ふたたび、文維くんのこいびと
「小敏は…何歳いくつですか?」
思わず文維はそう訊ねた。
そんなトンチンカンな質問をする、かつては神童と呼ばれた息子を、恭安楽は訝し気に見る。本当にこの愛息が過労でおかしくなったのではないかと心配になってきたのだ。
「…文維、あなた本当に疲れているのね。小敏の年齢が、そんな勝手に変わったりするはずがないでしょう?」
「ボクの話をしているの?」
その時、奥の、文維の部屋だったドアが開き、見覚えのある、スラリとした色白の笑顔のチャーミングな従弟が現れた。
その姿の良さと、素直で人の心を鷲掴みにする魅惑的な笑顔が気に入っている恭安楽は、小敏の相変わらずの可愛らしさに救われたように微笑んだ。
「ああ、小敏、ちょうどよかったわ。子供たちのお世話、ありがとう」
「子供たち?」
大人になって現れた小敏に油断していた文維は、この上まだ「子供たち」が存在するのだと知って慌てた。
「いい加減にしてね、文維。それで、小敏、煜瑾ちゃんと玄紀ちゃんは良い子でお昼寝しているの?」
小敏は、一瞬だけ文維の方に視線を送ったが、すぐに叔母の気に入るような笑みを添えて答えた。
「煜瑾も、玄紀も、天使のように眠っているよ」
「や~ん、カワイイからちょっと見てくるわ~」
文維の態度に不満を感じていたせいか、カワイイ物好きの恭安楽は、癒しを求めて煜瑾と玄紀の寝顔を見に行った。
「どういうことなんだ?」
2人きりになった途端、文維は小敏に詰め寄るように切り出した。
「どうって…。夢なんでしょう、コレってば?」
皮肉っぽい笑いを浮かべて小敏が答える。
それはそうだと理解しているはずの文維だが、医師である科学者の頭が整然とした答えを求めて混乱していた。
「これは、煜瑾の夢のはずなんだ…。なのに、何かがおかしい」
「なんで煜瑾の夢なのさ」
さらっと当たり前のように言う小敏に、文維は驚いて目を見張った。
「今、なんて?」
「煜瑾の夢って決めつけることないじゃん」
当然のように言う小敏に、文維は戸惑いしか感じない。
「しかしね、夢の中に他人を巻き込むなどと言うことは、煜瑾しか出来ないんだ」
「なんで?」
「は?なんでって…、つまり前例が…」
真剣な文維を、小敏はあっさりと笑い飛ばした。
「何言ってるんだよ、文維。煜瑾に出来る事なら、他の誰かが出来たって不思議じゃないじゃないか」
「…小敏…?」
改めて考えてみれば、確かに小敏の言うことは正しい。なぜ煜瑾だけにそんな能力があるのか立証されない以上、同じことを他の誰かが引き起こす可能性はゼロではない。
「ホント、文維ってば賢いクセに、煜瑾のこととなると、からっきしだね」
「うるさい…」
文維は文維で、この小敏の状況を瞬時に理解する判断力と思考の柔軟性に舌を巻いている。
「お前、いつから大人に戻ったんだ?さっきまでやんちゃな3歳児だったろう」
文維が先ほどから気になっていたことを確かめようとした。
「いつって…。文維の膝の上で遊んでた時?」
そう言って小敏は、リビングのテーブルの上に、迎春用のお菓子を見つけて手に取った。
文維は、奇しくも自分が小敏が幼い頃ではなく、「オトナ」になった頃を思い出した時に、小敏もまた何かに気付いたと知って驚いた。
「で、気が付いたら、文維の部屋で小さい人たちに囲まれて寝てました、というわけ」
さっそくお菓子を頬張り、さらに手を出す小敏に、この夢が小敏の物ではないかと疑う文維だった。
思わず文維はそう訊ねた。
そんなトンチンカンな質問をする、かつては神童と呼ばれた息子を、恭安楽は訝し気に見る。本当にこの愛息が過労でおかしくなったのではないかと心配になってきたのだ。
「…文維、あなた本当に疲れているのね。小敏の年齢が、そんな勝手に変わったりするはずがないでしょう?」
「ボクの話をしているの?」
その時、奥の、文維の部屋だったドアが開き、見覚えのある、スラリとした色白の笑顔のチャーミングな従弟が現れた。
その姿の良さと、素直で人の心を鷲掴みにする魅惑的な笑顔が気に入っている恭安楽は、小敏の相変わらずの可愛らしさに救われたように微笑んだ。
「ああ、小敏、ちょうどよかったわ。子供たちのお世話、ありがとう」
「子供たち?」
大人になって現れた小敏に油断していた文維は、この上まだ「子供たち」が存在するのだと知って慌てた。
「いい加減にしてね、文維。それで、小敏、煜瑾ちゃんと玄紀ちゃんは良い子でお昼寝しているの?」
小敏は、一瞬だけ文維の方に視線を送ったが、すぐに叔母の気に入るような笑みを添えて答えた。
「煜瑾も、玄紀も、天使のように眠っているよ」
「や~ん、カワイイからちょっと見てくるわ~」
文維の態度に不満を感じていたせいか、カワイイ物好きの恭安楽は、癒しを求めて煜瑾と玄紀の寝顔を見に行った。
「どういうことなんだ?」
2人きりになった途端、文維は小敏に詰め寄るように切り出した。
「どうって…。夢なんでしょう、コレってば?」
皮肉っぽい笑いを浮かべて小敏が答える。
それはそうだと理解しているはずの文維だが、医師である科学者の頭が整然とした答えを求めて混乱していた。
「これは、煜瑾の夢のはずなんだ…。なのに、何かがおかしい」
「なんで煜瑾の夢なのさ」
さらっと当たり前のように言う小敏に、文維は驚いて目を見張った。
「今、なんて?」
「煜瑾の夢って決めつけることないじゃん」
当然のように言う小敏に、文維は戸惑いしか感じない。
「しかしね、夢の中に他人を巻き込むなどと言うことは、煜瑾しか出来ないんだ」
「なんで?」
「は?なんでって…、つまり前例が…」
真剣な文維を、小敏はあっさりと笑い飛ばした。
「何言ってるんだよ、文維。煜瑾に出来る事なら、他の誰かが出来たって不思議じゃないじゃないか」
「…小敏…?」
改めて考えてみれば、確かに小敏の言うことは正しい。なぜ煜瑾だけにそんな能力があるのか立証されない以上、同じことを他の誰かが引き起こす可能性はゼロではない。
「ホント、文維ってば賢いクセに、煜瑾のこととなると、からっきしだね」
「うるさい…」
文維は文維で、この小敏の状況を瞬時に理解する判断力と思考の柔軟性に舌を巻いている。
「お前、いつから大人に戻ったんだ?さっきまでやんちゃな3歳児だったろう」
文維が先ほどから気になっていたことを確かめようとした。
「いつって…。文維の膝の上で遊んでた時?」
そう言って小敏は、リビングのテーブルの上に、迎春用のお菓子を見つけて手に取った。
文維は、奇しくも自分が小敏が幼い頃ではなく、「オトナ」になった頃を思い出した時に、小敏もまた何かに気付いたと知って驚いた。
「で、気が付いたら、文維の部屋で小さい人たちに囲まれて寝てました、というわけ」
さっそくお菓子を頬張り、さらに手を出す小敏に、この夢が小敏の物ではないかと疑う文維だった。