ヨークシン編
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クラピカは、ソフィアを強く抱き締めていた。
体を離し、二人は見つめ合った。
ソフィアは、藍色の優しく澄んだ瞳に吸い込まれそうな気さえした。
ソフィアの目からは、自然にポロポロと涙があふれ出る。
この涙は悲しい涙?それとも感動の涙?
涙をそっと拭うクラピカ。
そして、ほっぺに軽くキスをした。
…!?
ソフィアは緊張と恥ずかしさで無意識に肩がビクッと動き、唇が触れたほっぺに手を当てる。
「すまない…嫌、だったか?」
悲しげなクラピカの表情は、驚いたことに大きな後悔を感じさせた。
『嫌とかじゃなくて…びっくりしたの』
「そうか…ソフィア。お前に言いたいことがあるのだが、いいか?」
『え、なに??』
「…ソフィア。…………ソフィア」
クラピカはソフィアの名前を何度も呼びながら、真っ直ぐに見つめた。
「…こんなふうに、名前を呼ぶのが私の夢だった。お前に会いたくなる度に、声に出して呼びたかった。
しかし返事がなければ…本当に死んだと思い知らされるのが怖かった。どうしても死んだとは思いたくなかった。
私は…お前を守れなかったばかりか、この手で、殺めかけてしまった…不甲斐ない私を許してくれるか?」
辛そうに顔を歪めるクラピカ。
クラピカは悪くない。
悪いのは全部わたしだよ。
わたしは沢山の命を奪ってしまった。
…それはとてつもなく重い事実。
償っても償っても許されない罪。
その事実を一生背負い、そして一生忘れずに、生きていかなきゃいけないんだ…
ソフィアは震える声を吐き出した。
『わたしは生きてるよ。クラピカは悪くない。ごめんね…わたし……』
それ以上言葉に出せない。
クラピカには今までハンター試験でもたくさん助けてもらった。
それなのに……
ふいに、静かな声が沈黙を破った。
「…ソフィア」
ソフィアは怯えるように息を詰める。
何を言われてもいい。
わたしはそれだけのことをしたから…
「…私はお前が大事だ。自分を責める必要などない。それでも責任を感じるなら、私の為に生きろ。
私もお前の為に生きる。そして、命を懸けてお前を守ってみせる。だから…私の傍にいてくれないか?」
予想もしていなかった言葉に、目からとめどなく涙があふれ出る。
ソフィアは幸せそうに微笑んで頷いた。
『うん…っ』
「全く、ソフィアは昔から泣き虫だな」
クラピカは優しく笑いながら、ソフィアの頭をよしよしと撫でる。
クラピカはソフィアの肩をそっと抱き寄せた。
その華奢な肩からは鼓動の音が伝わってくる。
クラピカの唇はゆっくりと移動し…
そして二人の唇がそっと重なり合った。
そのキスはずっと熱く。
とても温かく…優しくて…
何度も繰り返し、やがてクラピカの優しく熱い舌が入ってくる。
もうやばいよぉ…
心臓が爆発しそうで、苦しいっ///
もう限界…!!
