文維くんといっしょ ~秋の京都観光スペシャル~

 その時、煜瑾の肩越しに、小敏は、文維たち5人がホテルのロビーに入って来るのに気付いた。

「煜瑾、ほら…」

 小敏に言われて振り返った煜瑾は、そこに最愛の恋人の姿と認め、まさに輝くような笑顔を浮かべた。

「早かったね」

 言葉少なく言って、文維は煜瑾に近付こうとした。それを小敏が目立たないように妨害する。

「こんなトコで、目立つようなコトはしないでよ」

 小さな声で、注意を促すと、文維はクスリと笑った。

「抱き締めてキスくらいはしたいけど、日本にいたって自制はできるよ」

 低く囁き返した文維の声に、煜瑾も恥ずかしそうに笑う。それがあまりにも清純で、可憐で、目に止めた誰もが息を呑むほど高貴な美しさだった。

「それで…、君たちの部屋はどこ?」

 いつの間にか文維の隣にいた楚雷蒙が、小敏と煜瑾に訊ねた。

「16階の南東の角部屋です」

 自慢げに小敏が言うと、煜瑾はチラリと文維を見て頷いた。

「じゃあウィニーは、その真下の部屋だ」

 そう言って、5人分のチェックインを済ませた楚雷蒙が、文維のパスポート共にホテルのカードキーを渡した。

 今回の「研修会」の参加者は、一律の参加費を収めてはいるが、実行委員の航空券と宿泊代は、楚雷蒙の私費から補填されている。
 それでも、実行委員だけがスイートルームというのも、他の会員との差別化が大きいということで、スタンダートルームからワンランクだけ上のデラックスダブルルームが用意された。
 5部屋用意されたデラックスダブルルームの中でも、文維には煜瑾と同じ景色が楽しめる部屋を、楚雷蒙は与えたのだ。


 彼なりの、恋人たちへのロマンチックな贈り物だった。

「では、また後で」

 楚雷蒙がそういうと、それぞれは与えられた部屋へ向かった。





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