好きだと言えない
name change
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「おはよう名前」
目覚めると満面の笑みで悟がこちらを見つめていた
恥ずかしいようなくすぐったいような何とも言えない気持ちがあふれる
名前は悟の元へ帰ってきたのだと再認識した
「…お"はよ」
「くくっウケる~。すげー声してんだけど」
「…さとるのせいじゃん」
「その舌ったらずな言い方態と?だとしたら相当あざといんだけどー」
目の前の男は朝からご機嫌に名前の頭を撫でまわす
しかも気だるそうなところは微塵もない
夕べは何時に寝たのかも記憶にないくらいなのに
特級になると体力までも特級なのだろうか?
「朝から名前が腕の中にいるとか。幸せ過ぎる…」
「はいはい」
「つれないなー。僕の愛、足りなかった?もっと体で示してあげよっか?」
耳元で態と息を吹きかけながらしゃべる悟に
名前は顔を赤くして耳を抑えた
「やべっかわいー。もうベッドから出たくなくなっちゃうじゃん」
「仕事だよーっ悟もでしょ?」
「え?やだ。行かない。今日ずっとこうしてよ?」
悟がずるずると頭の位置を下にずらすと
彼女の胸元にすり寄った
「んー。最高。ずっとこうしてられる気がする」
「もう。起きるよー?」
「えーーー?仕方ない。じゃ朝ごはん作ってくるから、名前はシャワー浴びておいでよ」
「ごはん??悟が?」
「ひっどーい。僕こう見えて万能よ?それとも一緒にシャワー入る?何もしないとは約束出来ないけど」
ニヤニヤしながら言う悟に
枕をぶつけたら少年の様に笑った
向かい合ってテーブルで朝食を食べていると
悟の手が伸びてきて名前の左手の薬指をひと撫でした
「昨日から言いたかったんだけど、ちゃんとしてくれてるんだ。偉い偉い」
「まあね」
「昨日ゆっくり話す時間なかったからさー。今日の任務後、外に飯行こうよ」
「うん。終わったら連絡するね」
海外にいる間
ずっとメールや電話のやり取りはしていたので知ってはいたけれど
あらためて悟のしゃべり方が柔らかくなったとおもった
それと同時に以前よりストレートな物言いを
するようになった気がする
「傑も硝子もお前に会うの楽しみにしてたよ」
「2人とも元気?」
「…お前今日は2人きりで飯だからね。あいつら誘っちゃダメだよ?」
「なんで?」
「なんでも!僕は名前に会えなかった分、名前を独り占めしたいの!」
ーーー
ーーーーー
ーーー
「あ、名前さん。お帰りなさい」
悟と高専を歩いていると傑に声をかけられた
4年ぶりの高専はとても懐かしくて
しかもその中に知った顔がいると
自然に顔がほころんでしまう
「傑!元気そうで何より。先生が板についてるんじゃない?」
「名前さんにそう言ってもらえるなんて嬉しいな」
悟が離れたくないからとどんなに嫌がっても
車を降りてからべったりと彼女の腰に手を添えて歩いていた
傑と挨拶をしていると後ろから彼女を抱きしめて
名前の顔を横から覗き込んだ
「えー?名前僕は?」
「こら悟、学校では名前さんから離れたらどうだい?一応君は教師なんだから」
「傑、もっと言ってやって」
「僕の名前だもん。やなこったー」
「昔に比べて随分と自分の感情に素直になったね。」
「あ"?」
「ほら悟、言葉遣いが戻ってしまっているよ?」
「今はいーんだよ!ってか名前『もっと言って』とかひどくない?名前も僕とくっ付いていたいでしょ?」
「TPOを考えてね。五条先生」
やたらと近くにある悟を見てそう言うと嬉しそうに笑った
「五条先生とか名前の口から言われるとそそるーっそれ、今度ベッドの上で言って?」
「もう言わない」
「悟、素直過ぎるのもどうかと思うよ?」
「僕、正論嫌いなの知ってるでしょ?」
この展開で以前は2人が
喧嘩に勃発していた場面に遭遇したことがある
懐かしいなと思いつつ離れる隙を狙っていたが
傑はにこやかに笑っただけだった
「さあ悟、授業があるから行こうか?」
「さすが傑、大人になったねぇ」
「え?名前僕は??」
「はいはい。授業あるんでしょ?私も学長に挨拶しに行くから」
「僕、行きたくなーい」
「傑、お願いできる?」
「名前さんのお願いなら喜んで」
駄々をこねる悟を名前から引き剝がし
教室へと引きずって行く2人に手を振った
どこからか桜の花びらが舞ってきて
彼女は桜の木のある方に視線を向けた
もう4月なので早咲きのあの桜は終わってしまっただろうか
あとであの木を見に行こうと思いを馳せながら
名前は学長室のある建物へと歩いて行った
温かい日差しが差し込んで南風が吹き込んでいる
木を見上げるとすでに桜の花はなく
その代わりに青々と葉が茂っていた
