名前設定無しの場合は、ヒロインが『リリー』になります。
ハンター試験編
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飛行船に乗った25人の受験生達は、飛行船で2日間の休息を取っていた。
嬉しそうに廊下を走るリリー。
リリーはクラピカに会いたくて、彼を探していた。
『あ、いた!!』
リリーは目を輝かせる。
クラピカとレオリオが、ロビーで丸いテーブルがある椅子に向かい合って座り、飲み物を飲んでいた。
『クラピカ!レオリオ!』
元気よく声に出して、二人を呼ぶリリー。
クラピカがリリーの方へ向いた時、リリーは大きく目を見開いた。
クラピカの頭に、何やら包帯が巻かれている。
『ククククラピカ!!どうしたのこれ!?』
慌てて尋ねるリリーに、クラピカは相変わらずクールに答えた。
「あぁ、これか。どうやら船が傾いた時に転んで頭を打ったらしくてな。だが軽い怪我だ。問題ない」
『ほんとに大丈夫なの!?ちゃんと手当した??』
「あぁ。先程レオリオにも診てもらった」
『もう無理しないでねっ。痛くない??』
クラピカをとても心配するリリーに、レオリオが面白くないと言った表情で話しかけた。
「おいリリー!クラピカばかり心配してるが、オレも大変だったんだぜ!?」
『あ。レオリオ!ゴメンね!!大丈夫?』
「ったく、オレ様はついでか!?まぁ見ての通り、何もねーぜ?」
『もうレオリオも心配してたんだからね!ゴンと助けに行ったんだから』
二人の会話を耳にしながら、クラピカはコーヒーを口にする。
「おお、そうらしいな!ありがとな!あ、そういえばリリー!お前こそ大丈夫なのか!?」
『ん、なにが??』
「オメェ、ゴンを助けたときに波にさらわれて、手すりに引っかかったんだろ!?よく無事だったな!!」
その話に初耳だったクラピカは、飲んでいた手を止めて、リリーを見て口を開く。
「波にさらわれた?」
『うん。でもなんで助かったのか、不思議なんだけど…なんでかな』
まるで他人ごとのような口ぶりのリリー。
それに怒りを感じたクラピカは、コーヒーをテーブルへ乱暴に置き、語調を荒げた。
「全くお前はっ。何故いつもそんなに無茶をする!波にさらわれただと?もし手すりに引っかからなければ、お前は海で死んでたんだぞ!?」
クラピカの怒鳴り声に、周りにいた受験生達が彼を見る。
突然クラピカに叱られて、リリーの頭は一瞬真っ白になった。
何度もまばたきをして、困った表情を浮かべているリリーは口を開く。
『だ、だって…仲間を、放っておけなかったの…それにわたしだって、何かの役に立ちたかったの!』
クラピカに怯えながらも、真っ直ぐな目で必死に言うリリーに、クラピカは黙る。
「おいおい、どうしたんだ?せっかく生き残ったのに喧嘩か?」
すると、後ろから男の人の声がして、近づいて来る。
自分の隣に来た背の高い人物に、リリーは顔を上げた。
あ…この人は確か…
『ハゲゾーさん?』
ドテーッ
その場にいた受験生達が転がる。
起き上がったハンゾーが、やれやれと言った顔で口を開いた。
「ったく、このオレ様の名前をちゃんと覚えてない奴がいたとは…しかもハゲゾーか!?」
『あ、間違えました!!ハンゾーさんでしたよねっ!?すみません!!』
慌てて訂正し、必死に謝るリリー。
隣ではレオリオが声に出して笑い、リリーの肩を叩く。
「リリー!!お前の天然はホント最高だな!!ハゲゾーか!確かに、ハゲ…」
レオリオが言い終わる前に、ハンゾーがレオリオをボカッとグーで殴る。
「また海の中に沈むか?」
「いってェな!何も殴ることねーだろ!?」
「オレの頭ははげてるんじゃなく、あえてこうしてるんだ。このオレ様の甘いマスクに似合う最高の…」
「だぁ!!何言ってやがるっ!!テメェはどう見てもつるっぱげ…」
またもや二回目のパンチを食らわすハンゾー。
二人の喧嘩が始まる。
「二人とも!静かにしないか!!」
「オメェが言うのかそれを!!」
レオリオはクラピカに言い放ち、ハンゾーに目を向ける。
クラピカはため息をつくと、再びコーヒーを飲み始めた。
こうなれば、落ち着くまで二人を放って置くしかないだろう。
リリーは、二人の喧嘩を前に茫然と立ち尽くす。
長い喧嘩に飽きてきた頃。
…なんか喉が乾いたなー。
そういえば、今朝から何も飲んでなかった。
わたしも何か飲み物飲もうっと!
