理由でもあるのか?」
「い、いや。別にねーけどよォ!」
すると遠くからバスが見えて、ソフィアは後ろの二人に声をかけた。
『バス来たよー!』
「バスだバスーー!!」
「ゴン、子どもみたいにはしゃぐなよ」
「キルアだって子どものくせに~!」
バスが到着し、7人(ソフィア、ゴン、キルア、レオリオ、クラピカ、ネオン、センリツ)はバスに乗り込んだ。
ゴン、キルア、レオリオが考えた『クラピカがソフィアの記憶を思い出す作戦』では…
作戦① バス内の席はクラピカとソフィアを隣の席にさせること。
だったのだが、ネオンがクラピカにべったりとくっつき、結局クラピカとネオンが隣同士に座った。
その後ろの席にソフィアとセンリツが座る。
前から楽しそうにクラピカとネオンの会話が聞こえてくる。
ソフィアはセンリツからもらった冷凍みかんを食べながら、なんとかそのストレスを紛らわせていた。
なによ。
わたしが恋人だって知ってるのにネオンといちゃいちゃしちゃって。
クラピカのバカ…
隣ではゴンとキルアがお菓子の取り合いで喧嘩をしていた。
寝ているレオリオが何度か起きて「うるせぇ~!!」と怒鳴る。
そんなこんなで、3時間後。
アルニ山に到着し、全員キャンプ場に向かって山を登っていく。
しばらく登っていくと遠くの方に家が見えてゴンは大きく目を見開いた。
「わぁ~キャンプ場だ!!見てキルア!川もあるしログハウスもあるよ!!」
「キャンプ場なんだから当たり前だろ、そんなの」
嬉しそうにはしゃぐゴンにキルアは内心喜びながらもクールに突っ込む。
目の前を歩くクラピカとネオンの姿。
歩きなれない山道にネオンは疲れたぁ~と座ってだだをこねる。
「ボス、もう少しです」
クラピカはネオンに手を差し出す。
ネオンはクラピカと手を繋いで立ち上がり、登り始めた。
そんな二人を見てしまったソフィアは、胸が張り裂けそうなほどの痛みを感じた。
ネオンがうらやましいよ。
ネオンになりたいよ。
もう一度…もう一度あの頃のようにクラピカに愛されたいよ。
カッコ悪くて情けない本音…でも痛々しく切実な願い。
そんなソフィアの悲しい心音を聞き取ったセンリツは、声もかけられずにいた。
隣を歩くレオリオは不機嫌そうに呟く。
「…なんだあのガキ、すっかり彼女気取りだな。ソフィア気にすんな」
ソフィアの肩に手を置いて励ますレオリオにソフィアは無理やり笑顔を作った。
『……うん、ありがとう!』
キャンプ場に到着し、それぞれバーベキューの準備を始めた。
ゴンとキルアは川で魚釣り。
レオリオ、クラピカ、ソフィアはお肉や野菜を焼いていく。
センリツとネオンは椅子やお皿、コップの準備をしていた。
肉を焼きながら、レオリオは二人に話しかける。
「こーやって皆で何かするのもたまにはいいな。ハンター試験を思い出すぜ」
『そうだね、あの2次試験を思い出すなぁ…あ、スシネタでレオリオスペシャルはある意味最高だったね!!』
思い出しながら笑うソフィアに、レオリオも笑って言い返す。
「ソフィアの作ったエイリアンも負けてなかったぜ?」
『だからあれはエイリアンじゃないって!』
初めて聞いた話にクラピカは聞き返した。
「エイリアン?」
「あぁ、お前は忘れてるんだったな!ソフィアが作ったスシがよ~もうひどすぎて見てられなくってよ~!ホントにエイリアンの死骸みたいだったんだぜ!?」
『ひど!!レオリオのスシもただのご飯と魚の塊だったじゃん!!』
「オレはソフィアよりも全然ましだからなぁ~!!」
『なによ~!レオリオのバカー!!』
痴話喧嘩のようにも聞こえる二人の会話にクラピカは面白くもない不機嫌な表情で口を開いた。
「随分と仲がいいんだな、二股か?」
え、二股…!?
予想外の言葉にソフィアは目を丸くした。
その言葉にレオリオがニヤリと笑った。
「クラピカ、もしかして嫉妬したのかァ?」
「嫉妬などではない。ただ、君は私の恋人だったのではないのか?」
ソフィアを見つめて問いかけるクラピカ。
クラピカ、自分勝手だよ。
クラピカだって、知っててネオンと仲良くしてるじゃない。
だけど、それでもクラピカが妬いてくれたことに喜んでいる自分が無性に腹が立つ!
こうなったら、いっぱい嫉妬させてやるんだから~!!
