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ハンター試験編
ヒロイン名前設定
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ザバン市に着いたリリーは、ナビゲーターに試験会場を案内されていた。
ナビゲーターが立ち止まり指差した場所は、目の前の高くて立派な建物…
ではなく、ごく普通の定食屋。
目を丸くして疑問を浮かべた表情のリリー。
店に入ると、愛想が良い店主が料理をしながらリリー達を迎えてくれた。
「いらっしぇーい!ご注文はー?」
するとナビゲーターはあっさり答える。
「ステーキ定食」
ピクッ
「焼き方は?」
「弱火でじっくり」
「あいよー、奥へ入んなー」
リリーは何が何だか分からないまま案内された奥の部屋に入る。
「君なら来年も案内してやるよ、頑張れよ。ルーキーさん」
ナビゲーターがそう言うと、自動ドアが閉まり、二人は別れた。
部屋に取り残されたリリーは、目の前の鉄板を見た。
鉄板の上で焼かれる美味しそうなステーキが5枚ほど並べられていた。
ガタン…ヒュー
部屋がエレベーターの様に下へ動き出す。
『…さっきの合言葉だったんだ。ていうかこれ、もしかして全部食べていいのかな?』
リリーは試験会場まで何も食べていなかった為、かなりの空腹状態。
リリーはひとくち口に含んだ。
『ん~♪美味しいっ‼』
美味しさの余り手が勝手に動き…
ステーキ3枚はぺろりと食べてしまった。
『あ~美味しかったぁ。これから試験とかなんかやる気なくなってきたなー。う~残り2枚もったいないなぁ~どーしよ…』
エレベーターはどんどん下に降りていき、「B100」の表示された所で止まった。
チン
『え、もう着いたの!?』
リリーは心の準備が出来ていないまま、慌てて扉の前に立つ。
扉が開くとそこは薄暗く、受験生300名以上が待機している地下道だった。
受験生達は、一斉にリリーは観察するように鋭い目付きで見つめると、ふいっと元に戻る。
ただその場で立ち尽くすリリーに、試験官が受験番号札を渡す。
番号札は303。
なんかこの空気いやだなー。
女一人だから心細いし…
目立たない場所に行こ。
リリーは地下道の隅に移動しようと受験生の人混みの中を謝りながら進む。
ドン
下ばかり見て進んでいたリリーは、頭が誰かの背中にぶつかった。
『あっ…ごめんなさい』
見上げるとオールバックに似た独特の髪型、左目には涙型、右目には星形のペイントをしたピエロのような男性だった。
「くくく…★大丈夫かい?」
男は妖しい笑みを浮かべてリリーを見下ろす。
『…はい、大丈夫です…』
「そう◆それならよかった★」
男はそう言うと密かに笑いながら歩いていった。
な…なにあの人。
ちょー怖かったんですけど~‼
リリーは隅に着くと座り込み、誰とも目を合わさずひたすら開始時間を待った。
そろそろ開始時間が始まる頃、エレベーターの扉が開いた。
甲高い男の子の声が聞こえる…
リリーは立ち上がり人混みの間から覗いた。
すると少年と目が合う。
「あー‼あそこに女の子がいる‼」
ビクッ‼
「おっマジか!?どこだどこだ??」
釣竿を持ち、ツンツン頭の黒髪の少年が笑顔で近づいてくる。
「こんにちは!オレ、ゴン!君もハンター試験を受けに来たの?」
『え、うん!あの、私はリリー。よろしくね‼』
この子いくつかな?
私よりもちろん年下だよね?
ちょー可愛い‼
ゴンに笑顔で返事をしたリリーの元に今度は黒の背広の上下とサングラスを身に付けた体格の良い男性が話しかける。
「初めましてお嬢さん!私はレオリオと言います。いや~こんな所であなたのようなお美しい女性に出会えるとは、感謝感激と申しますか…」
男性はリリーの手を握ってキザっぽく自己紹介をする。
そこへ…
「おい、レオリオ!何をして…」
レオリオに呆れ顔をした金髪の少年が近づきリリーを見つめると、少年は大きく目を見開いて呟く。
「…ソフィア……」
…え?
