ヨークシン編
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キルアは幻影旅団のアジト付近に到着し、ソフィア、クラピカ、レオリオ、ゴンは旅団に気づかれないよう変装するためにデパートで買い物をしていた。
『きゃー!クラピカ可愛いっ///カツラ似合う!!スカートなんかどぉ??』
「こんなヒラヒラのスカートは嫌だ!!…て、コラソフィア!!遊びじゃないんだぞ!?」
「それにしてもよ~お前、女装しても違和感ねェよなぁ。ホントは女なんじゃねェか!?」
「バカを言うな、私は男だ!!」
「ソフィアー!!この服はどう!?」
『わっ、カッコイイ!!うん、私はこれにするっ!』
買い物が終わり、クラピカは結局自分で選んだ全身黒に合わせたワイシャツとパンツ、ロングヘアーのカツラを被り、黒の帽子に丸いサングラスをかけた女装の変装だった。
そしてソフィアは、黒のジャケットに黒のジーンズ、黒の帽子の中に髪の毛を全て入れ、男に見える変装をした。
全員レオリオの車に乗り込み、クラピカはキルアからの電話で前よりもアジトの建物が増えていることを耳にした。
「おそらく具現化系能力者の技だな。何らかの仕掛けがあると思っていいだろう」
「あぁ、奴等がここをアジトにしてるって証拠でもある。
問題は建物が密集しているせいで死角が多すぎるんだ。遠目から監視しても廃墟全体の2割程度しか把握できないぜ」
「かといってやみくもに動き回って鉢合わせになる方がもっとマズいな」
「だよな、オレもそれは絶対ゴメンだし。今だって、もし突然背後から奴等の声がしたらどうしようって、心臓バクバクいってんだからさ」
「声………か。わかった、とりあえず最初の監視点に戻ってくれ。5分後にもう一度かける」
クラピカは電話を切るとセンリツに電話をし、ネオンの買い物を抜け出せそうならキルアの蜘蛛の監視を手伝って欲しいと頼んだ。
やがてキルアはセンリツと合流すると、二人は歩き出した旅団の追跡を始める。
6人で行動していることが分かり、リーダーらしき人物の特徴などクラピカに電話で説明した。
電話をしながらしばらく追跡を続ける二人。
旅団は次第に電車に乗り、護衛団が泊まっているホテルに向かっていることが分かると、クラピカは直ぐにスクワラに電話をかけ、早くその場から逃げるよう指示を出した。
旅団はリパ駅に降りて、サロマデパート方面出口に向かってると聞いたクラピカ達は、駅前の離れた位置に到着し、待ち伏せした。
「もう少し近くに行った方がいいんじゃねーか?」
レオリオの発言にクラピカが声を上げた。
「だめだ!これ以上近づくと、私の敵意に相手が気付くおそれがある…この距離が私の間合いだ」
ソフィア達は駅から旅団の姿が現れるのを凝視する。
やがて、旅団が姿を現した。
ソフィアは大きく目を見開いた。
クロロ、パクノダ、ノブナガ、マチ、シズク、コルトピ…
やっぱり、だめだ…!
この6人から1秒の気を引くなんて、ゴン一人では無茶だよ!!
どうしたら…!
すると突然、旅団はその場から猛スピードで走り出した。
「ホテルの方向に走ってる!速い!!」
クラピカが声を上げ、ゴンとレオリオは血相を変えて焦り出した。
「車で先回りしたら!!」
「そろそろラッシュの時刻だ!車より奴らの方が早いかもしれねェ!!」
突然クラピカが車から飛び出し、走り出した。
『クラピカ!?』
「レオリオ、ソフィア!!私が連絡するまでここで待っていろ!!」
『待ってクラピカ!!』
ソフィアとゴンは車から飛び出し、全速で追いかける。
「オイソフィア!!ゴン!!」
レオリオの呼びかけを無視し、二人は飛ぶように駆けていくクラピカを懸命に追いかけた。
「いい手が浮かんだんだ!!クラピカってば!!」
『クラピカ…ッ!!』
呼んでも、呼んでも止まってくれない。
クラピカの眠っていた怒りが風化し、それに支配されてる。
クラピカ…
私も同じぐらいクモが憎い。
殺したいぐらい憎いよ。
でもお願い、クラピカ!
今は冷静になって!!
クラピカがもし殺されてしまったら、わたし…
旅団を追っていくと突然、旅団が二手に分かれ、ノブナガ、パクノダ、コルトピがそのまま走り去っていき、クロロ、マチ、シズクが道の真ん中に立ち止まり、振り返った。
瞬時にクラピカ、ソフィア、ゴンはそれぞれ建物の隙間やゴミ箱の後ろに隠れた。
壁に隠れたクラピカは、鎖を具現化し、いつでも旅団を捕えられる体勢を整えた。
蜘蛛ども…
来るなら来い!!
それに気づいたソフィアは、ゴミ箱の後ろから目を瞠ってクラピカを凝視する。
だめだよ、クラピカ!!