リリーは飲み物を買いに出掛けた。
ついでにトイレにも向かう。
しばらくしてから戻って来ると、喧嘩は収まり、今度はハンゾーも含めてテーブルを真ん中に円になって3人で話していた。
リリーも輪に入ろうと、ハンゾーとレオリオの間の空いている椅子に座った。
目の前にはクラピカがいる。
「ーーにしても、無事に脱出できて、今はこうして優雅に飛行船の中とは、生き残った甲斐があったってもんだな」
ハンゾーがペラペラと楽しそうに話している。
クラピカとレオリオは、若干疲れてるのか、ただ話すのがめんどくさいのか、余り話しを聞いていない様子だ。
「そういえば、皆はどこの国の出身なんだ?オレの国は日本っていう国でな、観光スポットがそれはもう数えきれないほどあってな。―――‥」
ペラペラ。と、ハンゾーの日本を語る話は、10分以上も続いた。
ハンゾーの余りのおしゃべりに、リリーは、ポカーンと口を開けている。
そんなリリーを見たクラピカは、ふっと笑った。
「ーーーで、ここで本題なんだが、リリーだったな。全部試験が終わったら、オレと一緒に日本に行くってーのはどうだ?」
目を輝かせて言うハンゾー。
ぶっ…
あまりにも突然な話に、リリーは飲んでいたジュースを吹きだしそうになった。
な、なに言ってるのこの人?
気は確か!?
リリーは苦笑いを浮かべて、やんわりと断る。
『あの…わたしは結構です』
そう言って、鞄からハンカチを取り出し、少しこぼれた場所を慌てて拭く。
そしてリリーは、ゴクゴクとジュースを飲む。
「まぁそんな遠慮すんな!君のような綺麗な子は、日本に来たら、ハンターよりもいくらでもいい仕事はあるし、なんなら君も忍者に…」
「馬鹿野郎!!リリーが忍者なんて勿体ねーだろ!?リリーこそモデルか、それこそグラビアに…」
グ、グラビア!?
ぶっ!!
リリーは飲んでいたジュースを吹きだした。
『もうっ、何言ってんのよ!!モデルはともかくグラビア!?レオリオの変態!!』
そう怒りながらも、リリーはちらちらとクラピカの顔色を伺う。
クラピカはというと、目を伏せてテーブルを見つめて固まっていた。
「ったく、本気にしたのか!?冗談だよ、冗談!!オレから見ればリリーはまだまだおこちゃまだし、色気もまだまだだからなァ」
そう言って、ぽんぽんとリリーの頭に手を乗せるレオリオ。
ムカ。
「それを女子に言う台詞?レオリオって前から思ってたけど、なんか親父臭いし、ほんとに10代なの??」
グサッ
「おい!親父臭いって言うな!自分でも気にしてんだからよー!!」
やけになって言うレオリオ。
気にしてたんだ…と、リリーは再び苦笑い。
すると、ハンゾーが話を切り替える。
「そんな話はどうでもいい。なぁリリー。観光がてら日本に遊びに来るのも考えてみてくれねーか?」
『いや、でも。ハンター試験が終わったら、師匠の所に行きたくて、そのあとでもよければ…』
「本当か!?じゃあさっそく連絡先を…!」
「リリーは、確か携帯を持ってなかったよな」
そう言って、リリーの目を真っ直ぐ見て言うクラピカ。
携帯は持ってるけど…
クラピカの目は、持ってないと言え。と言った目をしている。
『あの…携帯、持ってなくて…あははは』
笑って誤魔化すリリー。
「そうなのか!?まぁ携帯がなくても、手紙という手段もある!」
「…リリーは、誰彼構わず仲良くするのが特技だからな」
