甜蜜的聖誕節 ~スウィート・クリスマス~

「ねえ、どうして煜瑾が、玄紀のご両親へのプレゼントまで買うの?」

 すでに何軒かのショップを回った後で、小敏が訊ねた。

「玄紀のご両親は、うちの亡くなった両親と親しくして下さっていたのです。それで、玄紀と私も子供の頃から知っているのです。クリスマスプレゼントは両親が健在だったころからの習慣で、毎年、兄の会社から送っていたのですが、今年からは私1人に任されました」

 屈託のない煜瑾の言葉に対し、当人であるはずの玄紀は、なんとなく面白く無さそうな顔をしている。
 玄紀は小敏が知る高校時代から、両親とあまり折り合いが良くないのだ。表立って玄紀が反抗的だとか、両親が何かを強要するとかいうことはないが、両親と息子、というより、家族それぞれが自分以外の人間のしていることが気に入らない、といった態度だった。

「今年は、玄紀のお母さまもクリスマスは上海で過ごされるのですよね」
「…ええ、まあ…」

 無邪気な煜瑾の問いに、不承不承な態度で玄紀が肯定する。これを煜瑾は、少し困った顔をして見つめていた。
 早くに両親を亡くした煜瑾には、両親が健在な玄紀はそれだけでも恵まれているのだから、両親との不和など贅沢な悩みだ、と考えている節がある。
 だが、もう少し世の中の事を知っている小敏は、他人とは違い、血のつながりのある親のことだからこそ、玄紀も複雑な想いを抱くのだ、ということを理解している。
 どちらも間違っているというわけではないのだが、小敏はどちらの味方も出来ないし、否定する立場にもないと思うのだ。

「あ!ねえ、ねえ、あそこのカフェを見てよ!」

 ふと気付いた小敏が指を差した先には、韓国系の可愛らしいカフェがあり、そこにはクリスマスをイメージしたケーキやパフェが並んでいる。

「クリスマス風のデザートですね」

 店の前には女の子のグループが1組だけ待っているだけだ。

「ねえ、ここでお茶していこうよ」

 意外にこの手の店には若い男性客もいて、イケメン3人組が男性グループだからと言って浮く心配はない。ただ、店内の女性客や店員はざわつくことであろう。

「私は、このクリスマスツリー風の抹茶パフェにします」

 外は寒いというのに、元はプロのサッカー選手で代謝が良いせいか、玄紀は冷たいパフェを食べたそうにしている。その姿を、小敏と煜瑾はクスクスと笑った。

6/25ページ
スキ