ふたたび、文維くんのこいびと
:晩熟(おくて)な煜瑾だったが、ようやく官能に対して、心と体の悦びの何たるかを理解し始めた。最愛の人から、この上なく愛されている…この確信が、心だけでなく体をも満たすのだと、煜瑾は文維の手によって初めて知ったのだった。
「どうしました?」
恥ずかしそうに俯いている煜瑾に、文維は甘い声で囁きかけ、素早く腕を回して抱き寄せた。
「あ、文維…ダメです…」
「ダメじゃないです。煜瑾だって…、ね?」
「で、でも…」
昨夜の溺れるような快感を思い出し、煜瑾は全身を真っ赤にして恥じらってしまう。
「カワイイ…、私の、煜瑾…」
「文維…」
くすぐるような低く濃艶な声で文維に呼ばれて、煜瑾はウットリとして目を閉じた。そのまま2人の唇が重なり、さらに…。
その時だった。
ピンポ~ン♪
玄関のドアベルが鳴った。
「嘘だろ!誰ですか、こんな朝から!」
しっかりと煜瑾の肩を抱いたまま、邪魔をされた怒りを隠さない文維だったが、煜瑾のほうは、パッと明るく無邪気な笑顔に戻ると、するりと文維の胸の中から抜け出した。
「お母さまたちですよ、きっと!」
文維との甘い時間よりも、嬉しい様子で、煜瑾は玄関へと小走りに消えていく。それを不満そうに見ていた文維だが、ふと気付いた。
(どうして、こんな朝早くからお母さまたちが?)
その答えを見つけるより早く、玄関の方から楽しそうな笑い声が聞こえ、文維は慌ててバスルームへと飛び込んだ。
「まあ、そうなの?文維はまだ寝ているの?」
「いいえ!今、ちゃんと起きて、一緒に朝ご飯を食べるところだったのです」
非難めいた恭安楽に、煜瑾は慌てて愛する人を庇おうとする。そんな健気さが愛らしく、恭安楽は両手に大荷物を持った夫・包伯言と甥の羽小敏を振り返り、ニッコリと笑った。
「文維は、お仕事で疲れていて…」
まだ文維のために申し開きをしようとする煜瑾に、小敏がいつもの人好きのする明るい笑顔で言った。
「分かってるって。煜瑾は、文維を起こしてきてよ。ボクらも朝ご飯がまだなんだ。叔父様が作って下さったから、準備するね」
「今朝は、私も文維の朝ご飯の支度をしたのです…」
煜瑾が遠慮がちに言うと、小敏だけでなく、包教授や恭安楽も笑って頷いた。
「文維は、煜瑾の作ったものを食べればいいさ。私たちは勝手にこんなに早く来たのだから、自分たちで用意したものをいただくよ」
訳知り顔の包教授にそう言われて、煜瑾はホッとしたように微笑んで、急いで寝室へと文維を呼びに行った。
「相変わらず、煜瑾は文維が一途に大好きで、カワイイな~」
「ホント、気難しいところがある文維を、よく理解してくれて、とってもイイ子よね」
小敏と恭安楽は、いつものように煜瑾を褒め、自分の方が煜瑾を好きかの自慢話を楽しそうに始める。それをにこやかに聞きながら、包教授はキッチンに向かった。
そこには、煜瑾が文維に用意したという朝食が並んでいた。
ふんわりした甘い香りのフレンチトーストに、新鮮なブルーベリーが載ったヨーグルト、ゆで卵はまだ殻付きで、調理というにはまだまだ未熟なのは確かだが、名門・唐家の「深窓の王子さま」である煜瑾が、生まれて初めて家事を経験する誠実さと文維への愛情が十分に伝わってきた。
それらに温かい笑みを浮かべた包教授は、決してそこに手を加えることはせず、その隣に場所を作り、自分が用意したお粥や野菜のスープ煮、甘く煮込んだスペアリブなどを並べ始めた。
そこへ愛妻の恭安楽も寄り添い、ようやく手伝いを始める。
「うふふ。煜瑾ちゃんらしい、カワイイ朝ご飯ね」
「ダメだよ、手を出しちゃ」
「え~、わたくしもフレンチトーストが大好きですのに~」
まるで少女のように頬を膨らませ、不満を表す恭安楽が愛らしくて、つい包教授も吹き出してしまう。
「君の分は、私が作りますから。せっかく煜瑾が文維のために作った物を、取り上げるような真似はよしなさい」
