ヨークシン編
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午前9時。
ボスの父親(ライト・ノストラード)が夜中に到着し、身支度を整えたボディーガード達はライトと今後の打ち合わせをした。
その時、ソフィアもボディーガードとして勤めることを許可された。
センリツとバショウ、ソフィアは、ネオンと侍女を連れて屋敷まで戻ること。
そして本題は、今夜から再開されるオークションについて。
陰獣を全滅したことで十老頭は、競売品を手に入れた旅団の始末をプロ(ゾルディック家)に依頼した。
そこでコミュニティーに名を売るチャンスの為、クラピカは殺し屋のチームに参加することになった―――…
その頃…ゴンとキルアは幻影旅団に捕まっていた。
車から降りると、ちょうどすぐ前に立っている荒れ果てた建物。
ゴンとキルアは、警戒しながらその敷地に足を踏み入れた。
「アジトへようこそ」
建物の中に入ると、ゴンとキルアは目を見開いた。
薄暗い闇でふたりをじっと見下ろしている旅団の姿。
ゴンは周りを見渡した。
すると、ヒソカの姿を見つけてゴンは無意識に声を上げた。
「あっ!!」
「(アホ…)」
キルアが内心呆れ「しまった…」とゴンは後悔した。
「何だ?顔見知りでもいるか?」
ノブナガの問い掛けにキルアは慌てて誤魔化そうと、腕相撲のときに見かけたシズクに指差した。
「あ!あのときの女!!」
「何だ?シズクの知り合いか?」
フィンクスの質問にシズクは首を振って答えた。
「ううん、全然」
するとフェイタンが口を開く。
「ああ…思い出した。腕相撲してた子供ね」
「何だっけ?それ」
「おとといリリーがあの子供と腕相撲して負けただろ」
「ムリね、シズクは一度忘れたことは思い出さないよ」
フランクリン、シズク、フェイタンのやりとりを聞いていたゴンとキルアは耳を疑った。
今、リリーって…
まさかリリーの盗賊は、幻影旅団だったのか!?
しかし、この中にリリーの姿がない。
嫌な予感が胸を締め付ける。
キルアは両手を強く握り締めた。
それに気づきながら、ノブナガが髪を一つに縛りながらゴンに話しかけた。
「よし、オレと勝負だ」
ゴンとノブナガは机で向かい合い腕相撲を始めた。
「レディ…ゴッ…もう一度」
ゴンは全力で右腕に力を込めるが、表情を一つも変えないノブナガに何度も、何度も負けた。
腕相撲を続けながら、ノブナガは近くにいた旅団に声をかけた。
「なァ、オレァ蜘蛛の中で腕相撲何番目に強いかね?」
「7~8番ってとこじゃねーか?」
「弱くもないけど強くもないよね」
フランクリンとマチが答えると、ノブナガは話をつづける。
「―――でよ、一番強ェのがウボォーギンて男だったんだが、こいつが鎖野郎に殺られたらしくてな」
「だからそんな奴知らないって言ってんだろ?」
キルアが答えると、ノブナガの両目が激しく煌めいた。
剣呑な眼差しがキルアを射貫く。
「おいガキ。次に許可なく喋ったらぶっ殺すぞ」
低く、怒気をはらんだ声。
キルアは答えられなかった。
これほどの激昂。
触れただけで切り裂かれそうな闘気。
その場にいる全員が息を呑む中、ノブナガはつづけた。
「奴ァ強化系でな。竹を割ったようなガチンコ好きの単細胞だ。その反面、時間にうるさくてよォ…。
よく遅刻が原因でオレやフランクリンと喧嘩になった。んで、半年前に入団したリリーて女がいてな。
リリーは明るくて、クモん中で一番の癒し系で皆に愛されてた。色々あってな、やっとクモの一人前になれた時だった。それなのによォ…リリーも鎖野郎に殺されて、突然姿まで消えちまった。
何よりウボォーは旅団成立前からの付き合いだ。オレが誰よりもよく知ってる………
あいつが戦って負けるわけがねェ!!
