おかあさまといっしょ
だが次の瞬間、煜瑾の小さな胸の心配を吹き飛ばすように、楊シェフは豪快に笑った。
「そんなことでしたか!賢い煜瑾さまなら、いつか分かって下さると思っていましたよ。これからも、煜瑾さまが食べやすいように緑のお野菜を出しますから、しっかり召し上がって下さいね」
楊シェフの笑顔に、煜瑾はホッとして、隣にいるお母さまを見上げた。お母さまは、(ね、やっぱりそうでしょう?)とでも言うように黙って頷いた。
その様子に、楊シェフは良い事を思いついたように煜瑾に言った。
「さっそく今日のオヤツは、煜瑾さまの好きな、桃のジェラートにしましょうね」
「えぇ!桃のじぇらーと?」
煜瑾が目を輝かせると、それを見た楊シェフは、何も言わずに後ろに控えるパティシエ担当に合図を送った。
長年、楊シェフの下で修業しているパティシエも心得たもので、何も命じられなくとも、急いで冷蔵庫から桃を取り出し、素早くひと口大に切ると楊シェフに差し出した。
「ほら、これがジェラートの素になる桃ですよ」
楊シェフはそう言うと、小さなピックで桃を刺し、煜瑾の口元に運んだ。
人を疑うことを知らない、キレイな心の煜瑾は、ためらうことなく、あ~んと大きく口を開いた。そこに良く熟した、甘い香りの桃が運ばれる。
ギュッとひと口噛み締めると、煜瑾の小さなお口の中いっぱいに新鮮で甘くジューシーな桃の味が広がった。
「ん~」
煜瑾は思わず身を震えるようにして、そのゴージャスな美味しさを楽しんだ。美味しくて、嬉しくて、煜瑾はまだお口をモグモグさせながら幸せそうに微笑んでいる。
その笑顔がまさに天使にしかみえず、恭安楽も若々しい美貌に笑顔を浮かべていた。
そんな聖母子にしか見えない清純で美しい2人に、楊シェフも優しい気持ちになった。
「はい、奥様も」
「あら、いいの?」
楊シェフも茶目っ気たっぷりな恭安楽をよく知るだけに、煜瑾と同じく桃を差し出す。それを少女のように無邪気にパクリと食べて、恭安楽も目を見張った。
「まあ、なんて濃厚で甘い、美味しい桃なんでしょう。ジェラートにしなくても、このままでも十分に美味しいわ」
恭安楽はちょっと物足りなさそうに、桃の残りを見ていたが、煜瑾がジェラートを楽しみにしているのを思い出して、慌ててそちらを見た。
煜瑾は、お母さまの様子には気付かなかったようで、嬉しそうにギュッと楊シェフにしがみ付くと、煜瑾なりに最大の賛辞を贈った。
「ありがとう、楊シェフ。おかあしゃまと、おにいしゃまたちと、胡娘の次に大しゅき!」
煜瑾の言葉に、自分の微妙な順位を知って複雑な心境ながらも、楊シェフは困ったような笑みを浮かべていた。
「さあ、煜瑾さま。あちらでお好きなことをしながら、ジェラートが出来上がるのを待っていましょうね」
「は~い!」
大好きなねえやに言われて、お母さまに手を引かれ、何度も振り返って楊シェフたちに手を振りながら煜瑾は厨房を後にした。
「そんなことでしたか!賢い煜瑾さまなら、いつか分かって下さると思っていましたよ。これからも、煜瑾さまが食べやすいように緑のお野菜を出しますから、しっかり召し上がって下さいね」
楊シェフの笑顔に、煜瑾はホッとして、隣にいるお母さまを見上げた。お母さまは、(ね、やっぱりそうでしょう?)とでも言うように黙って頷いた。
その様子に、楊シェフは良い事を思いついたように煜瑾に言った。
「さっそく今日のオヤツは、煜瑾さまの好きな、桃のジェラートにしましょうね」
「えぇ!桃のじぇらーと?」
煜瑾が目を輝かせると、それを見た楊シェフは、何も言わずに後ろに控えるパティシエ担当に合図を送った。
長年、楊シェフの下で修業しているパティシエも心得たもので、何も命じられなくとも、急いで冷蔵庫から桃を取り出し、素早くひと口大に切ると楊シェフに差し出した。
「ほら、これがジェラートの素になる桃ですよ」
楊シェフはそう言うと、小さなピックで桃を刺し、煜瑾の口元に運んだ。
人を疑うことを知らない、キレイな心の煜瑾は、ためらうことなく、あ~んと大きく口を開いた。そこに良く熟した、甘い香りの桃が運ばれる。
ギュッとひと口噛み締めると、煜瑾の小さなお口の中いっぱいに新鮮で甘くジューシーな桃の味が広がった。
「ん~」
煜瑾は思わず身を震えるようにして、そのゴージャスな美味しさを楽しんだ。美味しくて、嬉しくて、煜瑾はまだお口をモグモグさせながら幸せそうに微笑んでいる。
その笑顔がまさに天使にしかみえず、恭安楽も若々しい美貌に笑顔を浮かべていた。
そんな聖母子にしか見えない清純で美しい2人に、楊シェフも優しい気持ちになった。
「はい、奥様も」
「あら、いいの?」
楊シェフも茶目っ気たっぷりな恭安楽をよく知るだけに、煜瑾と同じく桃を差し出す。それを少女のように無邪気にパクリと食べて、恭安楽も目を見張った。
「まあ、なんて濃厚で甘い、美味しい桃なんでしょう。ジェラートにしなくても、このままでも十分に美味しいわ」
恭安楽はちょっと物足りなさそうに、桃の残りを見ていたが、煜瑾がジェラートを楽しみにしているのを思い出して、慌ててそちらを見た。
煜瑾は、お母さまの様子には気付かなかったようで、嬉しそうにギュッと楊シェフにしがみ付くと、煜瑾なりに最大の賛辞を贈った。
「ありがとう、楊シェフ。おかあしゃまと、おにいしゃまたちと、胡娘の次に大しゅき!」
煜瑾の言葉に、自分の微妙な順位を知って複雑な心境ながらも、楊シェフは困ったような笑みを浮かべていた。
「さあ、煜瑾さま。あちらでお好きなことをしながら、ジェラートが出来上がるのを待っていましょうね」
「は~い!」
大好きなねえやに言われて、お母さまに手を引かれ、何度も振り返って楊シェフたちに手を振りながら煜瑾は厨房を後にした。