おとうさまといっしょ

「ふあ~しゅてき~」

 煜瑾は、包伯言に抱っこされたまま、テーブルに並べられた料理を見渡して思わず声を上げた。

「ははは。どうだね、煜瑾のお気に召したかね?」

 自身も嬉しそうに笑いながら、包伯言は煜瑾をわざわざ用意した子供用の椅子に座らせた。

「全部、煜瑾のお気に召したのでしゅ!おとうしゃま~。煜瑾は、早く召し上がりたいのでしゅ~」
「そうだね、冷めないうちにいただこう」

 煜瑾は満面の笑みでお箸を取り、お父さまは、お碗に煜瑾の大好きな紅焼肉を入れて手渡した。

「ありがとうごじゃいましゅ、おとうしゃま」
「どういたしまして。さあ、早く召し上がれ」
「は~い」

 明るく元気な良いお返事をして、煜瑾は少し熱い、甘辛く煮つけた骨付き肉にフーフーと息を掛け、お箸でつついた。柔らかく煮込まれた肉は、ホロリと骨から外れる。柔らかくて食べやすい紅焼肉が大好きな煜瑾は、大きなお口を開けてパクリと食べた。そんな無邪気な幼子を、包伯言も愛しそうに見つめていた。

「あのね~、おとうしゃま」
「何だい、煜瑾?」

 楽しそうにウキウキしている煜瑾のために、次々と料理を取り分けていた包伯言が手を止めて、煜瑾の天使の笑顔を覗き込んだ。

「煜瑾は~、おとうしゃまの紅焼肉がいちばんしゅき!…楊シェフのよりも、でしゅよ」

 後半を、誰も居ないというのに小さな声で言って、煜瑾はクスクスと笑った。そんな可愛らしい茶目っ気ぶりが、包伯言には愛妻の恭安楽に似ているような、不思議な気持ちになった。

「ほら、ご覧?このタンフールーは、サンザシだけではなくて、パイナップルに、キウイに、リンゴに、イチゴに、バナナ、メロンに梨だ。全部違う果物だよ」
「わ~本当に、煜瑾のしゅきなものばっかりでしゅ~」

 食事の途中で甘いものなど、お母さまである恭安楽であれば、上手に気を逸らして食べさせないものを、煜瑾に甘いお父さまは先に渡してしまう。

「うふふ。とっても美味しいでしゅね~」

 ご機嫌な煜瑾に、お父さまもご満悦だった。
 モグモグとお口を動かしながらも、煜瑾はテーブルに並んだ他のお料理にも目移りしていた。

「あ、おとうしゃま!煜瑾は、エビ団子も食べたいでしゅ!」
「ああ、いいとも」

 そう言ってお父さまは新しいお碗に、海老をすりつぶしたお団子をトマトソースで煮込んだものを入れた。

「さあ、どうぞ」

 煜瑾は満足げにそれを受け取りながら、ふと何かを思い出したかのようにお父さまの温厚で、理知的なお顔をジッと見つめた。


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