『ね~ダーリン。熱いから気を付けてね?わたしもお肉焼くの手伝う♡』
「ダ…ダーリンだと!?」
ソフィアはレオリオの隣にくっついて、レオリオを上目づかいで見つめる。
「(ダーリン!?そうか、読めたぜ。ソフィアはクラピカを妬かせたいんだな!仕方ねーなァ)おう!ありがとな、ハニーも気をつけろよ!」
『うん!気をつけるっ』
ソフィアはちらっと目でクラピカの顔をうかがった。
目が合ったその瞬間…ぶちっ。
怒りの臨界点、突破。
クラピカは燃え上がる目でソフィアを睨み付けた。
「おい、いったいなんなのだ!本当は何股もかけているのか!?まさか…二人はデキていたのか?」
「だったらどうする?」
肉を焼きながらクラピカに問いかけるレオリオ。
その質問にクラピカは冷静さを取り戻して答えた。
「…別に、どうもしないが」
「強がっちゃってよー。ほら、肉焼けたぜ。ハニー、ゴンとキルアを呼んで来てくれ!」
『分かった!ダーリン♡』
ソフィアは言われた通りその場を後にする。
「おい、やっぱりデキてるのか!?待て!!」
再び怒り出すクラピカを、レオリオが半ば呆れて眺めやった。
二人とも、意外と素直じゃねーなぁ。
あ~煙で目が痛ぇ…
日が暮れて、辺りが真っ暗に染まった頃。
全員はテーブルに囲んで座り、肉や野菜、ゴンとキルアが釣ってきた焼き魚を完食した。
レオリオは持ってきたビールを飲んで酔っ払っていた。
「ぶはぁ~!今夜のビールはホンットにうめェなァ~!!」
『レオリオ大丈夫?そんなに飲んで…』
「なぁ~にこれぐらい、水みてーなもんよ!!ほら、お前らも飲めよ!お前らの分も酒持ってきたんだからな!」
ゴクゴクと飲み続けるレオリオを見ていたクラピカは急にレオリオの歳を思い出した。
「おい、レオリオ。お前、未成年のはずじゃ…」
「すっっごい老けてるけどな!!」
「だぁー!!老けてる言うな!!気にしてんだからよー!!」
笑いながら言うキルアにレオリオががおうと吠える。
「いいなぁ~私も飲んでみたい!!」
羨ましそうにレオリオを見つめるネオンにセンリツが止めた。
「ボスはまだダメですよ。…あ、ねぇ皆さん。今から昔話を作っていくゲームしてみない?」
「なにそれ!面白そう!!」
「昔、音楽仲間とやったゲームなの。人数も多いし、きっと楽しいわ」
「いいな、やるか!!」
ビールを飲みながら同意するレオリオ。
「オレ、そーゆうのパス。頭使いそうなのムリ」
「い~じゃんキルア!!面白そうだしやってみようよ!!」
ゴンの説得にキルアは仕方なく黙って頷いた。
センリツは指を立てて話し出す。
「じゃあ、私から時計回りでいくわね。え~むかしむかし、カレンという女の子がいました」
「いいな!次はキルアの番だ!」
レオリオに言われてキルアは嫌な顔をした。
「も~オレかよー。ホントにこーゆうの苦手なんだよなァ…」
「つべこべ言わないでさぁ、ほらキルア!」
ゴンの言葉にキルアはうつむいて腕を組んで考え込む。
話が浮かんだのかキルアは顔を上げて話し出した。
「…グレンという男とカレンは仲良しだった」
「カレンとグレンってなにそれ!!ギャハハッ!本に出てくる名前みたい!ねェ~女の子の名前、ネオンにしてよ~!!」
「それはムリ!ハイ次!!ネオンちゃんの番!!」
レオリオに拒否られてネオンは軽く頬を膨らませるが、楽しそうに話し出した。
「カレンの前にイシトというカッコイイ人が現れて、カレンが一目惚れするの!!そして、愛の告白をしましたぁ~っ♪」
話が恋愛物語になっていき、全員は次のレオリオの話に期待した。
だが…
「お~難しくなってきたぞ~!?よし、こーなったらいやらしい方向に持ってくぜ?カレンとグレンはホテルに行ったんだ!」
『なにそれ~!?』
「ダメか!?愛し合う二人ならそれが自然な流れだろ!?」
「そんなのロマンティックじゃない!!」
声を上げ、唇を尖らせて落ち込むネオン。
そして、レオリオの言葉に疑問を浮かべるゴン。
「レオリオ、なんでホテルに行くの??」
純粋に尋ねるゴンにキルアが話を流そうとする。
「お前はまだ知らなくていーんだよ」
「え!!キルアは知ってるの!?」
「し、知らねーよ!ハイ、次々!!」
「分かった分かった!!カレンはグレンとイシトの間で葛藤した。つまり三角関係!これでど~だ!?」
レオリオの話にネオンは目を輝かせた。
「三角関係!?なんか素敵ッ♪」
「い~か!?よしよし!」
話はどんどん進んでいく。
キルアはグレンとカレンをいつの間にか自分とソフィアに重ねて話し出していた。
「グレンはカレンがどんなことをしても怒らなかった。カレンを本気で好きだったから…」
次はゴンの番だった。
