「そうね、煜瑾ちゃん。お母さまも一緒に行きますよ」
「本当？本当でしゅか？」

　泣きすぎて赤くなった目で、煜瑾は思い詰めたような、不安が拭いきれない目で包夫人を見た。

「お母さまは、煜瑾ちゃんに嘘はつきませんよ」
「おかあしゃま～」

　しっかりと抱き合う2人に、文維は苦い顔をしながらも、強い家族の絆を感じていた。

「いいですか、煜瑾ちゃん。お顔を洗って、ジュースを少し飲んだら、お母さまのお膝に座って、文維お兄ちゃまのお車でドライブですよ」
「ドライブ？」

　煜瑾の表情がパッと明るくなり、文維を振り返った。
　それに応えるように文維も頷く。

「そうですよ。お母さまも一緒に、みんなで車に乗って、唐家へ行きましょう」
「は～い」

　煜瑾は大喜びで包夫人の手に引かれ、涙まみれの顔を洗うためにバスルームに向かった。

　ジュースと言いながら、恭安楽が冷凍庫に煜瑾が大好きなイチゴのアイスクリームを見つけ、リンゴジュースを少しと、アイスクリームを数匙食べて、煜瑾のご機嫌はすっかり良くなった。

　今度は文維の車でお出掛けだと大はしゃぎだった。

「おかあしゃま～、早く～はやく～」

　煜瑾は包夫人の手を引いて、迷うことなく文維の車のリアシートに向かった。
　そんな些細なことが、文維の胸を苦しめた。煜瑾が文維の車に乗る時は、必ず助手席に乗る。少しでも文維の傍に居たいという、健気な煜瑾の思いが込められていた。
　そんな煜瑾が、当然のように後部座席に乗り込み、嬉しそうに包夫人の膝に乗った。

「うれしいでしゅ～。文維おにいちゃまのお車で～、おかあしゃまと一緒に～、煜瓔お兄ちゃまとお食事～」

　まるで歌うように、煜瑾は声を上げる。そんなご機嫌のよさに、恭安楽も楽しそうで、文維は複雑だった。