文維くんといっしょ ~秋の京都観光スペシャル~

 関西国際空港に到着し、入国審査までは、煜瑾は文維と、小敏は蘇雷蒙と一緒だった。
 ちゃっかりしている小敏は、他の実行委員のメンバーにも名刺を渡し、自分の著作の宣伝をした。

 荷物を受け取り、入国審査を済ませると、その先で文維と煜瑾は一旦お別れとなる。
 実行委員の5人は、チャーターした9人乗りリムジンタクシーで直接京都のホテルへ向かうのだ。

「じゃあ、煜瑾。また後で、ね」

 文維が優しく髪に触れると、煜瑾は少し寂しそうに微笑んだ。

「ホテルに着いたらすぐにお電話して下さいね」

 煜瑾がそうねだると、文維は頷いて約束して、実行委員たち5名は、西の端にあるスターバックス前にあるタクシー会社のカウンターへ向かった。

「じゃあ、ボクたちも行こうか」

 名残惜し気に見送っていた煜瑾だが、小敏に促され、素直に頷いた。

「鉄道の駅はフロアが上だから、エレベーターに乗っていこう」
「はい」

 小敏と煜瑾はJRの関西空港駅に向かった。
 改札フロアに着くと、慣れた様子で小敏は京都までの特急「はるか」のチケットを2枚買う。

「『新幹線』ですか?」

 日本の鉄道に詳しくない煜瑾だが、世界的に有名な日本の「新幹線」は知っていた。ついにその有名な電車に乗れるかとワクワクしている。

「残念だけど、『新幹線』じゃない。でも『はるか』もキレイで快適だよ。乗ってしまえば京都駅まですぐだ」

 無邪気な煜瑾は、期待に胸を膨らませて初めての日本の鉄道に足を踏み入れた。

 関空特急「はるか」は、1時間20分程度で関空から京都駅に到着する。
 小敏がさっそく駅のキヨスクで買った日本のお菓子を食べ散らかす横で、煜瑾は大人しく京都観光のサイトをタブレットで楽しんでいた。

 旅のスケジュールのほとんどは小敏が組んでくれた。煜瑾の希望も伝えてあるが、小敏に付いて行くだけで何の心配も無かった。





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