ソフィアは緊張のし過ぎで酸欠状態になった。
『…待っ、て…っ』
ソフィアは彼のキスから逃れ、クラピカの胸を軽く押して離れた。
ソフィアは頬を紅く染め、クラピカの服を掴みながら手が震えていた。
クラピカは震えるソフィアをキュっと抱き締めた。
「すまない…だが私は、ソフィアと心も体もひとつになりたいのだよ…」
『でもわたし、初めてだよ??それにどうしたらいいかわかんないよ…』
「私も初めてだ…ソフィアは何もしなくていい。私に任せてくれないか?」
『でも…』
クラピカはソフィアの体をそっと押し倒す。
クラピカの唇がソフィアの首元をはう。
『やぁ…くすぐったいよぉ…!クラピカッ…』
…不安、怖い。
緊張をまぎらわすために、わざとらしく笑うソフィアを見て、クラピカは手の甲に唇を当て心配そうな顔をした。
「…怖いのか?」
いくらごまかしても体は正直だ。
初めての経験に体は小刻みに震えてしまっている。
それに、これだけはもう見せられない。
見せたくない。
見せればきっと、わたしのこと嫌いになるに決まってる。
クラピカをもう悲しませたくない。
ソフィアは刺青が刻まれた腹部の場所をぎゅっと隠していた。
「…大丈夫だ、絶対に優しくする。私がソフィアの辛い過去やクモのことは全部忘れさせてみせる。
だが怖くなったら言ってくれ。無理はするな…」
『クラピカ…』
クラピカは再び優しいキスをした。
クラピカは初めての経験に戸惑いながらも、初めてのわたしを優しく抱いてくれたよね。
クモの刺青が刻まれた、汚れたわたしを大事に大事に愛してくれた。
まるで、宝物を扱うかのように優しく。
『クラピカ…好きになってくれて、ありがとう』
微笑むソフィアを抱き起こし、強い力で抱き締めるクラピカ。
「…私でいいのか?」
静かにうなずくソフィア。
『クラピカとなら…いいよ』
クラピカは歯止めが効かなくなったのか、再びキスを落とした。
次第に深い大人のキスへと変わっていく…
お互い生まれたときの姿で一つになるとき。
怖くて痛くて、泣きそうになっているわたしの手をずっと握りしめてくれたよね。
二人はゆっくり時間をかけて一つになった。
「ソフィア…っ」
絡み合う指先…
ソフィアの目からは再び涙が流れ出た。
「何故…泣いている?怖いのか?」
心配そうに問いかけるクラピカ。
『違うの…幸せすぎて…っ』
こんな時なのに、あふれんばかりの幸せを感じている。
その言葉に安心したクラピカは、優しく微笑んだ。
「ソフィア…好きだっ。………昔から、ずっと…」
クラピカが入ってくるたびに、クラピカの気持ちまでどんどん入ってきて…
わたしの中は、クラピカを好きな気持ちでいっぱいになった。
心の中にある感情を抑え、ソフィアはクラピカの腕を強く握りしめる。
クラピカの声と優しい目が、安心をくれた。
この先、どんなことがあっても…
ずっとずっと一緒にいたい。
心からそう思った。
幸せで泣いたのは、初めてだよ…
―――翌朝。
窓から差し込む朝日は、いつもよりずっと柔らかい光を放っている。
クラピカは、隣で気持ち良さそうに眠っているソフィアの寝顔を見つめていた。
本当に、ソフィアなんだな…
まるで夢を見ているかのようだ。
できるなら、できることなら、ずっとこうしてソフィアを見ていたい。
この優しい時間がいつまでも続いていてほしい。
そう思えることが、“幸せ” なのだろうか。
ソフィアは、ぼんやりと瞼を開いた。
そのとき、ふいに目が合った。
昨夜のことを思い出したのか、ソフィアは顔を紅くし、布団の中に潜り込んだ。
その仕草がたまらなく愛しい。
クラピカは後ろからソフィアの体を強く抱きしめる。
早まる鼓動がぬくもりを伝って届いてくる。
まぶたが熱を増すほど愛しくて、溢れ出す思いが静かに震える。
「ソフィア……愛してる」
ソフィアは目を見開いた。
初めて言われた。
『わたしも、愛してるよ…』
初めて言った、愛してるって言葉。
こんなに優しくてこんなに愛しい響きだったんだね。
ソフィアはクラピカに顔を向けると、二人はキスをした。
触れ合った唇には、確かな愛が伝わっていた。
この瞬間を永遠に忘れない。
それは悲しい瞬間ではなく、優しい瞬間として。
『クラピカ…大好きっ』
そう言いながら笑みを浮かべるソフィアの心は、嬉しさで泣いていた。
この幸せが、どうか永遠に続きますように…
next…