こんな警戒された状況で、3人相手になんて絶対勝てない…!!
このままいれば自殺行為…
どうしよう…時間がない!
クラピカ、お願い…死んじゃ嫌だよ。
クラピカが死んでしまったら、わたしはどうしたらいいの??
こんなところでクラピカを、絶対に死なせない…!!
イチかバチか…
クラピカが攻撃しようと体勢を構えた、そのとき。
ソフィアは帽子を深く被ると、ゴミ箱の後ろから道に出て、旅団の前に姿を現した。
『ごめんなさい!!もう追いかけないから許して下さい!!』
ソフィアは旅団に気づかれないよう、低い声を上げて両手を上げた。
ソフィア…!?
クラピカとゴンは瞠目し、そのときクラピカは我に返った。
「?」
「だれこの子?」
マチとシズクはリリーだと気づかず、初めて見るかのようにソフィアを見つめた。
同じようにクロロもソフィアを見つめる。
「こいつか、例の子供は?」
「違う。もう一人いるだろ?出てきな」
マチの言葉に、建物の隙間からゴンが道に出て姿を見せた。
体勢を構えたままのクラピカの腕を、突然背後からキルアが掴んでその場から強引に連れ去る。
「待て!キルア…離せ!!」
「あの場にいたらそのうちクラピカも気づかれる!!お前を助けるために二人は捕まりに行ったんだ!!とりあえず今は、アイツらに任せるしかない!!」
キルアの言葉に、クラピカはもがくのをぴたりと止めた。
「…………くそっ」
ゴンの姿を見たマチは呆れたように問いかけた。
「またアンタか。何の用だ?もうあたしらに賞金懸けてるマフィアはいないよ」
『え、ホント!?おいゴン!話が違うぞ?金が貰えるから手伝いに来たんだぞ!?』
ソフィアはばれないよう男になりきり、ゴンに説教した。
旅団の三人は怪しげにソフィアを見つめる。
「アンタ…女じゃないの?帽子、はずしてごらん?」
まさか、もう気づかれたの…!?
虚を突かれたゴンとソフィアは、息を呑んだ。
「ほら、早く」
マチの声音にソフィアは仕方なく帽子を外し、帽子の中に隠されていた長い髪の毛が下ろされた。
三人は少女の顔をみて、目を見開いた。
「リリー…」
「リリー!やっぱり生きてたんだ!」
シズクは嬉しそうに笑顔を浮かべる。
うつむいて黙っているソフィアをしばらく見つめていたクロロは、近づきスッと手を伸ばすと、冷たい指で彼女の顎をつかみ、自分のほうに向けさせた。
『…………っ』
さすがに息を呑んで肩を大きく震わせたソフィアを見据えて、クロロは冷たい口調で告げた。
「お前はだいぶオレを手こずらせるな。だがもう逃げられない、これでオレを振り回すのも最後だ」
クロロはソフィアを解放する。
しかしソフィアの体は強張ったままだった。
そんなソフィアを見て、マチはクロロに問いかける。
「どうする、団長?」
「捕まえろ」
クロロは命令を下すと携帯電話を取り出し、電話をかけ始めた。
「フィンクスか、オレだ。リリーとガキを捕らえた。アジトに戻ってくれ」
電話を切ると、糸で二人を捕らえたマチは再びクロロに尋ねる。
「このガキはここで始末した方がいいんじゃない?」
「いや、オレはお前の勘を信じるよ。鎖野郎とどこか繋がりがあるならまだ生かしておいた方がいい」
ゴンはクロロをじっと見つめると、ずっと疑問に抱いていた胸の内を問いかけた。
「…1つ、聞きたいことがあるんだけど。なぜ、自分達と関わりのない人達を殺せるの?」
そのとき、近くで雷が落ちた。
その雷の反射から見えたクロロの顔は、剣呑な表情でゴンを恐ろしい目で睨んでいた。
「ふ…、白旗を上げた割りに敵意満々と言った顔だな。なぜだろうな…関係ないからじゃないか?
あらためて問われると答え難いものだな。動機の言語化か……余り好きじゃないしな。
しかし案外…いや、やはりというべきか、自分を掴むカギはそこにあるか……」
独り言のように呟くクロロをソフィアは不思議そうに見つめた。
クロロ、なに言ってんだろ…
相変わらずクロロの考えてること、まったく分かんない。
それにしても…捕まっちゃった。
これから、どうしたら……
クラピカ……
「このままアジトに戻り、全員揃うのを待つ。…逃げようとしたら、殺していい」
「了解」
こうしてソフィアとゴンは旅団に捕まり、蜘蛛のアジトに連れて行かれてしまったのだった。
「おかえり◆早かったね★」
アジトに到着すると、ゴンを見たヒソカは不気味な笑みを浮かべて出迎えていた。
やがて全員が揃い、ノブナガはゴンに蜘蛛に入団するよう説得する。
しかしゴンは断じてその話には乗らなかった。
そして……
「パク、二人を調べろ」
クロロは凍てついた瞳で二人を見下ろしながら、パクノダに命令を下した。
ソフィアとゴンの心臓が、跳ね上がる。
「OK、何を聞く?」
「鎖野郎のこと、全てだ」
まずい…!
