好きだと言えない
name change
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五条side
名前を残して俺は宿へ向かって走った
明らかに濃い呪いの気配がする
取り合えず帳を降ろしてからあたりを探る
案の定、離れにある貸切風呂の建物から気配が立ち上っていた
「あー、とりあえず外に誘い出すか。めんどくせー」
ガラガラと扉を開けて中を見る
すぐに呪いの元がこれだと分かった
「こんなところに…」
俺はそれ を持って表へと出ると
案の定呪いもつられて俺についてきた
「あいつ、おいて来ちまったんだよ。さくっと終わろうぜ?」
襲い掛かってくる呪霊を蹴って、殴る
塵となって消えていく呪い
大したことねぇ3級くらいか?
「さて、こいつも封印すっか」
手にしていたそれ を俺は念のため応急で封印を施した
ふと、あることに気がつく
名前がまだ帰ってきていない
確かにさくっと祓ったがそれにしても遅すぎる
途中で呪力切れでも起こして雪道で倒れたか?
「世話のかかる先輩だわー」
俺は封印したものをコートのポケットに入れ
先程まで来た道を歩いて戻った
おかしい
名前の気配がない
あいつの呪力も全く感じない
ドクン
大きく心臓が脈打った
気が付けば無意識に走り出していた
大丈夫だ。あいつ腐っても1級だろ?
自分にそう言い聞かせるものの
さっきの結界張ってあいつの呪力はカラカラだったのは明らかだ
「クソっ」
走っても走っても
どこにも名前の姿が見えない
いつの間にかさっきの祠の前まで来ていた
「どこ行きやがった…名前」
残穢を探せ、探すんだ
山の日没は早い、木々に日が隠れてすぐに暗くなる
しかも雪まで降っているからライト無しの捜索は厳しい
残り時間は1時間もないだろう
それにそこまで長時間外にいるつもりじゃないから
あいつ、足元はしっかり装備していたが上は軽装だ
山道を歩くから暑くなると言ってダウンは部屋に置いてきて
防風・防水効果のあるスノージャケットを纏ってはいた
あんなのペラペラで保温効果はないに等しい
そんな状態で遭難でもしてみろ
朝になる前に凍死確実だ!
「名前ーーーっ!!!」
―――さとる
声がした方を振り向くが何もない
だが、微かにあいつの残穢を感じた
「ぜったい見つけてやるから。死ぬなよ」
俺は残穢を感じた方向に一歩踏み出した
ーーー
ーーーーー
ーーー
残穢を辿り山の奥へと進んで行く
元々が登山道だからはっきりとした道はないし
辺り一面が深い雪で覆いつくされていて
どれが道なのかさえ分からない
俺は残穢だけを頼りに前へ前へと足を進めた
術式を回しているから濡れないものの
ふくらはぎ位まである積雪をかき分け
ラッセルしながら歩いているので時間がかかる
だが帰りの事も考えた時に
道が分からなくなるのもリスクと考え
あいつは大丈夫だと自分に言い聞かせながら
ひたすら歩き続けた
程なくして岩壁に阻まれた
その奥にはっきりと名前の気配を感じサングラスを外した
普通の人には切り立った崖に見えるそこ
六眼にははっきりと洞窟とその先に淡い光が見える
もう日没はそこまで迫っている
急いでためらうことなく俺はそこに足を踏み入れた
「名前!!いるんだろ、返事しろ!」
自分の声が岩の洞窟内で反響していく
だが彼女の返事の代わりに
横から呪いの気配が一気に濃くなった
「お前みてーな雑魚に構ってる時間ねーんだよ。とっとと失せろ!!」
睨み付けながら呪力を飛ばし一瞬で祓うと
あんな雑魚でも本体だったのか術式が溶けて
洞窟の出口付近に外の光が微かに差し込んできた
