甜蜜的聖誕節 ~スウィート・クリスマス~

 淮海路ワイハイ・ロードにあるハイブランドの路面店で、煜瑾は奥のソファに腰を掛け、店員が並べた商品を見比べていた。

「煜瑾さまが、当店へ足を運んで下さるのは、本当にお久しぶりですね」

 物腰の柔らかい、いかにも洗練されたハイブランドの店長らしい男性がそう言うと、煜瑾は出された香りのよいピーチティーを味わいながら、鷹揚に頷いた。

「本日は、煜瓔お兄さまへのプレゼントとか」
「そうなのです。お兄さまに喜んでいただけるようなものが欲しいのですけれど…。お兄さまは何でもお持ちだから…」

 そう言って苦笑いをしながら、煜瑾は紅茶の入ったカップとソーサーを、すぐ傍にある洒落たコーヒーテーブル上に置いた。

「なので、こうやって茅執事について来てもらったのです」

 いくら煜瑾が勧めてもソファに座ろうとはせず、執事の本分を守るように立っている茅執事が静かに頭を下げた。

「煜瑾坊ちゃま、こちらのパシュミナのマフラーはいかがですか?軽くて、暖かで、チャコールグレーなので、旦那さまのお召し物のどれにでも合うかと」
「ん~、品物は悪く無いけれど…。お兄さまは、マフラーはたくさんお持ちだったのではありませんか?」

 煜瑾の言う通りだと静かに頷き、茅執事は他の商品の品定めを始める。

「申し訳ありませんが、あの婦人用のオーバーを、そちらの女性店員さんに着てもらってもいいですか」

 そう言って煜瑾はショップで一番小柄な店員に、試着を頼んだ。

「婦人服でございますか?」

 怪訝そうな茅執事に、煜瑾は黙って笑った。
 そんな煜瑾に、茅執事はマヌカンの背丈を観察した。包家の夫人の身代わりにしては、少し背が低い。他に煜瑾がこれほど高価なプレゼントを贈る女性が、茅執事には思いつかなかった。

「ん…。では、そこのカシミアのセーターを見せて下さい」

 次に煜瑾が指定した物もまた、婦人用の物だった。パステルカラーのピンクのセーターには白いファーのボールが、パステルブルーのセーターにはブラウンのファーボールが、それぞれ胸元に5玉並んだ可愛らしくも上品で上質なものだ。
 それを手に取り、煜瑾は満足そうに笑った。
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