あの事がばれたら、クラピカに勝ち目はなくなる!!
クラピカの命が危ない…!!
なんとか、しなきゃ…
ゆっくりとパクノダの手が二人の肩に近づいてくる。
心臓が跳ね上がって全身の血が疾走している。
パクノダの手が肩に触れる瞬間、 ゴンが口を開いた。
「もし知ってても別のこと考えて、頭の中読ませないもんね!!」
『そ、そうだよ!だからムダ……、っ!!』
二人の言葉が、パクノダの癇に障る。
パクノダは二人の首を強く締めた。
「やればわかること、黙りなさい」
ソフィアとゴンはぐっと唇を噛んだ。
息ができない。
鼓動の音だけが耳の奥で激しく木霊する。
パクノダは苦しむソフィアの顔を、冷たい狂気の宿った目で見据えた。
自然とソフィアの首を掴む手に力が入る。
5年前のあの日…
あなたを殺していれば…
あなたさえいなければ…
団長の前から消えて。
そしたら、きっと団長は…
「パク!止めろ、本気で死んじまう」
ノブナガの言葉にパクは我に返ると、二人を解放した。
二人は何度も咳き込み、肩を激しく上下にさせながら、それでも絶対に譲らない目でパクノダを睨みつける。
「鎖野郎のデータ引き出せたか?」
クロロに尋ねられ、パクノダは銃を取り出して答えた。
「えぇ…口で説明するのも面倒だから、これで記憶を撃ち込むわ。さて、誰に撃ち込む?」
パクノダは銃を構えて薄く笑うと、クロロは表情を変えずに問い返す。
「一度に撃てる弾は何発だ?」
「6発」
「結成時のメンバーもちょうど6人だな…なら最初はオレを。その後は6人に撃て」
団長の命令に承知したパクノダは、はじめにクロロ…
そして、弾を補充するとフェイタン、フィンクス、マチ、ノブナガ、シャルナーク、フランクリンと銃を撃った。
弾はそれぞれの額に撃たれ、ソフィアとゴンの記憶が脳裏に次々と浮かび始めたーーー‥
―――「…もし、ソフィアが生きていたらどんな姿になっていたのか気になっていた。私は、11歳のソフィアしか知らない…。16歳のソフィアはどんな姿だったのかとリリーを通してソフィアを見ていた。
だから、私はリリーを愛せない。それに、私は復讐の身。もうこの先、二度と誰も愛さないと誓ったんだ…」―――
―――「女、私のことを覚えているだろ?」
『知らないわよ!!早くウボォーの鎖を解いて!!』
「戯れ言を並べるな。私を知らないはずがない」―――
―――「…ソフィア…」
『お願いクラピカ!!ウボォーを殺さないで!!』
「ソフィア…こいつはお前の家族を殺し、お前の記憶を消してクモにした連中だぞ。なぜ止める?絶対に野放しには出来ない。ここで…死で償わせる!!」
『確かに許せないよ!!でもね、クラピカ!殺したって何も変わらないんだよ!!お願い…クラピカには人殺しなんてしてほしくない…!』―――
―――「1つ、今後念能力の使用を一切禁じる。2つ、今後旅団員との一切の接触を絶つこと」―――
「殺せ……ッ!!」―――
―――「…もう絶対にソフィアを離しはしない。だから二度と、私の前からいなくなるな…っ」
『わたしも、ぜったいに離れない…ずっと、クラピカの傍にいるから…』―――
―――『…クラピカの夢ってなに?』
「私の夢は…もう叶ったからな。ソフィアがこうして生きてくれていたことだ」
『…これからもクラピカのために、おばあちゃんになるまでずっとずっと生きるよ!ねぇ、なんか夢ないの?あるでしょ??』
「…私とソフィアと将来の子どもと…三人で手をつないで歩くことだな」―――
―――「制約と誓約…?」
「あぁ…念は精神が大きく影響する能力。覚悟の量が力を上げる。しかしそれは高いリスクをともなう。
私は念能力の大半をクモ打倒のために使うことを誓った。そのためにルールも決めた。
クモでない者を鎖で攻撃した場合、私は命を落とす」―――
ソフィアとゴンのクラピカの記憶を全て見たクロロ達は我に返った。
ソフィアはクロロを凝視し、いつの間にか緋の眼に変わっていた。
己に見据えられたソフィアの緋の眼を凝視して、クロロは笑う。
「クラピカ…か」
ソフィアとゴンは目を見開く。
クロロは笑みを浮かべて、更に言い募る。
「随分と仲がよかったみたいだな…まさか、ここまでだったとは…」
ソフィアは瞬くことも忘れてクロロの深く、冷たい瞳を睨んだ。
「リリー」
クロロの低い声音が、アジトの中に響き渡る。
「お前に、ふたつ選択を与えようーーーー」
next…