呪いの気配はもうない
名前の気配に向かって暗闇の中を走ると
奥に彼女の呪力の色がはっきりと見えた
「名前っおい、しっかりしろ!」
彼女を抱き上げ空いた手で頬を数回軽くたたくが返事がない
「こんなに暗いと状況がわかんねーな」
彼女を横抱きにしてひとまず洞窟を後にした
外に出て改めて彼女を見る
ぱっと見た感じでは流血はないものの真っ白で顔色がくそ悪い
頬に触れると恐ろしく冷たくなっていた
「とりあえずこれで我慢しろよ」
自分の巻いていたマフラーを彼女の頭と首を覆うように巻き
これ以上体温を逃がさない様にすると
自分の背に背負った
背中に感じる微かな温もりと
時折首筋にかかる名前の吐息が
彼女が生きていることを自分に伝えてくれる
「ったく。本当、世話のかかるやつ」
もう日はとっくに傾き暗闇の中歩く
うっそうと茂っている木々の闇と
ほのかに青白く見えている一面の雪
ラッセルした道と態と残してきた自分の残穢だけが頼りだ
雪を踏みつけた時のサクっと鳴る特有の音と
彼女の息と自分の呼吸音
この世に2人しかいないんじゃないかと錯覚してしまう程静かだ
その静かさがとても心地よかった
ちゃんと生きてる
俺の背中の温もりをかみしめる
「はぁ。まじで遭難の一歩手前だな。雪かき分けて歩いとくとか、さすが俺!」
独り言を言いながらかなりのスピードで下山して行く
大丈夫、生きている
さっきまでそれに対して安堵しかなかったが
今は目覚めていない彼女に対して不安しかない
硝子もいないここでは彼女が具合が悪くなった時
後手になるのは明らかで
―――もう痛い思いさせたくねーからここに来たのに
俺、なにやってんだか。意味ねー
「…ん…」
「あ、名前起きた?」
「さ…とる…?」
「あーあー!もう寝とけ。どうせ起きても歩けねーだろ?」
「ん…ごめん」
消えてしまいそうな返事は
雪に音を吸い込まれてしまう
「…名前、お前、痛いところとか?」
「え?」
「どっか具合悪いとこあるかって聞いてんの!2度も言わせんな」
「大丈夫…ちょっと腕が痛いだけ」
―――やっぱ怪我してんじゃねーか
「それ。大丈夫って言わねーし。バカなの?あ、悪りぃバカだったな。名前パイセンは」
「ごめんって謝ってるじゃん…」
「ほんと、情けない…」
微かに背後で呟かれた声を俺の耳は拾っていた
その言葉を境に名前は一言も発しなくなった
その代わりに俺に触れている腕が微かに震えている様だった
「…別に。お前のせいじゃねーよ。今回は嵌められたんだよ」
「…」
「お前を襲ったのが呪詛師じゃなくて良かったよ。呪詛師だったら俺、間に合ってねーしお前死んでたぞ」
『死んでたぞ』
その言の葉を自身で言いながら
腹の底から色々なものが這いあがってくる
守りたい
でも守れていないのも事実
―――こいつは守られるだけの奴じゃねぇ。けど、だけど本当は…
「ちっ これじゃ一緒に来た意味ねーし」
「…そんなことない。助けてくれてありがと」
「…お前に怪我させてからじゃ遅いって言ってんの!」
―――惚れた女一人くらいは無傷で守りてぇだろ
その言葉だけは口にすることが出来ない
「腹減ったー」とおどけた声でごまかした
「夕飯のおかずなんでも1品、悟にあげるね」
「えー1品だけかよ。俺こんなに頑張ってんのに」
「じゃあ1.5こ」
背中で名前の笑う声が聞こえた
「名前はそっちの方がいい」
「…ん?」
「笑ってる方が3割増しって言うじゃん。ブサイクが泣いたらブサイク3割増しになるだろ?」
「とっとと部屋返ってまず風呂だな。お前冷えすぎ!」
さく、さくと
小気味いい音をさせながら俺たちは宿へとたどり着いた
.
