様子が変わった煜瑾に気付いて、包伯言は手を止めた。

「どうしたね、煜瑾？」

　お父さまに声を掛けられても、煜瑾は、少し悲しい顔をしていた。
　楽しそうに頬張っていたエビ団子を口に運ぶ手を止めて、お父さまに何か言いたそうにしている。

「エビの殻でも入っていたのかね？」
「違うのでしゅ…」

　小さいながらも煜瑾は、何やら大いに胸を痛めているようだった。

「あのね、おとうしゃま…。このエビのお団子は、文維おにいちゃまも、おしゅきなのでしゅ…」

　包伯言は、ようやく煜瑾の悩みに気付いた。

「そうか、煜瑾はこのエビ団子を、文維と一緒に食べたいんだね？」

　その言葉に、煜瑾は寂しそうな顔のまま、大きく頷いた。そんな素直で純真な煜瑾に、包伯言は優しい笑顔で囁いた。

「煜瑾は…、文維のことが大好きなんだね」

　とても賢いお父さまは、穏やかで落ち着いた様子で、煜瑾の言いたいことをすぐに分かって下さった。煜瑾はそれが嬉しくて、思わずお父さまに微笑みかける。

「そうなのでしゅ。煜瑾は、文維おにいちゃまが大しゅきなのでしゅ。文維おにいちゃまのことを想うと、お胸がドキドキして、フワフワして、嬉しくて楽しくなるのでしゅ」

　しかし、キラキラと輝くような笑みを浮かべていた煜瑾の美貌が、ふと曇る。

「でも…時々、文維おにいちゃまのことで、とってもお胸が痛くなることがあるのでしゅ…。その時は、痛くて、悲しくて、苦しくて、涙が出てしまうのでしゅ…」

　お父さまは、煜瑾をソッと抱き締めて、その素直で柔らかい髪を何度も撫でて下さった。その大きな手が、文維お兄さまと似ていて、煜瑾は急に文維お兄さまに会いたくなる。

　お父さまは、とっても温柔で、優しくて大好きなのに、まるで物足りないように煜瑾は今すぐに文維お兄さまに会いたくなってしまう。
　お兄さまのことを思い浮かべただけでワクワクするのに、その一瞬あとにはお兄さまがここにいらっしゃらないことが心細くて、悲しくて、ギュッと胸が痛くなる。
　その痛みがあまりに苦しくて心配になり、煜瑾はお父さまに真剣に訴えかけた。

「おとうしゃま？煜瑾は、びょーきなのでしゅか？煜瑾は、文維おにいちゃまのことが、大しゅきなだけなのに…。フワフワした気持ちになったり、悲しい気持ちになったり、涙が出たりしゅるのは、煜瑾は病気なのでしゅか？」

　煜瑾は不安でいっぱいになり、悲しくなって包伯言の胸に縋った。そんな純粋な煜瑾を抱き止め、お父さまは静かに背中を撫でながらお話を始めて下さった。