少年の口から知らない名前が出る。
ソフィアって誰だろ?
それにしても、この人超かっこいい////
リリーは惹かれるように少年を見つめた。
「あ、紹介するよ!友だちのクラピカ!クラピカ、この子はリリーだよ!」
ゴンが元気よく変わりに紹介するが、クラピカはただ目を見開いてリリーをじっと見つめる。
「オイ、クラピカ!どうしたんだ?まさかリリーに一目惚れしたか!?」
ひっ一目惚れ!?///
リリーは少し頬を赤くする。
クラピカは再び口を開き、何かを言おうした途端…
ジリリリリリリリリリリリリリ
地下道に突然ベルの音が響き渡った。
「只今をもって受付時間を終了致します。ではこれよりハンター試験を開始致します。こちらへどうぞ‥」
試験官は歩き始める。
「申し遅れました。私、試験官のサトツと申します。さて、一応確認致しますがハンター試験は大変厳しいものであり、運が悪かったり実力が乏しかったりすると怪我をしたり、死んだりします。それでも構わないと言う方のみ着いてきて下さい」
受験生404名は当然誰一人引き返さず、言われたまま試験官に着いていく。
試験官の歩くペースが段々と上がり始め、受験生達は走りだした。
「もうお気づきの方も多いでしょう。これから皆さんは二次試験会場までついてくること。
それが一次試験です」
――――
―――――…
スタートから3時間が経過した。
およそ40キロは走っただろうか。
しかし受験生は誰一人脱落しない。
『(足が痛い…も~いつまで走ればいいの~!?』
リリーは汗だくで荒い息を吐きながら必死に走り続けた。
そこへ余裕な面持ちでスケボーに乗る銀髪の少年がリリー達の前を抜かす。
「おいガキ!汚ねぇぞ!!これは持久力のテストなんだぞ!?」
レオリオは銀髪の少年に怒鳴り付けるが少年は全く動じない。
「違うよ!試験官は着いてこいって言っただけだもんね!」
少年をかばうゴンにレオリオは再び怒鳴る。
「おいゴン‼おめぇどっちの味方だ‼」
「みんなの味方だよ!」
ゴンは元気に答えると少年はゴンに話しかけた。
「ねぇ君、年いくつ?」
「もうすぐ12歳!」
「(ふーん、同い年ね…)」
キルアは一瞬考え込むとスケボーから降りて一緒に走る。
「オレ、キルア」
「オレはゴン!」
互いに自己紹介するとキルアはレオリオに話しかける。
「オッサンの名前は?」
「オッサ…これでもお前らと同じ10代なんだぞ‼オレはよ‼」
全員耳を疑い大声を出す。
「「『ウッソォ!?』」」
「あ―――‼みんなひっでー…もォ絶交な‼」
「女もいたのか、おまえ名前は?」
今度はリリーに問いかける。
『(お前って…わたしよりも年下のくせにっ!)わたしはリリー、16歳。よろしくね!』
リリーは、一瞬ムカッとしたものの笑顔で自己紹介をする。
「…よろしく」
キルアはじっとリリーを見つめながら、少し素っ気なく返事をした。
仲間が一人増え、5人はひたすら走り続けた―――…
80キロ地点追加。
脱落者は未だに一名。
リリー達はそろそろ限界を感じてきたが必死に力を入れて長い階段を走り続ける。
クラピカは、上半身裸でネクタイだけをしたバテ気味のレオリオとリリーに話しかけた。
「レオリオ、リリー‼大丈夫か!?」
『うん!!なんとか…っ‼(もう疲れすぎて死にそう…っ‼)』
「おう‼見てのとーりだぜ‼なりふりかまわなきゃまだまだいけることが分かったからな‼フリチンになっても走るのさぁ――‼クラピカ‼ リリー!!他人のふりするなら今のうちだぜ‼」
リリーは一瞬、他人のふりをしようか悩んだ。
「全くアイツは、女性がいるというのに…」
レオリオの発言に少々呆れ気味のクラピカだったがレオリオの根気を見習い上着を脱いで鞄に入れた。
きゃーっかっこいい////
リリーは一瞬クラピカに見惚れる。
そういえば…
クラピカは何でハンターになりたいのかな?
