「あの～、文維？」
「なんですか、煜瑾」

文維王子のお城で、王子に相応しい天蓋付の大きなベッドの上で、文維の腕の中に納まって微睡んでいた煜瑾が、ふいにあどけない澄んだ瞳で愛しい人を見上げた。

「どうして、私が森の中にいることを知っていたのですか？」

煜瑾の屈託の無い眼差しを、眩しそうに、そして愛しそうに見返して文維は穏やかに微笑んだ。

「それは、この城に住む魔女が教えてくれたのですよ」

イタズラっぽく笑う文維をよそに、煜瑾は驚いて、ただでさえ大きくキラキラした目をさらに大きく見開いた。

「ま、魔女、ですか？」

キョトンとした煜瑾は、清純で、稚くて、文維には胸が焦がれるほど愛おしい。

「ええ。魔女ですよ。しかし、怖がることはありません。この城の魔女は、良い魔女、白い魔女です。人を助ける魔女ですよ」

文維の言葉に煜瑾はホッとした様子でニッコリした。

「彼女は魔女であり、この城のお后様であり、私の母でもあるんです」
「文維の…お母さま？」

思わぬ真相に驚きながらも、煜瑾は嬉しそうに目を輝かせた。

「ええ。私の母ということは、煜瑾にとっても『お母さま』ですよ」

文維の言葉に、煜瑾は戸惑いながらも喜びを隠せない様子で、花のように可憐で美しい笑顔を浮かべるのだった。

「お母さま…♡」