ヨークシン編
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ヨークシンシティで行われる地下競売の会場へ向かうリリー、シズク、フェイタン、フランクリンは、街の途中で条件競売に出くわした。
黒の背広の上下とサングラスを身につけた男が説明を始める。
「さあーいらっしゃい!!いらっしゃい!!条件競売が始まるよー!!競売品はこちら!!300万相当のダイヤ!!
落札条件は腕相撲!!最初にこの少年に買った者に与えられます!!参加費用は1万ジェニー!!
それでは、オークションスタート!!」
合図と同時に大勢の男性が1万ジェニーを片手に一斉に群がる。
『ねえねえ!300万のダイヤだって!!あれ欲しい!!やって来てもいい??』
無邪気にお願いするリリーに、フランクリンが「1回だけだぞ」と許可をした。
リリーは群がる集団の中に入り、順番に並ぶ。
そして…
「ハイ負けー!!次の人どーぞ!!」
リリーは、1万ジェニーをスーツの男に渡した。
久々に見た彼女の姿に、条件競売の3人は驚愕した。
「あ…」
「おまっ…リリー!!久しぶりじゃねーか!!」
「リリー!!」
仕切りを勤めていたレオリオと腕相撲の少年ゴンは、パアッと顔が明るくなり、久々の再会に満面の笑みを浮かべる。
ダイヤを持っていたキルアも、嬉しそうに笑った。
だがリリーは、見覚えのない3人に声をかけられ、戸惑いながらも外面で対応する。
『え、あの誰ですか??どこかで会いました?』
その言葉に唖然とする3人。
レオリオは、笑って再び話しかけた。
「おいおい、リリー!じょーだんキツいぜ!!久々に会ったから照れ隠しで言ってんだろ!?」
『いや、本当に知りません。あの、早くしないと後ろが待ってますけど…』
イスに座ったリリーの後ろで待っている客が大声で「早くしろよ!!」と怒鳴り付ける。
「(どーしちまったんだ、リリー…)あーはいはい!!それじゃ、左腕は握ったまま、机の上へ」
ゴンとリリーは手を握った。
ゴンはまじまじとリリーを見つめるが、リリーは表情を変えずに合図を待つ。
「さあ~レディ~ゴッ!!」
合図と同時に、二人は腕相撲を開始した。
一見少し顔を歪めたリリーに対してゴンは全力で腕に力を込める。
リリーが一瞬気を許したその時、リリーの右手が机についた。
「ハイ負け!!残念でした~!!」
『あ~あ、負けちゃったっ。残念…』
リリーはしょんぼり落ち込んで呟くと、そのまま身を翻し腕相撲を見物していた眼鏡の女性とその場を後にした。
「…………」
瞬くことも忘れて、ゴンはリリーを見つめた。
「今の…本気だったろ。アイツ、どう見てもリリーだよな」
キルアがゴンの耳元で呟き、ゴンは小さく頷いた。
あんなリリーは、知らない。
あの少女は、本当にリリーだったのか…
ゴン達は消えていくリリーの姿を見つめていた。
「どうだった?」
フランクリンの質問に、リリーは泣きそうな顔で答えた。
『負けちゃった~あのコめっちゃ強かったよ!!それでさ、わたしのこと知ってたみたい!』
フェイタンは目を細めると、口を開いた。
「…だったら下手に関わらない方がいいね」
「そうだな」
フランクリンは、ポンッとリリーの頭に手を乗せる。
「リリーいいなぁ。私も挑戦したかったな…」
『シズクもやってきたら?』
「ダメよ。もう時間ね、仕事開始よ」
フェイタンは冷たく言い放つと、フランクリンも話しにのせた。
「そうそう。それに買ったり競ったりは邪道だぜ。オレ達盗賊」
「欲しいモノは、奪い取るね」
