文維くんのこいびと

 しばらくすると、煜瑾はやっと上品な子供らしい服装を整えて、文維の前に戻って来た。

「本当に『唐家の王子様』ね。こんなことなら、もっと可愛いお洋服をいっぱい買って来たら良かったわ~」

 若々しく美しい恭安楽と、無邪気に手を引かれた小さな煜瑾は、まるで本当の親子のようだ。カワイイ坊やの世話に、恭安楽はウキウキと楽しそうだ。

「ねえ、文維。もしもこのまま煜瑾ちゃんが元の姿に戻れなかったら、私がこの子を育てますからね」

 包夫人はそう言ってしゃがみ込み、くすぐったそうに笑う煜瑾を抱き締めると愛しそうに頬ずりをした。

「おかあしゃま…」

 煜瑾もまた、嬉しそうに義母に縋りついた。
 ちょっと取り残された気になった文維は、物欲しそうに煜瑾の柔らかそうな頬を見つめる。

「煜瑾ちゃん。お母さまに正直にお話してちょうだい。文維お兄ちゃまに何をされたの?」
「文維お兄ちゃま?」

 煜瑾は大きな瞳を見開いて、楽しそうに文維の顔を見上げ、クスクス笑いだした。

「文維お兄ちゃまは、寝る前に…」
「煜瑾!」

 無邪気な煜瑾が何を言いだすかと、文維は慌てて止めようとした。

「寝る前は…、大人の体だったのね、煜瑾?」
「はい。おかあしゃま」
「と、いうことは…寝ている間に文維が…」

 一方的に文維が悪いと決めつけている様子の実母に、さすがの文維もムッとした態度を隠さない。

「言っておきますが、私は大切な煜瑾をこんな目に遭わせるはずがありません」
「本当に?」

 露骨に疑わしい顔をする母に、文維は我慢できずに奪うように煜瑾の手を取った。





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