「次はオレの番だね!ん~オレ恋愛とかよく分からないから適当にいくよ!えっと、カレンは実は他の人が好きで、グレンをふっちゃった!!」
「お!?ゴンにしちゃあ上出来じゃね~か!!」
レオリオに褒められてゴンは嬉しそうに頭を掻く。
「実はミトさんがよく恋愛ドラマにはまってたから、そのドラマでやってたのを言っただけなんだけどね!」
「ミトさんってドロドロの恋愛ドラマとか好きそうだよなー」
皆が盛り上がっている中、ソフィアはカレンを自分と重ねていた。
クラピカは目の前にいる。
今こんなに近くにいるのに。
……遠い。遠すぎる。
手を伸ばしても届きそうにない。
そう、まるで二人の間に厚い壁があるかのように。
「……ソフィア……ソフィア!」
センリツの声にソフィアは、はっと我に返った。
「ソフィア、次はあなたの番よ」
『うん…イシトは、事故で記憶を無くし…カレンの事をすべて忘れてしまいました』
その話にクラピカはソフィアを見つめた。
クラピカとソフィアは互いに目が合うが、ソフィアから視線を逸らす。
そしてソフィアは立ち上がり、ログハウスに向かって歩き出した。
「それからのイシトは女たらしになっちまった!」
レオリオの話にネオンが怒り出す。
「え~~!!せっかくロマンティックだったのにぃ~!!」
「すまねぇ、やり直しだ!!え~カレンがその村を去る前日、イシトが訪ねて来ました。…クラピカ、お前で最後だ!」
静まり返る空気の中、クラピカは暗い面持ちで口を開いた。
「イシトは最後にこう告げた。……「すまない」」
ここにいる皆は、あの彼女を名前で呼んでいる。
初めは彼女の名前が直ぐに思い出せていた。
しかし、何度も何度もその名を聞いてるはずのなのに、どういうわけかクラピカの心にその名が刻まれることはない。
常に耳をすり抜けて、気がつけばなんという名前だったのか忘れている。
仲間の顔やネオンの顔は直ぐに思い浮かべることができるのに、実際に目で見なければあの彼女の姿は分からなくなる。
まるで何かのまじないにでもかかっているかのように、ひとりだけ。
それがどういうことなのか、考えようとも思わない不自然さ。
だが、心に残る罪悪感。
クラピカはそれにすら気づかなかった。
風が冷たくなり、全員はログハウスの中に移動した。
ネオンは相変わらずクラピカにぴったりくっついて楽しそうに話している。
ゴン、キルア、レオリオ、センリツ、ソフィアは別の部屋でこそこそとクラピカがソフィアの記憶を思い出すための作戦について話し合っていた。
「よし、センリツとゴンはネオンに花火を誘って外に連れ出してくれ。ソフィアは急いで着替えて作戦②から実行だ!」
レオリオの命令に3人は各自、動き出した。
センリツ、ゴンは嫌がるネオンに何とか興味を持たせて、なんとか外に連れ出した。
ソフィアはハンター試験に着ていた服装に似ている服装に着替えて、クラピカの前に姿を見せた。
作戦②リリーの時、ハンター試験で初めてクラピカと出会ったときの会話をする。
『クラピカ!私はリリー。よろしくね!!』
「……………」
一瞬ソフィアを見たクラピカだったが、何も反応せずに持参していた本を読み始める。
ソフィアは今にも泣き出しそうな勢いでレオリオ、キルアの所に戻った。
『ダメだったぁ…』
「リアクション無しかぁ…」
「大丈夫だ!次は旅団だった時の服装でもういっちょだ!蜘蛛の時のことならきっと思い出すかもしれねェ!!」
『うん、分かった。やってみる!』
作戦③ 蜘蛛時の服装でクラピカと再会した時の会話をする。
読書をしていたクラピカは、二度目の着替えてきたソフィアに嫌気がさしたのか、読んでいた本を下ろした。
「今度はなんだ…」
『あなたの事なんか知らないって言ったでしょ!?早くこの鎖はずしてよ!!』
ぶちっ。
『どう!?思い出した??』
クラピカは目を吊り上げて、低い声で告げた。
「お前は私に喧嘩を売っているのか?いい加減にしろ」
ガーーーーン。
低い声音にソフィアはおびえたように首をすくめて、しょんぼりと引き返して行った。
「やっぱダメかぁ~」
『火に油を注いだような…』
「ちくしょ~っ!バッチグーの作戦だと思ったのによ~!!よし、ソフィア。これで最後の作戦だ!!」
最後の作戦を知らないキルアとソフィアは、疑問を浮かべた。
「最後の作戦って、なんだよそれ」
「なずけて…お色気作戦!!」
『はぁ??そんなので思い出すわけないよ!だいち色気のある服なんて持ってきてないし…』
「オレが用意したぜ!!」
レオリオは自身気に親指を立てると、リュックから服を取り出した。
キルアとソフィアは目を点にする。
「『これって……』」
作戦④ お色気の服でとにかく攻めろ!!
