第1章 華麗なるマジックショー
煜瑾は、小敏に勧められたプチフールを摘まみながら、イチゴのフレーバーのアイスティーを楽しんでいた。
「美味しいです」
そんな満ち足りた表情の恋人の美貌を堪能しながら、文維はシャンパンを少しずつ飲んでいた。
「文維先生、今日は招待をお受けいただいて、ありがとうございます」
声を掛けてきたのは、スラリと背が高く、キリリといかにもやり手っぽい女性だった。煜瑾の第一印象は、飛行機のCAさんのようなキビキビした人だな、というものだった。
「ああ、これは王淑芬さん」
文維は、彼女に気付くと多くの人を魅了するセクシーかつチャーミングな笑顔で手を差し出し、2人は握手を交わす。そんなプレーボーイ然とした恋人に、純真な煜瑾は嫉妬するよりもその魅力に陶然となってしまう。
「煜瑾、こちらは王淑芬さん。今回のショーをセッティングされた、有能なプロモーターさんだよ。王さん、今夜はご招待ありがとうございます」
やはり、有能な女性だったのだ、と自分の第一印象が間違っていなかったことに、煜瑾は微笑み、自分も手を差し出した。彼女は濃紺のスーツに白いブラウス、タイトな膝下丈のスカートを身に着けており、髪は夜会巻き風に高く結い上げていた。そのシルエットが確かにキャビンアテンダントに似ている。
「初めまして、唐煜瑾です」
「存じていますわ。文維先生の恋人さんですって?」
「え!」
訳知り顔の笑顔を受けた煜瑾は、戸惑ってしまう。
文維との関係を恥じる気持ちは、煜瑾には微塵も無い。だが、世の中にはそれを否定的に見る人が居ることは、充分に理解している。それに生来の人見知りもあり、初対面の人が苦手な煜瑾だった。
それなのに、この女性は煜瑾が同性の文維の恋人であることに、全く抵抗が無いような態度だ。芸能のプロモーターとして国内外を飛び回るような女性は、グローバルな視点を持っているからだろうか。
「唐家のご次男でしょう?上海で知らぬ者はおりませんわよ」
愛想はいいが、冷静沈着な王淑芬の目が笑っていないことに気付いた煜瑾は、彼女の一言に全てを悟った。
「お兄さまには、お世話になっています」
そう言った王淑芬に、煜瑾は鷹揚に微笑みかけた。
「では、文維先生。今夜はぜひショーを楽しんで。明日以降、またショーの感想などお願いしますね」
「分かりました」
あちこちに挨拶をする必要があるらしく、有能な王淑芬は慌ただしく招待客の間を次々と回って行った。
「感じの良い方ですね」
煜瑾がそう言うと、文維が笑った。
「私の恋人ほどではありませんけどね」
「もう、文維ったら…」
最愛の人が可愛らし過ぎて、ついついからかってしまう文維だが、そこに有り余る愛情を感じる煜瑾だった。
その時、ロビーの入口の方でどよめきが起きた。
何事かと文維と煜瑾も反射的にそちらに振り返る。
「叔母さまだよ!」
いつの間に戻って来たのか、アイスクリームを手にした小敏が、面白がっている様子で煜瑾の耳元で囁いた。
「おかあさま?」
煜瑾は文維の両親を、自分の実の両親のように愛している。そんな大好きなおとうさま、おかあさまがその場の視線を集めているとはどういうことなのか、気になってじっとそちらを注目してしまう。
やがて、人々をかき分けるように現れた包夫妻に、純粋な煜瑾だけでなく、文維や小敏も息を飲んだ。
「ああ、ここにいたのね、あなたたち」
文維たちを見つけてホッとしたように、明るく笑いながら腕を組んだ包夫妻が近付いてきた。
「美味しいです」
そんな満ち足りた表情の恋人の美貌を堪能しながら、文維はシャンパンを少しずつ飲んでいた。
「文維先生、今日は招待をお受けいただいて、ありがとうございます」
声を掛けてきたのは、スラリと背が高く、キリリといかにもやり手っぽい女性だった。煜瑾の第一印象は、飛行機のCAさんのようなキビキビした人だな、というものだった。
「ああ、これは王淑芬さん」
文維は、彼女に気付くと多くの人を魅了するセクシーかつチャーミングな笑顔で手を差し出し、2人は握手を交わす。そんなプレーボーイ然とした恋人に、純真な煜瑾は嫉妬するよりもその魅力に陶然となってしまう。
「煜瑾、こちらは王淑芬さん。今回のショーをセッティングされた、有能なプロモーターさんだよ。王さん、今夜はご招待ありがとうございます」
やはり、有能な女性だったのだ、と自分の第一印象が間違っていなかったことに、煜瑾は微笑み、自分も手を差し出した。彼女は濃紺のスーツに白いブラウス、タイトな膝下丈のスカートを身に着けており、髪は夜会巻き風に高く結い上げていた。そのシルエットが確かにキャビンアテンダントに似ている。
「初めまして、唐煜瑾です」
「存じていますわ。文維先生の恋人さんですって?」
「え!」
訳知り顔の笑顔を受けた煜瑾は、戸惑ってしまう。
文維との関係を恥じる気持ちは、煜瑾には微塵も無い。だが、世の中にはそれを否定的に見る人が居ることは、充分に理解している。それに生来の人見知りもあり、初対面の人が苦手な煜瑾だった。
それなのに、この女性は煜瑾が同性の文維の恋人であることに、全く抵抗が無いような態度だ。芸能のプロモーターとして国内外を飛び回るような女性は、グローバルな視点を持っているからだろうか。
「唐家のご次男でしょう?上海で知らぬ者はおりませんわよ」
愛想はいいが、冷静沈着な王淑芬の目が笑っていないことに気付いた煜瑾は、彼女の一言に全てを悟った。
「お兄さまには、お世話になっています」
そう言った王淑芬に、煜瑾は鷹揚に微笑みかけた。
「では、文維先生。今夜はぜひショーを楽しんで。明日以降、またショーの感想などお願いしますね」
「分かりました」
あちこちに挨拶をする必要があるらしく、有能な王淑芬は慌ただしく招待客の間を次々と回って行った。
「感じの良い方ですね」
煜瑾がそう言うと、文維が笑った。
「私の恋人ほどではありませんけどね」
「もう、文維ったら…」
最愛の人が可愛らし過ぎて、ついついからかってしまう文維だが、そこに有り余る愛情を感じる煜瑾だった。
その時、ロビーの入口の方でどよめきが起きた。
何事かと文維と煜瑾も反射的にそちらに振り返る。
「叔母さまだよ!」
いつの間に戻って来たのか、アイスクリームを手にした小敏が、面白がっている様子で煜瑾の耳元で囁いた。
「おかあさま?」
煜瑾は文維の両親を、自分の実の両親のように愛している。そんな大好きなおとうさま、おかあさまがその場の視線を集めているとはどういうことなのか、気になってじっとそちらを注目してしまう。
やがて、人々をかき分けるように現れた包夫妻に、純粋な煜瑾だけでなく、文維や小敏も息を飲んだ。
「ああ、ここにいたのね、あなたたち」
文維たちを見つけてホッとしたように、明るく笑いながら腕を組んだ包夫妻が近付いてきた。
