白雪姫
「そして、白雪姫と王子さまは、いつまでも幸せに暮らしました…。めでたし、めでたし」
ねえやの胡娘 がそこまで読んで絵本を閉じると、幼い煜瑾 は、ホッとしたように息を継いだ。そして、楽しそうに、その印象的な大きな黒い瞳をキラキラさせてねえやに話しかけた。
「あのね、煜瑾ね、とってもドキドキしたのでしゅ。しらゆきひめが、知らない人からおリンゴをもらったので、食べちゃダメ~って思ったのでしゅ。ちょっとだけ、怖かったのでしゅよ!」
素直で純真な煜瑾の感想に、若いねえやの胡娘も目を細める。
「そうですね。知らない人から食べる物を貰うのは、良くないことですからね。それに最近は、知っている人から貰った物でも、油断なりませんよ。アレルギーでも出たら困りますし」
真面目に答えたねえやに、煜瑾も真剣な眼差しで受け止め、大きく頷いた。
「いいですか、煜瑾さま。知らない人からは、食べ物に限らず、どんなものでもご自分で受け取ってはいけませんよ。貰ってもいいのは、私か、茅 執事、煜瓔 お兄さまが受け取って良いと言ったものか、代わりに大人が受け取ったものだけですよ。特に食べ物は気を付けて下さいね」
名家の大切な「至宝」とされる幼い唐煜瑾 の身辺は、胡娘はじめ唐家の使用人全員が見守っている。
外出時は、決して1人にすることなく、傍には兄の唐煜瓔か、唐家自慢の有能な茅執事か、胡娘自身が付き添うことになっている。
そんな煜瑾であっても、どこでどんな人間と接することになるか分からないからと、身を守るための教育は早くから行われていた。
「はい!」
大好きなねえやの教えに、煜瑾はハキハキした返事をした。
「まあ、なんて良いお返事なんでしょうか!煜瑾さまは、本当にお利口さんですね。こんなにお利口さんな煜瑾さまなら、きっと煜瓔お兄さまもお喜びになりますよ」
胡娘が手放しで褒めると、煜瑾は嬉しそうに、それでも少し恥ずかしそうにしながら答えた。
「あのね、煜瑾ね、『お利口しゃん』って言われるの、大しゅきなの」
子供らしい純粋な意見に、胡娘も心から嬉しそうに微笑んだ。
「まあ、良かった!」
「あのね、それでね、煜瑾、考えたの。どうして『お利口しゃん』って言われるとうれしいのかなって」
これほどに幼い煜瑾だが、同じ年ごろの子たちに比べても、聡明で、思考も深い。見た目も美しく、純真で、賢い煜瑾は誰からも愛される天使なのだ。
「煜瑾が『お利口しゃん』になると、煜瓔お兄さまがよろこんでくだしゃるの。煜瑾、煜瓔お兄しゃまがよろこんでくだしゃると、とってもうれしいのでしゅ」
ニコニコと幸せそうに笑う煜瑾が愛らしくて、胡娘は思わず小さい体をギュッと抱き寄せた。
「素晴らしいですわ、煜瑾さま。お兄さまが喜んでくださるのが嬉しいだなんて。なんて思いやりのあるお子様なんでしょう」
温かく、優しい胡娘の腕の中で、煜瑾は満足げにぎゅっと抱き付いて甘えた。
「煜瑾はねえ~。煜瓔お兄しゃまが大しゅきなの~」
満ち足りた煜瑾の様子に、胡娘もこの天使に仕えるために選ばれた自分を誇りに思うのだった。
ねえやの
「あのね、煜瑾ね、とってもドキドキしたのでしゅ。しらゆきひめが、知らない人からおリンゴをもらったので、食べちゃダメ~って思ったのでしゅ。ちょっとだけ、怖かったのでしゅよ!」
素直で純真な煜瑾の感想に、若いねえやの胡娘も目を細める。
「そうですね。知らない人から食べる物を貰うのは、良くないことですからね。それに最近は、知っている人から貰った物でも、油断なりませんよ。アレルギーでも出たら困りますし」
真面目に答えたねえやに、煜瑾も真剣な眼差しで受け止め、大きく頷いた。
「いいですか、煜瑾さま。知らない人からは、食べ物に限らず、どんなものでもご自分で受け取ってはいけませんよ。貰ってもいいのは、私か、
名家の大切な「至宝」とされる幼い
外出時は、決して1人にすることなく、傍には兄の唐煜瓔か、唐家自慢の有能な茅執事か、胡娘自身が付き添うことになっている。
そんな煜瑾であっても、どこでどんな人間と接することになるか分からないからと、身を守るための教育は早くから行われていた。
「はい!」
大好きなねえやの教えに、煜瑾はハキハキした返事をした。
「まあ、なんて良いお返事なんでしょうか!煜瑾さまは、本当にお利口さんですね。こんなにお利口さんな煜瑾さまなら、きっと煜瓔お兄さまもお喜びになりますよ」
胡娘が手放しで褒めると、煜瑾は嬉しそうに、それでも少し恥ずかしそうにしながら答えた。
「あのね、煜瑾ね、『お利口しゃん』って言われるの、大しゅきなの」
子供らしい純粋な意見に、胡娘も心から嬉しそうに微笑んだ。
「まあ、良かった!」
「あのね、それでね、煜瑾、考えたの。どうして『お利口しゃん』って言われるとうれしいのかなって」
これほどに幼い煜瑾だが、同じ年ごろの子たちに比べても、聡明で、思考も深い。見た目も美しく、純真で、賢い煜瑾は誰からも愛される天使なのだ。
「煜瑾が『お利口しゃん』になると、煜瓔お兄さまがよろこんでくだしゃるの。煜瑾、煜瓔お兄しゃまがよろこんでくだしゃると、とってもうれしいのでしゅ」
ニコニコと幸せそうに笑う煜瑾が愛らしくて、胡娘は思わず小さい体をギュッと抱き寄せた。
「素晴らしいですわ、煜瑾さま。お兄さまが喜んでくださるのが嬉しいだなんて。なんて思いやりのあるお子様なんでしょう」
温かく、優しい胡娘の腕の中で、煜瑾は満足げにぎゅっと抱き付いて甘えた。
「煜瑾はねえ~。煜瓔お兄しゃまが大しゅきなの~」
満ち足りた煜瑾の様子に、胡娘もこの天使に仕えるために選ばれた自分を誇りに思うのだった。
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