『え…』
リリーは、ふとクラピカを見る。
何かハンゾーに突っかかった言い方をするクラピカ。
もしかして…と思いながらも、そんな訳ないっと、リリーは首を振る。
「おい、リリー。じっとしろ、顔に何かついてるぜ?」
そう言ってハンゾーが、リリーの頬に触れる。
顔を近付けて、彼女の顔を覗き込む。
リリーの目の下についたまつ毛を指で優しく取るハンゾー。
「まつげか。ほら、取れたぜ」
ハンゾーは、指先に乗せたまつ毛をリリーに見せて、ふうっと吹いた。
『あ…ありがとうございます。ハンゾーさん』
そんな二人を見て、なぜか怒りが増すクラピカ。
「ハンゾーさんなんて水くさい。ハンゾーって呼んでくれ!改めてよろしくなっ!!」
そう言って、がしっとリリーの手を両手で握って言ったハンゾー。
リリーの手に、馴れ馴れしく男の人の手が触れている。
ぶちっ。
クラピカの中で、何かが切れる。
バシッ
クラピカは、いきなりハンゾーの頭を強く叩いた。
「あ……」
思わず手が出てしまったクラピカ。
ハンゾーは目を丸くして、固まっている。
リリーとレオリオも目を丸くして、クラピカを見た。
クラピカは、苦笑いを浮かべて言った。
「すまないハンゾー。頭に虫がいたんだ。飛行船なのに可笑しいな…」
ふうっと手のひらをわざとらしく吹くクラピカ。
「クラピカ!そんなに強く叩くことねーだろう?」
「ははは……。用事を見つけた。私はこれで」
そうクールに言い残し、クラピカは立ち上がり、その場を後にした。
去っていく彼を見ながら、レオリオがニヤッと笑う。
「かわいいな」
『え、かわいい?』
クラピカが、かわいい??
レオリオ、もしかして…あっち系!?
「…なにがなんだか分かってないお前もかわいいな」
『は??』
レオリオの発言に、ますます混乱するリリー。
レオリオは、笑みを浮かべたまま、やれやれと言った顔で息を吐いた。
二人には、もう少し時間がかかりそうだな。
「リリー」
ハンゾーに呼ばれて、振り向くリリー。
「リリー、正直オレのことどう思う?オレはルックスもいいし、爽やかで――」
「おい」
「実力も抜きんでてるときてる!」
「おいちょっと」
「これで正式にハンターになれば、もうモテモテで困るだろうなぁ!あははは!だから、そうなる前に、オレとぜひ一緒に……て、あれ?リリーは?」
座っていた椅子に彼女がいない。
我に返ったハンゾーがいなくなったリリーを探す。
レオリオは、親指を立てて後ろを指しながら、呆れて言った。
「リリーなら、もう行っちまったぜ?」
「はあぁ!!?」
――――
――――――…
あれから飛行船で休息を十分に取ったリリー達と受験生は、ゼビル島に到着した。
そして試験官から4次試験の説明を受けていた。
「諸君、軍艦島脱出おめでとう。残る試験は4次試験と最終試験のみ。4次試験はゼビル島にて行われる」
すると、試験官が何やら穴の空いた箱を用意してきた。
「これからクジを引いてもらう。このクジで決定するのは、狩る者と狩られる者。
この中には、25枚のナンバーカード、今残っている諸君らの受験番号が入っている。今からタワーを脱出した順に一枚ずつ引いてもらおう」
ヒソカから順番にクジを一枚ずつ引いていく。
そして、リリーの順番が回ってきた。
緊張しながら一枚のクジを引く。
リリーは引いたクジの番号を見ると、目を見開いて固まった。