汚ねェ罠にかけられたに決まってる!!絶対に許さねえ…何人ぶっ殺してでも探し出す!!」
「…………」
ゴンの中で怒りが燃えた。
男が、泣いていた。
握り締めた拳を震わせて。
頬を伝う涙を拭いもしないで、泣いていた。
「鎖野郎はオレ達に強い恨みを持っている。最近、マフィアのノストラード組に雇われた人物だ」
キルアは瞠目した。
旅団に恨み…
最近雇われた…まさか。
アイツがリリーも…
「直接知らなくても噂で聞いたりしてねーか?よく思い出せ。心当たりがあったら今隠さず全部しゃべれよ」
「知らないね。たとえ知っててもお前らなんかに教えるもんか」
「あ?」
ノブナガの手を握り締めるゴンの力が強くなる。
ゴンは怒気をはらんだ震える声で話しだした。
「…仲間のために泣けるんだね。血も涙もない連中だと思ってた。だったらなんで、その気持ちをほんの少し…ほんの少しだけでいいから、お前らが殺した人達に…
なんで分けてやれなかったんだ!!!!」
ドガッ!!!!
激しい怒号、激しい響き。
ゴンがノブナガの手の甲を机に叩きつけると、フェイタンが一瞬にしてゴンの背中にまわり左手を掴んだ。
「お前調子乗りすぎね」
「ゴン!!」
キルアは目を大きく見開いた。
足が動かない。
首の、脈打っている部分に、トランプが押し当てられる。
「動くと切る◆」
フェイタンはもう一度、鎖野郎について問いかけた。
知らないと言い切るゴンに、フェイタンは目をにぃと細める。
先の行動を読み取ったノブナガはフェイタンを止めると、二人はもめた。
そこでノブナガはコインを取り出し、ゴン達を生かすか殺すかを決め出した。
コインを投げ、ノブナガが選んだ表面が腕の上に止まった為、ゴンとキルアの命は助かり、アジトから帰れると決まった。
だが、ノブナガは二人の蜘蛛入団を推薦し、団長がアジトに戻るまでノブナガ一人で二人を見張ることとなった。
狭く暗い部屋の中。
長い、長い時間が過ぎた。
キルアはうつむいたまま、微動だにしなかった。
…リリー。
どうしてだよ。
どうして死んだんだよ。
まだ早すぎるだろ。
オレ、お前に言いたいこともまだいっぱいあるんだ。
一緒に見たかった景色も、
やりたかったことも、
まだ、まだ、いっぱいあるんだ。
どうしてなんだよ。
あのとき、オレ達のこと覚えてなかった。
半年前に旅団になったって…
ハンター試験の後、ここに来たのかよ。
だから、オレの家に三人が会いに来たとき、リリーだけいなかったのか。
それで旅団に何かされて、記憶を無くして殺された。
そうなんだろ?
