ふたたび、文維くんのこいびと
「さあ、玄紀ちゃんもこちらへいらっしゃい。みんなと一緒にサンドイッチをいただきましょう。文維お兄さまがすぐにバナナミルクを持って来て下さいますからね」
「あ、ああ、はい!」
文維は慌てて玄紀を母に任せ、自分はキッチンへと向かった。
その後ろ姿を見送り、恭安楽は小敏をギュっと抱き寄せた。
「小敏も、いつまでも怒っていないで、煜瑾ちゃんにゴメンなさいって言ってちょうだい」
「…やだ…。ボク、間違ってない」
俯いて、誰とも目を合わせようとせずに、小敏はまだそう言って、叔母を困らせる。
頑なな小敏に、恭安楽も苦笑するしかなかった。
息子を伸びやかに育てたいという義兄・羽厳の意向もあり、しつけは厳しくしながらも、素直に真っ直ぐな子に育てて来たつもりの恭安楽だが、小敏は少し自分に素直過ぎて頑固で直情的なところがあった。
対して煜瑾は、これほど幼い身でありながら、自制することを知っており、自己表現がヘタで、我慢することが多く、苦しい思いをすることも多かったのだろうと思う。
「間違っていないなら、煜瑾ちゃんを泣かせてもいいの?」
「だって!」
言い返そうとして、小敏はチラリと煜瑾の方を見た。
煜瑾は悲しそうな顔をして、しっかりと恭安楽の服を掴み、これ以上泣くまいとして唇を噛んで我慢している。
その姿が、幼心にも痛々しいと、そして艶めかしいと小敏は感じたのかもしれない。
「…ゴメン…なさい…」
「まあ、小敏!よく言えましたね。なんてお利口さんなのかしら」
渋々ながらの小敏の謝罪であったが、恭安楽は大げさなほどにそれを褒めた。
「さあ、煜瑾ちゃんはなんて言えばいいのかしら」
恭安楽は、小敏をギュッと抱き締めながらも、優しく煜瑾の顔を覗き込んだ。
「あの…あの…」
煜瑾は、どうしたらよいのか分からずに、俯いて唇を噛んでしまった。
「さんどーぢー」
その時、ソファの上で大人しくしていた玄紀が大きな声を出した。
文維が、追加のサンドイッチとバナナミルクを運んできたのだ。
「さあ、みんなで仲良くいただきましょう。みんなで一緒にいただくと、1人で食べるより、もっと美味しくなるのですよ」
恭安楽の一言で、その場の雰囲気が少し和み、小敏は叔母の腕の中から飛び出して、テーブルの上に並んだサンドイッチの選定を始める。
玄紀もまた、そんな小敏の真似をしようと身を乗り出すが、ソファの上から落ちそうになり、その危なっかしさに、慌てて文維が手を差し出す。
まだ不安なのか、じっと恭安楽に掴まったまま、文維の方を見ている煜瑾に、恭安楽はそっと背中に手を置き、優しく声を掛けた。
「煜瑾ちゃんは、もういただかなくていいの?」
「ん…。煜瑾は、…おかあしゃまのケーキがいいの」
煜瑾はどこか遠慮がちに、それでもカワイイ我儘を言う。
「ごめんなさいね、今日は、もうケーキは無いの。その代わり、サブレを焼いてきたので、それをいただきましょうか」
煜瑾は恭安楽にベタベタと甘えながら、何も言わずに頷いた。
「あ、ああ、はい!」
文維は慌てて玄紀を母に任せ、自分はキッチンへと向かった。
その後ろ姿を見送り、恭安楽は小敏をギュっと抱き寄せた。
「小敏も、いつまでも怒っていないで、煜瑾ちゃんにゴメンなさいって言ってちょうだい」
「…やだ…。ボク、間違ってない」
俯いて、誰とも目を合わせようとせずに、小敏はまだそう言って、叔母を困らせる。
頑なな小敏に、恭安楽も苦笑するしかなかった。
息子を伸びやかに育てたいという義兄・羽厳の意向もあり、しつけは厳しくしながらも、素直に真っ直ぐな子に育てて来たつもりの恭安楽だが、小敏は少し自分に素直過ぎて頑固で直情的なところがあった。
対して煜瑾は、これほど幼い身でありながら、自制することを知っており、自己表現がヘタで、我慢することが多く、苦しい思いをすることも多かったのだろうと思う。
「間違っていないなら、煜瑾ちゃんを泣かせてもいいの?」
「だって!」
言い返そうとして、小敏はチラリと煜瑾の方を見た。
煜瑾は悲しそうな顔をして、しっかりと恭安楽の服を掴み、これ以上泣くまいとして唇を噛んで我慢している。
その姿が、幼心にも痛々しいと、そして艶めかしいと小敏は感じたのかもしれない。
「…ゴメン…なさい…」
「まあ、小敏!よく言えましたね。なんてお利口さんなのかしら」
渋々ながらの小敏の謝罪であったが、恭安楽は大げさなほどにそれを褒めた。
「さあ、煜瑾ちゃんはなんて言えばいいのかしら」
恭安楽は、小敏をギュッと抱き締めながらも、優しく煜瑾の顔を覗き込んだ。
「あの…あの…」
煜瑾は、どうしたらよいのか分からずに、俯いて唇を噛んでしまった。
「さんどーぢー」
その時、ソファの上で大人しくしていた玄紀が大きな声を出した。
文維が、追加のサンドイッチとバナナミルクを運んできたのだ。
「さあ、みんなで仲良くいただきましょう。みんなで一緒にいただくと、1人で食べるより、もっと美味しくなるのですよ」
恭安楽の一言で、その場の雰囲気が少し和み、小敏は叔母の腕の中から飛び出して、テーブルの上に並んだサンドイッチの選定を始める。
玄紀もまた、そんな小敏の真似をしようと身を乗り出すが、ソファの上から落ちそうになり、その危なっかしさに、慌てて文維が手を差し出す。
まだ不安なのか、じっと恭安楽に掴まったまま、文維の方を見ている煜瑾に、恭安楽はそっと背中に手を置き、優しく声を掛けた。
「煜瑾ちゃんは、もういただかなくていいの?」
「ん…。煜瑾は、…おかあしゃまのケーキがいいの」
煜瑾はどこか遠慮がちに、それでもカワイイ我儘を言う。
「ごめんなさいね、今日は、もうケーキは無いの。その代わり、サブレを焼いてきたので、それをいただきましょうか」
煜瑾は恭安楽にベタベタと甘えながら、何も言わずに頷いた。