全員が引き終わり、試験官は再び説明を始める。
「今、諸君がそれぞれ何番のカードを引いたのかは全てこの機械に記憶されている。なのでそのカードは処分して結構。
それぞれのカードに示された番号の受験生が…
それぞれの獲物(ターゲット)だ。
奪うのは、獲物のナンバープレート。
自分の獲物となる受験生のナンバープレートは3点。
自分自身のナンバープレートも3点。
それ以外のナンバープレートは1点。
最終試験に進むために必要な点数は、6点。
ゼビル島での滞在期間中(7日間)に6点分のナンバープレートを集めること」
見開かれたままのリリーの瞼が、大きく震える。
リリーが手にしたクジの番号(ターゲット)は……
404番
クラピカだった―――…
ゼビル島に向かう舟の中、受験生達の戦いは既に始まっていた。
誰とはなく自分のプレートは胸からはずし、懐にしまい込んでいた。
皆は誰とも視線をあわせず情報を遮断した。
リリーは海を眺めながら一人落ち込んでいる。
はぁー…
本当にわたしって、クジ運悪いなぁ。
なんで寄りによってクラピカのを引いちゃうんだろ…。
もちろんクラピカのナンバープレートは奪えないし…
3点分、自力で集めるしかないよね。
3人も奪えるかな…??
リリーはそのままうつむいて、重い息を吐いた。
「リリーー!!」
呼ばれた方へ振り返るとゴンとキルアが舟の端でもたれ掛かって座っている。
リリーはゴン達の元へ向かった。
『なにー??』
「あのさ、3人でせーので見せっこしない?」
『え…』
「安心しろよ、オレとゴンの獲物は303番(リリー)じゃない」
ゴンとキルアはリリーを座らせると、3人はかけ声の「せーの」と同時にクジを見せた。
沈黙が続いた中、キルアが最初に口を開く。
「……マジ?お前らクジ運ないなー」
「やっぱり?」
『だよね…』
「お前クラピカのことばっかり考えてるから引くんだよ」
『しっ!声でかいよ!』
キルアの言葉にリリーは慌てて止めた。
それより、ゴンはヒソカなんだ…。
お互いクジ運悪いね。
落ち込んでいるリリーにゴンは尋ねる。
「リリーはそのプレート奪うの? 」
『ううん、大事な仲間だもん。奪えないよ。頑張って3つゲットする』
「大丈夫かよ、お前一人じゃムリだろ?強がんなって」
『別に強がってないもん!』
けど、一週間も島で滞在って女子にとってかなりキツイなぁ…。
トイレもないし、シャワーもないし…
食糧も水もないでしょ??
あ!夜とかどうしよう…!!
怖いのやだなぁ…(泣)
色んなことに不安がどんどん増していくリリー。
隣のゴンはキルアのクジを手に取る。
「キルアの…これ誰の番号(199)だっけ?」
「やっぱしわかんねー?他の奴の番号なんか全部覚えちゃいないもんな。もうみんなプレートかくしてやんの、せこいよなー」
キルアはゴンを見てはっとした。
ゴンは前をまっすぐ見つめ、両手を合わせて震えている。
「嬉しいのか怖いのかどっちなんだ?」
キルアの質問に一瞬考えるゴンは静かに答える。
「両方…かな。これがもしただの決闘だったらオレに勝ち目はなかっただろうけど、プレートを奪えばいいってことなら何か方法があるはず。今のオレでも…少しはチャンスがある。そう思うとさ怖いけど…やりがいはあるよ」
…そっか。
ゴンは強いね。
ダメだなぁ…
いつまでも落ち込んでたら。
わたしも前向きに頑張らないとね!