『そうだね!なんか盗賊ってかっこいいねっ♪さ、いこいこ!!』
元気を取り戻したリリーが笑顔で話すと、4人はそのまま会場へ足を進めた――――――…
会場に辿り着き、地下競売が始まる頃。
旅団はそれぞれの配置に着いた。
リリー、シズク、フランクリン、フェイタンは地下競売の人間を殺す役割。
ウボォー、シャルナーク、マチ、ノブナガは変装して競売品全部を盗む役割だった。
これから始まる仕事は、リリーにとって初めての仕事(殺し)だった。
会場に地下競売に関わる人間が全員集まり、フランクリンとフェイタンは大勢の前で司会を始めた。
そして。
「くたばるといいね」
フェイタンの言葉を合図に、フランクリンの指が機関銃に変わり、会場全員は無数の弾で無惨に殺された。
会場の扉が出てきた男をシズクの念で具現化した掃除機(デメちゃん)を武器に、男の顔を潰した。
その隙に走り去る、髪を一つにまとめた一人の女性。
その女性の前で待ち伏せしていたリリーは、念で具現化した中型の刃物を振り回し、水が現れるとやがて氷状に変化して女性の全身を突き刺した。
女性は大量の血を流して倒れ、リリーは冷たい目で女性を見据えた。
「あっけねェ、あっけねェ」
「ワタシの出番、ゼンゼンなかったね」
会場から現れたのは、フランクリンとフェイタンの姿。
「リリー、よく出来たね。初めてのわりには上出来」
「リリー、殺ったのか」
シズクとフランクリンに声をかけられ、リリーは穏やかに口を開いた。
『うん、思ってたより平気だった』
「それはよかったね。さ、長いは無用ね。シズク、死体を回収するね」
「うん、いくよデメちゃん」
シズクは掃除機で会場の散乱した死体とその血、肉片、死人の所持品、椅子を全て吸いとった―――…
金庫の中には何一つ入っていなかった事実に、旅団8人は気球で移動していた。
ウボォーはクロロに電話をし、状況と陰獣が参加していなかった事実、金庫から一人陰獣が手ぶらで出ていった噂を詳しく説明した。
そして、クロロはウボォーに命令を下した。
「追手相手に適当に暴れてやれよ。そうすれば、陰獣(やつら)の方から姿を現すさ」
ゴルドー砂漠の崖の上に下りた旅団は、下を見下ろした。
崖の下には、マフィアの団体が銃を鳴らしながら旅団が降りて来るのを待っている。
『わーあ!凄い団体だね!!ねー誰が降りるの?』
見下ろしていたリリーは、楽しそうに問いかける。
すると、ウボォーは狂気の宿った目をして答えた。
「オレがやって来らぁ。お前ら、手ェ出すなよ」
『あ、待ってウボォー!!』
歩き出すウボォーに、リリーは慌てて呼び止めた。
『わたしも行く!!』
その言葉にシャルナークは呆れ顔を向けた。
「やめときなよリリー。結構な人数だよ?まだ殺しに慣れてないんだから」
「いや、リリーの念なら大勢向きだし殺れんだろ。ウボォー、慣れさせる為に連れていけよ」
ノブナガに言われ、一瞬考えるウボォーだったが仕方なくOKした。
「仕方ねーなァ。行くぜ!!リリー!!」
『うん!!』
ウボォーとリリーは崖から降りて、銃を構えるマフィア達を前にした。
進み出すウボォーの動きを銃で止めた一人のマフィアが、ウボォーの顔に銃を突きつける。
「客さらったのはてめェらか?」
ウボォーは奇妙に笑うと、マフィアはそのまま銃を射った。
動かないウボォーを見つめるマフィアは驚愕した。
銃の弾は、ウボォーの歯で止められている。
ウボォーは片手でマフィアの首を折り、そのマフィアの頭を掴んで握り潰した。
リリーは驚愕した。
『…ウボォー…すごい…』