思えばこの高専に12年もお世話になっている
気が付けば自分の人生の半分は呪術師としての生活だった
呪いが見えたことで人と異なる生活を余儀なくされた
でも悪いことばかりではなく
かけがえのない多くのものをもらった
大好きな人も出来た
こんな世界の住人だからこそ
早すぎる死別も経験した
巡り巡って出会った後輩は
「強くなる」という約束通り現代最強の呪術師となった
不安がなくなるわけではない
彼が死ななくても
私が先に逝ってしまうかもしれない
でも、きっと
そう口にしたら―――
「名前、ここにいたんだ」
名前が振り向くと
ぐるぐると包帯で目隠しをした愛しい人がいた
自分の感情に気がついてから
わざとその気持ちに気がつかない振りをしたり
彼との間に壁を作ったり
何度も離れようと考えて
実際に海外へと行き、自ら距離を取った
でもその度に悟手を伸ばして捕まえてくれた
4年もの間、私を待っていてくれた
学生の4年は決して短い時間じゃなかっただろうに
「なんでわかったの?私がここにいるって」
「へへーっ 僕なんでも名前の事ならわかっちゃうんだよ?」
名前は悟を見上げた
包帯で隠されていても優しい眼差しが
自分に向けられているのが伝わった
「ねぇ。僕もう大人になったよ。だからあの時の予約、もらおうかなって」
すっと伸びてきた手が名前の左手を捕まえて
その薬指にはまっている指輪をそっと撫でた
「名前、僕と結婚して」
まだ自分自身に自信があるわけじゃない
悟にふさわしい人間なのか
隣に立つことが出来る強さなのかわからない
「…本当に私でいいの?」
そのままぐいっと腕を引かれて
名前は悟に抱き留められた
「名前でいいんじゃなくて、名前がいいの。お前意外考えらんない」
「名前が自己肯定感低いの知ってるよ。僕がちゃんと自信持ってもらえる様にいつでも、何度でも言葉にして言ってあげる」
「名前がすき。名前しかいらない。だから僕と一緒になって?」
返事の代わりに悟の背中に回す腕に
ぎゅうっと力をこめると
悟も私を抱く腕に力をこめた
「で、返事は?」
腕を緩めて悟がかがむとお互いの
おでこがこつんと合わさった
「 」
「へへっ 名前、ずっと一緒にいようね」
ーーー
ーーーーー
「名前、今日の任務どこ?」
「んー?3件あるけど全部都内かな」
「僕も午後から青山だから、どっかで待ち合わせしようよ」
表参道に夕食を食べに行くことになり
近場に補助監督に送ってもらい車を降りて
待ち合わせ場所へ向かうとガードレールに浅く腰を掛けていた悟が
女性に声をかけられているところだった
名前に気がつくと口元に笑みを浮かべて
手を上げて立ち上がった
「えー行っちゃうんですかぁ?」
「言ったでしょ?僕奥さんとこれからデートなの」
「せめて連絡先とかっ」
綺麗な女性が悟の腕にしがみついて
大きな胸を押し付けている
名前からしたら気分がいいものではない
「離せよブス。香水くせーんだよ」
「こら悟、言い方」
わなわなと震えていた女性は手を離して俯いていた
昔の様な物言いで一掃している悟にほっとするものの
あまりに振り方が可哀想だとも思った
「だって僕、名前以外眼中ないしー。触られると蕁麻疹出そう」
「とか言いながら私の見えないとこで浮気してたりして」
「しないよ。僕のサトル君名前以外に勃たないもん」
「はいはい。するなら絶対バレない様にしてよね」
「信用ないなー。あれー?もしかして名前妬いてくれた?」
さりげなく左手を取られると指を絡めながら歩く
実際まだ結婚はしていない
名前に親族はいなくとも悟は五条家当主なので
色々と儀式があるらしい
全部すっ飛ばして籍を入れると駄々をこねた悟を
名前がなだめて今に至る
これからがスタート
困難はいっぱいあるだろう
「2人なら乗り越えられるよ」と
その都度笑ってそう言ってくれる悟の横に
いつまでも隣で並んで歩いて行きたい
「そりゃ妬くよ」
「え?まじ?」
「なんで妬かないと思ったの?」
「名前っていつも年上の余裕があふれてるから…僕に妬いてくれるなんてないと思ってた」
「そういう悟は周りを威嚇しすぎ。この前七海ドン引きしてたよ?」
「名前の近くに男がいるとか許せないの。僕だけいればいいでしょ?」
ぽつりと降り出した雨
それに気がつき名前が空を見上げると
少しかがんで悟がサングラスを下げてニヤッと笑った
「大丈夫、僕と手を繋いでれば濡れないよ」
「でも降り出す前にお店行こう?怪しまれる」
けらけらと笑いながら悟は歩き出す
隣に並び繋がる手をぎゅっと繋いだ
END
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