名前設定無しの場合は、ヒロインが『リリー』になります。
ハンター試験編
ヒロイン名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
青空の下、村の草原で少女と少年が遊んでいた。
『ねーねー!大きくなったら何になりたい??』
「そうだな、リリーは何になりたい?」
『リリーはねーお嫁さんになりたい!大きくなったらリリーをお嫁さんにしてくれる?』
「お…お嫁って!リリーはお嫁さんの意味を分かってるのか?」
『うん!知ってるよ!パパとママみたいになるんでしょ?』
少女、リリーは満面の笑みで答える。
「そうだが…まだ早くないか?」
『いいの~っ!ねーゆびきりげんまん‼』
リリーは元気よく少年に右手の小指を差し出す。
少年は恥ずかしそうにリリーから眼を逸らした。
リリーは寂しそうに見つめる。
『リリーじゃダメ?』
「…ダメなわけないだろ」
『じゃあ約束ねっ‼』
少年は照れくさそうに左手の小指をリリーのと絡めた。
『「ゆーびきりげんまん♪嘘ついたら―――…
鳥のさえずりが聞こえる。
目を覚ますといつもの天井が見えた。
『またあの夢…』
最近よく同じ夢を見るようになった。
5年前の記憶は何故か全く覚えていない。
それなのに、子どもの頃の自分が出てきて、いつも男の子と遊んでる。
けれど、目を覚ますと男の子の顔がどうしても思い出せない。
リリーは近くの時計の針を見て、慌ててベッドから降りた。
『やばっ今日出発する日だった‼』
リリーは急いで支度をする。
コンコン
「リリー、準備は出来たか? 」
『師匠ごめん!ちょっと待ってて‼』
20分後…リリーは支度が終わると荷物を持ちドアを開けた。
今日は雲一つもない快晴。
リリーは眩しそうに空を見上げる。
わたしはこれからハンター試験を受けに行く。
ハンターになる理由…
それは、失った記憶を取り戻すため。
わたしは5年前、突然記憶を失った。
なぜ失ったのか…その原因も分からない。
でもわたしにとってその記憶は、とても大切で忘れてはいけない…そんな気がする。
記憶を失ってからの5年間の間、辛くて苦しいことばかりだった。
わたしの家族は盗賊。
盗賊の名前は知らなかったけど、活動は主に窃盗や殺しをしてて、簡単に人を殺せる兄と姉がとても許せなかった。
今から2年前…
――――――…
『お兄ちゃん、今日も行くの?』
書物を持ち、オールバックの黒髪、額に十字架の刺青の兄に話しかける。
「あぁ、すまないな。ここで大人しく待っててくれ」
『いつもそればっかりじゃん…寂しいよ…』
兄はわたしの頭にポンッと手を置くとそのまま姉達を連れて行ってしまった。
12人の兄と姉がいて、わたしは一番下の末っ子。
母と父はいなかった。
いつもわたしだけ薄暗いアジトでお留守番。
そのときのわたしの唯一の生き甲斐は、内緒で飼っていた犬のコネリーの世話をすることだった。
そんなある日...
コネリーが狂犬病にかかった。
狂犬病にかかってしまったコネリーにどうすることも出来ず、兄と姉達にバレるのにも時間がかからなかった。
コネリー、ごめんね…。
こんなに苦しんでいるのに、何も力になれない。
何もしてあげられない。
ただ泣くことしか出来ないなんて…
飼い主失格だね…
そんな時、兄から思いがけない言葉を耳にした。
「 リリー、その犬を殺すんだ」
一瞬、耳を疑った。
………え?
いま、なんて言ったの?
わたしは兄を見つめた。
「狂犬病にかかったらまず助からない。その犬の為にも殺してあげるんだ。次期にお前には殺しの仕事を任せることになる。その練習だと思え」
…そんな。
『そんなの無理だよ‼コネリーもわたしの大事な家族だもん!!殺すなんて絶対に出来ない!!お兄ちゃん達、平気で人や動物も殺せるなんて、本当にどうかしてる!おかしいよ!!』
バンッ…!!
目の前に飛び散ったのは無数の血。
下を見るとそこにはコネリーが巨体な兄に叩かれて死んだ姿だった。
『コネリ―――ッ‼!!』
「ったくよ!つべこべうるせーなぁ‼」
「 リリー、アンタはいつからそんな生意気になったんだ。ここまで生きられたのは誰のおかげだと思ってる」
紫色の髪で一つに縛った姉が鋭い目付きでリリーを睨む。
このとき、わたしは思った。
わたしはなぜここに生まれたのか。
なぜここにいるのか。
普通に生きたい。
盗賊なんて…絶対に嫌だ‼
わたしはこの事がきっかけで
この家族とは縁を切ろうと、14歳で家出をした―――…
家出をしたわたしには当然行く宛もなく、ただ一人途方にくれた。
わたしはたまたま目に入った裏道の喫茶店で「働きたい」と頼んだ。
安い給料でも一生懸命働き、家はボロボロのアパートで暮らし、夕飯は喫茶店で余ったパンの耳などを食べて生活した。
…わたしは何のために生きてるのかな。
目標もなく、生き甲斐もなく、ただ一日を生きるのが辛くて、苦しくて、寂しくて…
わたしは生きる希望を失いそうになった。
何度も、いっそ死んでしまおうかと思ったこともあった。
そんな過酷な日々を送っていたとき、突然奇跡が起きた。
それは―――…
『師匠ー!お待たせしました!!』
ドアの先には髪が綺麗に白髪に染まり白髭を生やした老人で、老人にしては若々しいオーラが感じられる師匠の姿だった。
「全く、お前ってやつは!出発の日ぐらいしっかり起きんか!」
『うぅ…ごめんなさぁ~い』
今日でお別れの日なのに朝から怒られて、しょぼん…と落ち込む私。
「じゃが、出発の日に寝坊するとはリリーらしいのぉ。ハンター試験でも寝坊しないか心配じゃ」
『大丈夫だよ!試験中はちゃんと起きるから!あ、師匠から教わった“念”もいっぱい活用するから!』
「これこれ!“念”はハンター試験に合格して、プロのハンターになってからじゃ。それまでは鍛えた技を使うんじゃぞ」
『あ、そっかぁ…そうだったね!分かった!』
「そろそろ行かんとハンター試験に遅れるぞ」
『うん…』
今さらになって寂しい気持ちが強くなり、涙腺が緩み始める。
だめ…
泣いたら師匠に心配かけてしまう。
絶対、泣いちゃだめだ。
リリーはニッコリ笑ってゆっくり歩き始める。
『師匠、行ってきます!今まで本当にありがとう。絶対合格して帰ってくるからねー!!』
リリーは歩きながら師匠に元気よく手を振った。
「リリーらしく頑張るんじゃぞ!わしはここでずっと応援しとるぞ〜!」
師匠は今までリリーに見せたことない寂しそうな笑顔で見送る。
師匠の見送る姿が堪えていた涙で視界が滲む。
リリーは、一度も振り返らず走って山を降りていった。
師匠、本当にありがとう。
あのとき、師匠が声をかけてくれなかったら、今のわたしはいなかった。
わたしの人生はきっとあのままだった。
この二年間、師匠がずっと育ててくれたから、わたしは強くなれたんだよ。
これから先、どんなことが待ち受けていたとしてもわたしは負けない。
もっともっと強くなって
師匠のようにプロのハンターになって、帰ってくるからね。
それまでずっと、元気でいてね…
next…