文維くんのこいびと

 煜瑾が目覚めると、ベッドサイドの時計はすでに8時を回っていた。

「ん…。…文維?」

 ゆっくりと身を起こして、周囲を見回し、煜瑾は自分の身に起きたことを思い出した。

(どうして、私が子供の姿に?)

 不安になって、煜瑾は自分を両腕で抱くようにした。それでも心細く、感情が溢れてくるような気がした。

(な、何?私…)

 自分の感情がコントロールできず、煜瑾は涙が溢れてくるのを止められなかった。

(いやだ…、私…、一体…)

 もう胸を締め付けるような感情を、煜瑾は止められない。

「あ~ん、あ~ん。ぶんい~、ぶんい~」

 自分でもどうしようもなく、煜瑾は声を上げて泣き出した。
 その声が、書斎で調べ物をしていた文維の耳にも届いたのか、慌てて寝室へと駆け付けた。

「どうしました、煜瑾!」

 ベッドの上で、一糸まとうこともなく、ちょこんと座り込んで泣いていた煜瑾に、文維は一瞬動けなかった。それはまごうこと無い、羽根を失った天使の姿だった。

「文維~、助けてくだしゃい~」

 悲しそうに泣きじゃくる煜瑾に、ハッとして、文維は駆け寄ってギュッと抱きすくめる。

「どうしました、煜瑾?」
「わ、分からないのでしゅ~。な、なんだか、子供のように、感情が…、抑制が効かないのでしゅ~」
(いや、どう見ても「子供」だから…)

 内心、見た目をツッコミながら、文維は稚い煜瑾を慰めようと、優しく背中を撫でた。



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