甜蜜的聖誕節 ~スウィート・クリスマス~

「文維も…」

 2人の寝室の奥にあるクローゼットに向かう文維に、煜瑾ははにかみながら声を掛けた。

「文維も、そう思ってくれていたのですね」

 すでに煜瑾の言わんとすることが分かっている文維は、笑いながらバスルームで手を洗い、口をゆすいだ。
 そうしてから、改めて煜瑾を抱き寄せる。

「今夜は、煜瑾との大切なデートですよ」

 大好きな人が、自分と同じ気持ちでいてくれたことが、煜瑾には嬉しい。

「煜瑾の白いセーターはステキですね。まるでカワイイ白うさぎさんのようですよ」
「うふふ」

 自分の選んだセーターを褒められ、煜瑾は恥じらいながらも大きく頷いた。

「知っていますか?ウサギは独りぼっちで寂しくなると死んでしまうのです」
「そんな…可哀想です…」

 優しい煜瑾が、弱い生き物に同情する姿を慈愛深く見つめてた文維が、フッと笑って煜瑾の額に口付けた。

「でも、この白いウサギさんは、私が独りぼっちにさせることはありませんよ」
「文維…」

 さすが過去に、大勢の男女を夢中にさせた男の、歯の浮くようなセリフだが、世慣れない煜瑾はうっとりしてしまう。
 その隙に文維はビジネス用のネクタイを外し、手早くカジュアルなジャケットに着替えた。

「さあ、2人きりでデートに出かけましょう」
「はい」

 すっかりご機嫌のよい煜瑾の手を繋ぎ、玄関では黒いロングのダウンコートを着せ、文維自身はグレイのミディ丈のダウンを着ると、平日の夜の短い時間のデートを楽しむために暖かい部屋を後にした。

 部屋を出て、一度建物を出る事にはなるが、同じ敷地内にショッピングモールがある。2人はそこに向かった。

「ねえ、文維。クリスマスツリーは鉢植えの小さな常緑樹を買って、クリスマスが終わったら、それを唐家のお庭に2人で植えませんか?」

 煜瑾のステキな申し出に文維は優しく微笑んで、一言「いいですね」と答えた。
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