『ゴン、ありがと。落ち込んでたって仕方ないもんね!わたしもゴンを見習ってがんばるよ!!』
笑顔になったリリーを見て、キルアも軽く微笑む。
「ま、がんばろうぜ。生き残れよ!ゴン、リリー」
立ち上がって言ったキルアに、ゴンとリリーは笑顔で親指をたてた―――…
舟がゼビル島に到着し、通過時間の早い受験生から順番に下船していく。
“一週間の間に6点分のプレートを集め、またこの場所に戻ってくること”
それが最後の説明だった。
次々に受験番号が呼ばれ、呼ばれた受験生は下船していく。
とうとう、リリーの番号が呼ばれた。
『クラピカ、レオリオ。先に行くね!』
「おう!気を付けろよ!絶対に生きて帰ってこいよ!!」
『レオリオもね!!』
「無事を祈る」
リリーは、瞬きもせずにクラピカを見つめた。
そして…
『クラピカもね!!』
リリーは精一杯の笑顔を作ると、背を向けてその場を走り始めた。
―――3時間後。
さっきまで太陽に覆い被さっていたはれぼったい雲は、風によってさらさらと遠方へ流れる。
いつしか見上げた先には広く透明な青空だけが広がっていた。
リリーは歩き疲れて、木陰の下で座りこむ。
はぁ―…
全然人に会わないし、一人もみつからないよぉ…。
リリーは眩しさに目を細めながら、空を見上げた。
…それにしても良い天気だなぁ。
ハンター試験だってこと、つい忘れちゃう。
風が気持ちい。
リリーは大きくあくびをする。
ハンター試験が始まってから寝不足で疲れが溜まっているリリーは、その場でうとうとし始める。
そして、軽く寝息を立てて眠ってしまった。
その様子を草むらから見ていた一人の人物がリリーに近づく。
気持ち良さそうにスヤスヤと熟睡しているリリーの前で立ち止まると、その人物は突然大声を出した。
「起きろ!!」
『え…!な、なに…っ!?』
リリーはその声に体をビクッとさせて、大きく目を見開く。
上を見上げるとそこには、怖い顔でじっとリリーを睨んでいるクラピカの姿だった。
『…クラピカ!なんでここに??』
驚きと嬉しさで目を輝かせるリリーに、クラピカは語調を荒くした。
「お前は馬鹿か!!こんな場所で居眠りなど、何を考えている!!居眠りの最中、プレートを奪われたらどうするつもりだったんだ!!」
リリーは首を竦めて、上目遣いで見上げながらしょんぼりと呟いた。
『…ご、ごめんなさい。どうしても眠たくて、そしたらいつの間にか寝ちゃってて…』
クラピカは更に冷たく激しい口調を続ける。
「お前のそうゆう所が危険を招くんだ!!試験に受かる気が本当にあるのか!?命知らずもいい加減にしろ!!」
『…………』
初めてだった。
クラピカにこんな怖い顔で怒鳴られたのは…
リリーの目に涙が溜まり始める。
ぐっと唇をかんで、瞬きをせずにリリーは泣くのを必死に堪えた。
クラピカが言い過ぎてしまったと後悔するにはもう遅く、とてつもなく悲しい表情をしているリリーに言葉を失った。
怒鳴ってしまって、すまない…。
そう言おうと口を開いた、そのときだった。
何者かの気配を感じたクラピカは、はっと周りを見渡した。
すると、右の草むらの中からリリーに向かって狙いを定めている人物がいる。
「伏せろ!!」
針のようなものがリリーに向かって襲いかかる。
クラピカは咄嗟にリリーをかばうと、突然首に痛みが走り、視界が段々と霞み始めた。
体が動かない。
鼓動の音だけが耳の奥で激しく木霊する。
訳がわからないリリーは、自分に覆い被さったクラピカが動かないことに心臓が跳ね上がる。
そして、クラピカはリリーの横に崩れ落ちた。
リリーはクラピカの名前を何度も叫んだ。
『…クラピカ…ッ!??ねぇっクラピカァ!!』
しかし、いくら名前を呼んでも、揺すってもクラピカは起きない。
草むらの中にいた人物は、舌打ちをするとその場から姿を消した―――…
next…