リリーは気になりクラピカに問いかけた。
『ねぇ、クラピカ!クラピカは何でハンターになりたいの?』
クラピカはリリーの質問に一瞬考え込むと少し険しい表情で口を開いた。
「…私はクルタ族の生き残りだ。緋の眼を持つ少数民族。緋の眼とは、クルタ種族固有の特質を示す。感情が激しく昂ると瞳が燃えるような深い緋色になるんだ。
その状態で死ぬと緋色は褪せることなく瞳に刻まれたままになる。
その緋の輝きは世界7大美色の一つに数えられているほどだ」
「…それで幻影旅団に襲われたって訳か」
レオリオは初めて聞いた話を冷静に返す。
『幻影旅団…?』
リリーは横からクラピカを見つめる。
クラピカの目からは悲しみと怒りがひしひしと伝わってくる。
クラピカの脳裏に5年前の記憶が甦る―――…
ルクソ地方の少数民族の村。
当時の私は12歳。
このときの私は村から出て外の世界を見ることに憧れを抱いていた。
「クラピカ、ほんとに行っちゃうの?」
私に話しかけて来たのは、幼馴染みで一つ年下のソフィアという少女だった。
私は10歳の頃にソフィアと出会い、それからいつも行動を共にし、いつの日かソフィアに恋心を抱くようになっていた。
私にとって彼女は、誰よりも大切で、かけがえのない、まるで宝物のような大事な存在だった。
「あぁ、明日の朝には出発する」
貴重な眼を持つ我々クルタ族は、危険を避けるため、村から出るときには必ず試験を受けなければならなかった。
その試験が無事に合格し、とうとう明日が出発を迎える日となった。
「明日出発しちゃうのかー。寂しいし、なんか心配だなぁ…」
ソフィアは今にも泣きそうな面持ちで視線を床に向ける。
「心配するな、必ず帰ってくる」
私は仄かに笑ってソフィアの頭を優しく撫でた。
するとソフィアは寂しそうな目で見つめる。
「絶対だよ?わたしクラピカのこと毎日お祈りして、ここで待ってるからね!」
ソフィアは私の服をぎゅっと掴む。
私はソフィアを見つめ、首を縦に振った。
「分かった。必ず迎えに来るから、その時はオレが外の世界を見せてあげよう」
私の言葉に、ソフィアは花が咲いたように笑って頷いた。
「うん、約束ね!」
私達はお互いの小指を絡め合い、指切りをした。
そして…出発の日の朝。
見送りには私の家族や親戚、ソフィアとソフィアの両親、友達、村長がいてくれた。
「クラピカ、気を付けてね。忘れ物はない?」
友達と話した後、母が気にかけて私に問い掛ける。
「大丈夫だよ。母さん…ありがとう」
母は寂しそうな笑顔で頷く。
すると今度は、父が耳に付けていたイヤリングを外すと私の左耳にそれを付けた。
「これはクルタ族が伝わる成人を迎えた儀式のイヤリングだ。成人までまだまだ先だが…受け取ってくれ」
クルタ族の成人は17歳。
成人までには帰ってくるのに
何故いま渡すのか…
不思議に思いながらも素直にそれを受け取った。
「ありがとう、父さん」
ずっと下を向いて落ち込んでいるソフィアにソフィアの母が話しかける。
「ほら、ソフィア。早くクラピカに挨拶しなさい」
ソフィアは寂しさの余り拗ねてずっと下を向いている。
ソフィア…
寂しい思いをさせてしまってすまない。
だけどオレは必ずまた帰ってくる。
「約束を忘れたのか?」
私は落ち込んでいるソフィアに話しかける。
ソフィアは目を丸くして思い出し、涙を堪えながら強く首を横に振った。
「…クラピカ、いってらっしゃい!気をつけてね‼」
涙目だが頑張って満面の笑顔で手を振るソフィアを見て何故か安心し、少しずつ歩き出すと私は笑顔で声をあげて手を振った。
「ソフィア!皆!行ってきます‼」
そして…
村を出てから6週間後…
「クルタ族128名全員虐殺」のニュースが流れた―――…
next…