ハンター試験で4人に出会って、あの頃の未来なんてそんな先のことは見えてなかった。
色々あったけど、本当にただそのときそのときを楽しむことができていた。
もちろん楽しいことだけじゃなくて、オレが悩んでる姿も、リリーが苦しんでいる姿も…
お互いのいろんな瞬間を見てきたうえで、共に手を取り合って乗り越えてきたんだ。
…リリー。
お前がいたから今のオレはここにいる。
大げさなんかじゃない。
お前を忘れたことなんて一度もねぇよ。
お前が誰かを好きになる気持ちを教えてくれたんだ。
お前が死んだなんて、どうしても信じらんねぇ。
信じたくねぇんだよ。
お前に会いたい。
せめてもう一度…会いたかった。
もし、本当に、リリーを殺したのはクラピカだったら…
オレは、クラピカを……
「……キルア?大丈夫?」
ゴンは俯いているキルアの様子を窺った。
「…ああ」
キルアの目からぱたりと涙がこぼれ落ちる。
「………」
そのままゴンはもう一度ノブナガに目を向けて、何も見なかったふりをした――――――…
―――――――――
――――――――――――…
ゴン達が旅団のアジトから脱出する約4時間前。
「あ!!このファンデ欲しかったヤツ♪ねーソフィア!!このマニキュア、ピンクと水色どっちがいいかな??」
『んーピンク…』
「あー!?こっちのリップとスプレーも買うー!!あーこのヅラ可愛い!!」
リンゴーン空港でネオンの買い物に付き合っていたソフィア達は、長時間の買い物でヘトヘトになっていた。
「ボス、そろそろ出発の時間ですよ」
「もう少しだけー!!キャミも何コか買っちゃお!!」
やっとネオンの買い物が終わり、ソフィア達は出発の時間まで椅子に座って待機していた。
ボスすごいなぁ…
同い年なのに、すっっごい元気。
買い物に付き合っただけなのに、すっごく疲れたぁ~。
隣に座っているセンリツ、バショウも疲れでげっそりとしていた。
「……あたしもトイレ行ってくる。荷物ちゃんと見ててね!!」
そう言い残すと、ネオンは化粧室に向かった。
向かっていくネオンを見ながらバショウが口を開く。
「……クラピカのヤツ、あのままで平気かね」
「んー体の疲労はあたしの笛で回復したと思うんだけど、ソフィアが一晩そばにいてくれたから、心音は落ち着いてたわ。
クラピカ…ソフィアの傍にいるとき、すごく癒されてるみたいね」
え。
ちょっと待って…
そばにいたってなんで知ってるの!!!?
もしかして、声聞こえてた!?///
ソフィアは顔が紅くなり、慌てながら口を開いた。
『えっと…あのっ、な、なんで分かるんですか??』
「あたしは心音で真実を聴くことが出来る能力を持ってるの。どんな人間も心音は誤魔化せないわ。
たとえばあなた…クラピカって名前を出したとき、心音が優しい愛が込められた音色に変わるの。ソフィアはクラピカが大好きなのね」
『え!そ、その…///』
「べつに恥ずかしがることないのよ?あたしには正直になんでも話してくれてかまわないから」
センリツは優しく微笑んだ。
センリツさんといると、なぜか安心するなぁ…
しかも、とってもいい人そうだし、センリツさんだったら何でも話せそう。
『センリツさん、ありがとうございます』
「さんなんてつけなくていいのよ、センリツって呼んでちょうだい。それにタメ口でいいから」
『うん...ありがとう』
「……ところで、暗殺の話お前らどう思う?」
バショウの質問にセンリツが答えた。
「…心音を聞く限り、全てを納得した上で暗殺チームの合流に同意したわけじゃないわね。
でも、クラピカには何ものよりも先立つ一つの決意がある。個の全てを犠牲にしてもそれを優先してる結果の判断だと思う」
「ダルい生き方だな…オレにゃ真似できん。自分を殺す人生に意味はあるか?」
バショウの言葉に、ソフィアは痛みを堪えるような顔で口を開いた。
『…意味は、ないと思う。でも理屈じゃないの、こればかりは…』
突然心音が悲しい音色に変わったのに気がついたセンリツは、驚いたようにソフィアを見た。
クラピカと同じ悲しみの中に憎悪が眠っている音色。
センリツが問いかけようとしたその時、ソフィアが立ち上がった。
『…それにしてもボス遅いね。ちょっとわたし見てくる!』
ソフィアは化粧室に向かい、慌てて直ぐに戻ってきた。
『ボスがいない!!』
「何イ!?」
「急いで探しましょ!!」
ソフィア達は荷物を侍女に任せてその場からネオンを探し始めた。
ソフィアは何かの視線を感じてふと足を止める。
その様子に気付いたセンリツは声をかけた。
「どうしたの?」
『なんか、見られてる感じがして…』
周りを見渡したソフィアは後ろに振り返ると、遠くで誰かがじっと自分を見つめて立ち竦んでいる姿に息を呑んだ。
黒の背広の上下、耳たぶにイヤリング、頭に布のようなものを巻いている。
そして、自分を見つめるその黒い瞳で直ぐに分かった。
……まさか。
『…クロロ?』
next…