「あなたが作ってくださるなら、そちらのほうが、ず~っといいわ」
そう言って屈託なく笑う恭安楽に、この聡明な女性を妻に出来たことを包伯言は幸せに思った。
「どうしました?」
恥ずかしそうに俯いている煜瑾に、文維は甘い声で囁きかけ、素早く腕を回して抱き寄せた。
「あ、文維…ダメです…」
「ダメじゃないです。煜瑾だって…、ね?」
「で、でも…」
昨夜の溺れるような快感を思い出し、煜瑾は全身を真っ赤にして恥じらってしまう。
「カワイイ…、私の、煜瑾…」
「文維…」
くすぐるような低く濃艶な声で文維に呼ばれて、煜瑾はウットリとして目を閉じた。そのまま2人の唇が重なり、さらに…。
その時だった。
ピンポ~ン♪
玄関のドアベルが鳴った。
「嘘だろ!誰ですか、こんな朝から!」
しっかりと煜瑾の肩を抱いたまま、邪魔をされた怒りを隠さない文維だったが、煜瑾のほうは、パッと明るく無邪気な笑顔に戻ると、するりと文維の胸の中から抜け出した。
「お母さまたちですよ、きっと!」
文維との甘い時間よりも、嬉しい様子で、煜瑾は玄関へと小走りに消えていく。それを不満そうに見ていた文維だが、ふと気付いた。
(どうして、こんな朝早くからお母さまたちが?)
その答えを見つけるより早く、玄関の方から楽しそうな笑い声が聞こえ、文維は慌ててバスルームへと飛び込んだ。
「まあ、そうなの?文維はまだ寝ているの?」
「いいえ!今、ちゃんと起きて、一緒に朝ご飯を食べるところだったのです」
非難めいた恭安楽に、煜瑾は慌てて愛する人を庇おうとする。そんな健気さが愛らしく、恭安楽は両手に大荷物を持った夫・包伯言と甥の羽小敏を振り返り、ニッコリと笑った。
「文維は、お仕事で疲れていて…」
まだ文維のために申し開きをしようとする煜瑾に、小敏がいつもの人好きのする明るい笑顔で言った。
「分かってるって。煜瑾は、文維を起こしてきてよ。ボクらも朝ご飯がまだなんだ。叔父様が作って下さったから、準備するね」
「今朝は、私も文維の朝ご飯の支度をしたのです…」
煜瑾が遠慮がちに言うと、小敏だけでなく、包教授や恭安楽も笑って頷いた。
「文維は、煜瑾の作ったものを食べればいいさ。私たちは勝手にこんなに早く来たのだから、自分たちで用意したものをいただくよ」
訳知り顔の包教授にそう言われて、煜瑾はホッとしたように微笑んで、急いで寝室へと文維を呼びに行った。
「相変わらず、煜瑾は文維が一途に大好きで、カワイイな~」
「ホント、気難しいところがある文維を、よく理解してくれて、とってもイイ子よね」
小敏と恭安楽は、いつものように煜瑾を褒め、自分の方が煜瑾を好きかの自慢話を楽しそうに始める。それをにこやかに聞きながら、包教授はキッチンに向かった。
そこには、煜瑾が文維に用意したという朝食が並んでいた。
ふんわりした甘い香りのフレンチトーストに、新鮮なブルーベリーが載ったヨーグルト、ゆで卵はまだ殻付きで、調理というにはまだまだ未熟なのは確かだが、名門・唐家の「深窓の王子さま」である煜瑾が、生まれて初めて家事を経験する誠実さと文維への愛情が十分に伝わってきた。
それらに温かい笑みを浮かべた包教授は、決してそこに手を加えることはせず、その隣に場所を作り、自分が用意したお粥や野菜のスープ煮、甘く煮込んだスペアリブなどを並べ始めた。
そこへ愛妻の恭安楽も寄り添い、ようやく手伝いを始める。
「うふふ。煜瑾ちゃんらしい、カワイイ朝ご飯ね」
「ダメだよ、手を出しちゃ」
「え~、わたくしもフレンチトーストが大好きですのに~」
まるで少女のように頬を膨らませ、不満を表す恭安楽が愛らしくて、つい包教授も吹き出してしまう。
「君の分は、私が作りますから。せっかく煜瑾が文維のために作った物を、取り上げるような真似はよしなさい」
「あなたが作ってくださるなら、そちらのほうが、ず~っといいわ」
そう言って屈託なく笑う恭安楽に、この聡明な女性を妻に出来たことを包伯言は幸せに思った。