名前を残して俺は宿へ向かって走った
明らかに濃い呪いの気配がする
取り合えず帳を降ろしてからあたりを探る
案の定、離れにある貸切風呂の建物から気配が立ち上っていた
「あー、とりあえず外に誘い出すか。めんどくせー」
ガラガラと扉を開けて中を見る
すぐに呪いの元がこれだと分かった
「こんなところに…」
俺は
案の定呪いもつられて俺についてきた
「あいつ、おいて来ちまったんだよ。さくっと終わろうぜ?」
襲い掛かってくる呪霊を蹴って、殴る
塵となって消えていく呪い
大したことねぇ3級くらいか?
「さて、こいつも封印すっか」
手にしていた
ふと、あることに気がつく
名前がまだ帰ってきていない
確かにさくっと祓ったがそれにしても遅すぎる
途中で呪力切れでも起こして雪道で倒れたか?
「世話のかかる先輩だわー」
俺は封印したものをコートのポケットに入れ
先程まで来た道を歩いて戻った
おかしい
名前の気配がない
あいつの呪力も全く感じない
ドクン
大きく心臓が脈打った
気が付けば無意識に走り出していた
大丈夫だ。あいつ腐っても1級だろ?
自分にそう言い聞かせるものの
さっきの結界張ってあいつの呪力はカラカラだったのは明らかだ
「クソっ」
走っても走っても
どこにも名前の姿が見えない
いつの間にかさっきの祠の前まで来ていた
「どこ行きやがった…名前」
残穢を探せ、探すんだ
山の日没は早い、木々に日が隠れてすぐに暗くなる
しかも雪まで降っているからライト無しの捜索は厳しい
残り時間は1時間もないだろう
それにそこまで長時間外にいるつもりじゃないから
あいつ、足元はしっかり装備していたが上は軽装だ
山道を歩くから暑くなると言ってダウンは部屋に置いてきて
防風・防水効果のあるスノージャケットを纏ってはいた
あんなのペラペラで保温効果はないに等しい
そんな状態で遭難でもしてみろ
朝になる前に凍死確実だ!
「名前ーーーっ!!!」
―――さとる
声がした方を振り向くが何もない
だが、微かにあいつの残穢を感じた
「ぜったい見つけてやるから。死ぬなよ」
俺は残穢を感じた方向に一歩踏み出した
ーーー
ーーーーー
ーーー
残穢を辿り山の奥へと進んで行く
元々が登山道だからはっきりとした道はないし
辺り一面が深い雪で覆いつくされていて
どれが道なのかさえ分からない
俺は残穢だけを頼りに前へ前へと足を進めた
術式を回しているから濡れないものの
ふくらはぎ位まである積雪をかき分け
ラッセルしながら歩いているので時間がかかる
だが帰りの事も考えた時に
道が分からなくなるのもリスクと考え
あいつは大丈夫だと自分に言い聞かせながら
ひたすら歩き続けた
程なくして岩壁に阻まれた
その奥にはっきりと名前の気配を感じサングラスを外した
普通の人には切り立った崖に見えるそこ
六眼にははっきりと洞窟とその先に淡い光が見える
もう日没はそこまで迫っている
急いでためらうことなく俺はそこに足を踏み入れた
「名前!!いるんだろ、返事しろ!」
自分の声が岩の洞窟内で反響していく
だが彼女の返事の代わりに
横から呪いの気配が一気に濃くなった
「お前みてーな雑魚に構ってる時間ねーんだよ。とっとと失せろ!!」
睨み付けながら呪力を飛ばし一瞬で祓うと
あんな雑魚でも本体だったのか術式が溶けて
洞窟の出口付近に外の光が微かに差し込んできた
呪いの気配はもうない
名前の気配に向かって暗闇の中を走ると
奥に彼女の呪力の色がはっきりと見えた
「名前っおい、しっかりしろ!」
彼女を抱き上げ空いた手で頬を数回軽くたたくが返事がない