読書に夢中のクラピカは三度目に現れたソフィアの事は完全無視。
『クラピカ!…ねぇクラピカ!』
何度も何度も名前を呼ぶソフィア。
クラピカの眉間に刻まれたしわが、一本、また一本と増えていく。
全くうっとうしい、限りなく…
さっきから、一体なんなのだ!!
心の中で吠えたてながら、しかし表面上は大人しく、やっとソフィアに目を向けた。
ソフィアの姿に絶句し、目を見開く。
『クラピカ…に、似合うであるか??//』
ソフィアの身につけていたその服装は…
まさかのチャイナ服。
サイズが少し小さいのか、身体のラインがはっきりと分かる。
時々見える太ももが妙にいやらしい。
しかも、意外と似合っている。
先程から彼女はいったい何をしたいのか、まるで見当がつかない。
………まさか。
こんな場所で私を誘っているのか?
私の彼女は実は軽い女なのか?
クラピカは目線を本に戻し、冷たく言い放つ。
「何をしている、そんな恰好で風邪引くぞ」
『クラピカ、どう?今のわたしを見ても何とも思わない??』
切ない表情で問いかけるソフィアに、クラピカはうんざりといった顔で深いため息をついた。
「思わないな。…いくら私達が恋愛関係だったのだとしても、この場で私に誘惑するなど不謹慎極まりない。
いい加減にしろと何度言ったら分かるんだ?私に話かけるな」
ソフィアは何かを堪えるように目を細めた。
合わせた両手に力がこもって、白くなっている。
『…なんで、そんなに冷たくするの??誘惑なんかしてない!わたしはただ…』
泣き出す寸前のように大きく肩を震わせて、だがソフィアは決して泣きはしなかった。
ただ、辛さを堪えるように顔を歪めている。
『…いい加減にしろはこっちの台詞よ!わたしの気も知らないで勝手なこと言わないでよ!!』
ソフィアはいきり立ち、その場を後にした。
「どうだクラピカは!?効果抜群だっただろ!?」
自身気に尋ねるレオリオに、ソフィアは冷たく聞き返す。
『……何が?』
「何がって今着てる衣装だ!このコスプレされたら男心はこっちのもんだ!!」
「ホントはお前がソフィアに着せたかっただけじゃねーの?」
図星のレオリオは慌てて声を上げた。
「なっ、何言ってんだ!!んな訳ねーだろ!?あくまでクラピカの為だぜ!?」
「クラピカはレオリオみたいなスケベじゃねーし。あの真面目人間のクラピカがお色気を見ても喜ぶタイプじゃねーよ(オレだったら嬉しいけど…)」
「そうかァ…じゃあ、どーすりゃいーんだ?なんなら明日用の作戦考えるか!?」
『あのさ…もういいよ。考えなくて…』
これ以上、クラピカに冷たくされるのが怖い。
嫌われたくない。
今は、一人になりたい。
『…ごめんね、もういいから。着替えてくるね…』
かすかに震える声でそう呟くと、ソフィアは着替えを持って部屋を出て行った。
着替えを終えたソフィアは、外の川岸に座って空を見上げた。
夜空は厚い雲に覆われて、星と月が見えない。
今にも泣き出しそうな空模様。
まるで今のソフィアの心を映しているかのようだった。
天国にいるお母さん、お父さん…
クラピカのお母さん、お父さん…
わたしにできるかな?
クラピカを幸せにすることが。
もう、なんだか自信がなくなっちゃった。
このままわたしを思い出してくれない気がするよ。
弱いわたしで、ごめんね…
もう、どうしたらいいのか分からない。
怖い、怖い、怖い…
これ以上、傷つくのが怖いです。
ーーー大丈夫よ、自分の信じた道に進みなさい。私達はどんな時でもソフィアの味方だからーーー
ときどき雲から顔を出す月でお母さんがそう伝えようとしてくれてる…
そんな気がしたんだ。
冷たい頬には温かい涙がぽろぽろと流れ落ちた。
next…