普段のウボォーとはまるで別人の姿に、リリーは恐怖で全身が震える。
だがリリーは、一度目を瞑ると念で中型の刃物を具現化させた。
そして、刃物を振り回し水が発生すると、その水の勢いが突風を生んだ。
水の勢いで氷状に変化した刃が、群がるマフィアの集団に襲いかかる。
悲鳴と共に次々とマフィアは倒れ、リリーはマフィアの銃の弾を避けながら、彼女は不敵に微笑んだ―――――…
銃弾、悲鳴、断末魔の叫び、そして爆発の音…
後から来たボディーガードの団体は、遠くから爆発した場所を見つめた。
その一人の少年、クラピカが望遠鏡を使って監視する。
最初に目にしたのは、巨体の男がマフィアを虫けらのように殺している姿。
その近くで、仲間と思われるもう一人の若い女性。
その女性を見たクラピカは、愕然とした。
「あれは…!まさか…!!」
紅い血を浴びて、次々とマフィアを殺していく、リリーの姿だった。
何故、 リリーが…
いや、違う。
あれは、私の知っているリリーではない。
信じられない現実に、クラピカの心臓がすっと冷えていく。
言い表せない恐怖と戦慄が全身を貫いた。
クラピカは何も言わずにリーダーのダルツォルネに望遠鏡を渡した。
望遠鏡を覗いたリーダー、スクワラ、バショウは次第に捕まえるか捕まえないかでもめ始める。
そのとき、地響きが足元から這い登ってくる気配を感じた。
目の前の土がもこもこと動いている。
動きが止まった瞬間、土から陰獣の蚯蚓(みみず)が姿を現した。
すると、背後から3人の陰獣(病犬、豪猪、蛭)も姿を現す。
「オレ達に任せときな」
陰獣はそう言い残すと、マフィアを全滅させたウボォーとリリーの元に近づいた。
「陰獣か。リリー、コイツらはオレが殺る。お前は戻ってろ」
陰獣を見つめたまま余裕な笑みを浮かべるウボォーに、リリーは頷くと旅団がいる場所に戻った。
蚯蚓から攻撃が始まり、陰獣は次々とウボォーに襲いかかる。
ウボォーが攻撃した右手を豪猪は体毛を操り、強靭な針に変えて右手の自由を奪う。
そして、病犬に肩の肉を牙で裂かれ、神経毒で首以外の体の自由が奪われた。
その傷口から蛭が体内に大小無数のヒルを入れられ、絶体絶命のウボォーだったが…
首から上だけで、陰獣を一人一人と絶滅させた。
一息ついたところで、ウボォーの元にシャルナークとリリーが崖から降りて近づいた。
『ウボォー!!大丈夫!?』
「全然心配ねー。ところでリリー、お前あんな大勢をよく殺れたじゃねーか!!これでお前も蜘蛛の一人前だぜ!!」
その言葉にリリーは大喜びで飛び跳ねる。
『え!本当!?やったぁ!!帰ったら団長も褒めてくれるかな?』
「じゃねーの?おい、シャル。このヒル、何か分かったか?」
「んーこれ、マダライトヒルですね―――…」
シャルナークは近くに落ちていたヒルを指で掴みながら、ヒルの特徴と対処方法の説明をした。
「―――じゃあ酒を飲み続けろってことか。シズク!!早いとこ毒を吸い出してくれ!!」
「いま行く」
シズクはウボォーの元へ崖を降り始める。
シャルナークは大声で崖の上にいる旅団に頼み始めた。
「誰か!車でビール沢山盗ってきてよ!!」
その時…
一瞬にして、ウボォーギンとリリーの体に、鎖が巻きつく。
反射的に叫ぶ声と同時に、二人は空中に浮かび引っ張られる。
車のエンジンがかかる音。
目の前に、誰かがいる。
地に着いて顔を上げたリリーの瞳は、そのまま凍りついた。
この人、誰…??
ウボォーギンとリリーを捕らえたクラピカは、怒りに燃える冷たい瞳で二人を見据えていた―――…
next…