文維くんのこいびと

 煜瑾の方は、子供の姿で泣きじゃくりながら、使う言葉はやはり大人のままだ。本当に外見だけが変わったのだと文維はますます困惑する。

 腕の中の小さすぎる煜瑾だが、いつもとは違う肌触りや匂いに、文維は胸がざわついた。
 文維は煜瑾をしっかりと抱き寄せ、額に、頬に、そして唇に、そっと口付けた。

 そして耳元で小さく囁いた。

「愛してる…、煜瑾。どんな姿になっても、君が好きです」

 その言葉に、煜瑾はスッと泣き止み、端整な文維の顔を見上げた。

「文維…。その言葉はとっても嬉しいのですが、今の私のこの姿を考えると…、なんというか…その…倫理的に問題が…あるように思うのですが?」

 真剣な顔で訴えかける煜瑾に、文維は慌てて言葉を続けた。

「いや、そういう意味ではなく。私が言いたかったのは、君を愛しているので、必ず元の姿に戻します、と言いたかっただけで…。そんな…邪な欲望は…ほとんど抱いていません」
(ほとんど?)

 煜瑾は少し引っ掛かったのだが、文維がこんなに幼い体に乱暴なことをするはずが無いと確信を持っていたため、安心して身を任せていた。

「しかし…。なぜこんな姿になったのでしょう?」

 明け方からネットや文献を調べ倒していた科学者の文維だったが、それこそSFやファンタジーのようなフィクションの文芸作品でもない限り、このような人体の変化の実例は1件たりとも見つからない。

「煜瑾、昨晩、私の知らないうちに何か食べたり、飲んだりしませんでしたか?」

 困り果てた文維が外的な要因を探ろうと問い質すと、煜瑾はムッとした表情になる。

「失礼です、文維!私が文維に隠れてコソコソと飲食すると思っているのですか!」

 今、泣いていたと思った子が、今度はプンプンと怒り出した。
 子供の扱いに慣れていない文維は、本当に心の底から困り果てた。




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