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ハンター試験編
ヒロイン名前設定
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ボードにトーナメント形式が公開され、重く緊迫した空気の中、会長が説明を始めた。
「さて、最終試験のクリア条件だがいたって明確。たった1勝で合格である!!
つまりこのトーナメントは勝った者が次々ぬけていき、敗けた者が上に登っていくシステム!
戦い方も単純明快。武器OK、反則なし、相手に「まいった」と言わせれば勝ち!
…ただし、相手を死にいたらしめてしまった者は即失格!その時点で残りの者は合格。試験は終了じゃ、よいな」
会長の説明が終わり、立会人が初めの合図を始める。
「それでは、最終試験を開始する!!第1試合。クラピカ 対 リリー!!」
クラピカとリリーは、覚悟が出来ていないまま前に進み出す。
それを見ていたゴンとレオリオが慌てて口を開く。
「…なんでリリーとクラピカが!?」
「おい!納得いかねェ!!何の為の面談なんだよ!?クラピカ!!リリー!!ここは戦わず次にかけろ!!仲間同士が争うんじゃねェ!!」
「レオレオはトリックタワーのときに、仲間蹴落としてでも試験に合格するとか言ってなかったっけ?」
冷静に突っ込むキルアにレオリオががなり返した。
「それはそれ!!これはこれだ!!…て、いい加減名前覚えろよ~!!何度も言わせんな!!オレはレオリオだ!!」
「レオリオ!!少し黙れ!!」
外野に怒鳴ったクラピカは、リリーと向かい合わせになる。
形にならない感情が、嵐のように荒れ狂っている。
胸の中で暴れ回るそれは、そのままクラピカの葛藤だった。
そして、リリーもクラピカを見つめながら考えた。
…まさか、クラピカと戦う時が来るとは思いもしなかった。
戦いたくない。
覚悟なんて、ない。
でも、覚悟しないと、いけないんだよ。
だって、わたしは気づいてしまった。
クラピカを好きになってはいけないこと。
クラピカのそばにはいられないこと。
クラピカの悲しみを分かち合い、支えることが出来るのは、わたしではないことを…
「リリー、私は…」
『クラピカ!』
リリーはクラピカが告げる先の言葉を読み取ったのか、自らの言葉を被せた。
『駄目だよクラピカ。もし戦わないで「参った」って言ったら、わたし許さないから』
もう迷ってはいけない。
それがどんなに辛い選択でも、わたしは正面からそれを受けなければならない。
リリーはナイフを取りだし、冷たくさえ聞こえる口調で言った。
『女だからって手加減しないでね。わたし、本気でいくから』
「………………」
リリーの顔を見たとき、クラピカは息を呑んだ。
リリーが決心したのを確信したクラピカは、一度目を閉じて深呼吸をすると、冷静な声で言った。
「…リリー。私はお前と戦いたくない。だが、お前が戦う覚悟を決めたのなら…私も覚悟を決める」
クラピカは二刀流を構えて、戦う体勢をとった。
その二人を監視している試験官サトツ、メンチ、ブハラは内心呟く。
「(誇り高きクルタ族クラピカと天真爛漫な少女リリー…)」
「(今までの成績と力では、クラピカの方が恐らく上。でもあの少女も、最終試験まで生き残った女はあたしが試験合格して以来だし、ただ者じゃなさそう。しかも可愛い顔してるわね。ウフ♪今年はホントにわくわくさせてくれるわね!)」
「(腹減ってきちゃったなー…)」
リリーとクラピカは立会人の合図を待つ。
そして。
「それでは、始め!!」
立会人の合図が出たと同時に、リリーは地を蹴って、気合いとともにナイフをクラピカに目掛けて切りつける。
クラピカは反射的に避けて、リリーの切っ先を二刀流で受けた。
リリーは二刀流に目を向けると、鞘が抜かれていないことに気づき、怒号する。
『クラピカ!鞘抜いてよ!!』
「だが、そうすればリリーが…」
『言ったでしょ!手加減しないで!!』
クラピカの隙を見たリリーは、クラピカの足に自らの足で引っかけた。
体勢を崩し、地についたクラピカは必死に立ち上がろうとした。
『…本気だって言ったでしょ?』
静かな呟きとともに、視界にきらめく切っ先が掠めた。
首の、脈打っている部分に、冷たいものが押し当てられる。
クラピカは自分を見下ろしてくるリリーの冷たい瞳を、瞬きすることもできずに見返した。
リリーは表情のない顔で、クラピカを凝視している。
「(…やりよるわい)」
その様子を好奇の目で凝視している会長は内心呟いた。
二人をじっと見つめているゴンとレオリオが口を開く。
「すごい、リリー…」
「リリースゲー…もう怒らせるのよそっかなァ(汗) 」
クラピカは、ごくりと固唾を呑み込んだ。
「…分かった、鞘を抜く。だからそれをどけろ」
一段と低い声色で告げて睨み付けるクラピカのそばをリリーは離れた。
クラピカは立ち上がると、ゆっくり二刀流の鞘を抜き始める。
そして、二刀流を再び構えると、冷たい口調で言った。
「…お前をみくびっていたようだな。私も今度は手加減しない。…リリー、行くぞ!!」
クラピカはリリーに向かって斬りかかる。
リリーは反射的にその切っ先を避けた――――…
戦いが始まってから30分が経過。
リリーは荒い呼吸をしながらクラピカを凝視する。
しばらく睨み合いが続き、再び二人はお互いの凶器で斬りかかる。
瞬間、身をよじらせて回避したリリーの右肩を、きらめく切っ先が掠めた。
痛みのあとに、鮮血が舞う。
そして、リリーはよろめいて地に転んだ。
右腕は紅く染まり、指先から絶えず血がしたたっていた。
リリーの視界が真っ赤に染まる。
そして、リリーはクラピカを睨み付けた。
会場の全ての音が掻き消えて、試験官、受験生全員はリリーの目を凝視した。
どくんと、クラピカの心臓が跳ねた。
……あのとき、見間違いではなかった。
燃えるような、深い瞳。
緋色の、眼。
なぜ、リリーが…
「お前は…一体何者なんだ!!」
クラピカは激しくリリーに怒鳴り付ける。
怒号を受けたリリーは肩をびくりと震わせて驚き、クラピカに手を差し伸べた。
『クラピカ…??』
すると、クラピカは更に激しい口調で怒鳴った。
「私に触るな!!」
クラピカはリリーに背を向けて歩き出すと、立会人にこう告げた。
「私の敗けでいい」
リリーはクラピカの後ろ姿を必死に見つめて、名前を呼んだ。
『クラピカ…待って!!どうして…』
どうして、敗けを認めたの?
どうして、あんなに怒ったの?
わからない。
わからない。
クラピカ…
わたしも、自分がわからないの…
リリーの視界が段々と狭くなる。
クラピカの遠くなっていく姿を見つめて、リリーはそのまま気を失った―――――――…
next…