六月の昏い夜
目次
はじめに
この物語は、35年前に実際に中国・北京で起きた天安門事件をモチーフにしています。当時、学生たちのデモからハンストを経て、一般市民までも巻き込んだ民主化を求める運動に広がりました。
当時、諸外国はこの動きをリアルタイムでテレビで見ることが出来ました。若者たちの熱い主張、それを取り囲む軍隊。異様な光景でした。
その中で北京の在留邦人が大変な苦労をして脱出、そして帰国という話や日本を含めた外国人報道陣たちが天安門から締め出されるというニュースに、何がどうしてこうなったのかも、よく分からぬままに連日テレビのニュースを見ていました。
そのうち、天安門事件は「終結」します。
実際に軍の戦車が導入され、その前に立ちふさがった青年がいました。彼がどうなったのか、映像では残っていないと思います。あの場で何があったのか、私は見てきたわけではありませんが、たくさんの「行方不明者」の数に、決して平和的な解決が為されたとは思えません。
あのことを知らない世代も増えてきたことでしょう。自国で何があったか、かの国では国内ではネット検索も出来ません。
せめて「事件」があったことを知っている一人として、風化させたくないな、と思っています。続きを読む
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