「こんなに暗いと状況がわかんねーな」
彼女を横抱きにしてひとまず洞窟を後にした
外に出て改めて彼女を見る
ぱっと見た感じでは流血はないものの真っ白で顔色がくそ悪い
頬に触れると恐ろしく冷たくなっていた
「とりあえずこれで我慢しろよ」
自分の巻いていたマフラーを彼女の頭と首を覆うように巻き
これ以上体温を逃がさない様にすると
自分の背に背負った
背中に感じる微かな温もりと
時折首筋にかかる名前の吐息が
彼女が生きていることを自分に伝えてくれる
「ったく。本当、世話のかかるやつ」
もう日はとっくに傾き暗闇の中歩く
うっそうと茂っている木々の闇と
ほのかに青白く見えている一面の雪
ラッセルした道と態と残してきた自分の残穢だけが頼りだ
雪を踏みつけた時のサクっと鳴る特有の音と
彼女の息と自分の呼吸音
この世に2人しかいないんじゃないかと錯覚してしまう程静かだ
その静かさがとても心地よかった
ちゃんと生きてる
俺の背中の温もりをかみしめる
「はぁ。まじで遭難の一歩手前だな。雪かき分けて歩いとくとか、さすが俺!」
独り言を言いながらかなりのスピードで下山して行く
大丈夫、生きている
さっきまでそれに対して安堵しかなかったが
今は目覚めていない彼女に対して不安しかない
硝子もいないここでは彼女が具合が悪くなった時
後手になるのは明らかで
―――もう痛い思いさせたくねーからここに来たのに
俺、なにやってんだか。意味ねー
「…ん…」
「あ、名前起きた?」
「さ…とる…?」
「あーあー!もう寝とけ。どうせ起きても歩けねーだろ?」
「ん…ごめん」
消えてしまいそうな返事は
雪に音を吸い込まれてしまう
「…名前、お前、痛いところとか?」
「え?」
「どっか具合悪いとこあるかって聞いてんの!2度も言わせんな」
「大丈夫…ちょっと腕が痛いだけ」
―――やっぱ怪我してんじゃねーか
「それ。大丈夫って言わねーし。バカなの?あ、悪りぃバカだったな。名前パイセンは」
「ごめんって謝ってるじゃん…」
「ほんと、情けない…」
微かに背後で呟かれた声を俺の耳は拾っていた
その言葉を境に名前は一言も発しなくなった
その代わりに俺に触れている腕が微かに震えている様だった
「…別に。お前のせいじゃねーよ。今回は嵌められたんだよ」
「…」
「お前を襲ったのが呪詛師じゃなくて良かったよ。呪詛師だったら俺、間に合ってねーしお前死んでたぞ」
『死んでたぞ』
その言の葉を自身で言いながら
腹の底から色々なものが這いあがってくる
守りたい
でも守れていないのも事実
―――こいつは守られるだけの奴じゃねぇ。けど、だけど本当は…
「ちっ これじゃ一緒に来た意味ねーし」
「…そんなことない。助けてくれてありがと」
「…お前に怪我させてからじゃ遅いって言ってんの!」
―――惚れた女一人くらいは無傷で守りてぇだろ
その言葉だけは口にすることが出来ない
「腹減ったー」とおどけた声でごまかした
「夕飯のおかずなんでも1品、悟にあげるね」
「えー1品だけかよ。俺こんなに頑張ってんのに」
「じゃあ1.5こ」
背中で名前の笑う声が聞こえた
「名前はそっちの方がいい」
「…ん?」
「笑ってる方が3割増しって言うじゃん。ブサイクが泣いたらブサイク3割増しになるだろ?」
「とっとと部屋返ってまず風呂だな。お前冷えすぎ!」
さく、さくと
小気味いい音をさせながら俺たちは宿へとたどり着いた
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