文維くんのこいびと

「煜瑾ちゃ~ん、ママですよ~」

 困り切った文維は、唯一子育ての相談に乗ってもらえそうな人物を、煜瑾と2人の自宅へ招いた。

「でも、一体どういうこと?子供服を買って持って来いなんて。しかも下着から一揃えだなんて」

 玄関まで、母である恭安楽を出迎えた文維だったが、母は息子のパートナーであり、自身のお気に入りである唐煜瑾の顔が早く見たいらしい。文維の疲弊した顔をロクに見ようともせずに、スタスタと奥のリビングを目指す。

「いるんでしょう?煜瑾ちゃん」

 誰も居ないリビングの真ん中で、恭安楽は不満そうに息子を振り返った。

「いるのは…いますが…」
「?」

 いつもは聡明で打てば響くようなところがある息子が、今朝はなんだか歯切れが悪いことに、恭安楽はようやく気付いた。

「文維?」

 母が息子に聞き質そうとした時だった。

「!…まあまあ!」

 声のトーンが上がり、蕩けるように母の表情が緩んだ。

「なんてカワイイ坊やなの?煜瑾ちゃんによく似て…。唐家の親戚の子でも預かっているの?」

 寝室からヒョコンと顔を出した小さな子に、相好を崩した恭安楽はいそいそと駆け寄る。

「どうしたの?こんな…煜瑾ちゃんのTシャツみたいなのを着せられて…。裾を引きずって、転んだりしたらどうするの?」

 ニコニコと嬉しそうに恭安楽は、カワイイ小さな男の子を抱き上げた。

「あ~ん、本当にカワイイ。煜瑾ちゃんにソックリで、まるで、もう、完璧な天使じゃないの~」

 可愛い物が大好きな、いつまでも乙女心を忘れない恭安楽は、小さな天使にもう夢中だ。

「おかあ…しゃま…」
「や~ん、カワイイ!わたくしのことを『おかあしゃま』だなんて!…え?」

 ある可能性に気付き、恭安楽はギョッとした

「ま、まさか…、この子…が?」
「おかあしゃま。こんな姿ですが…私は、煜瑾です…」

 とにかく小さな体を落とすまいとしっかり抱き締めたまま、文維の母は目を見張り、言葉を失い、表情だけで息子に事の次第を問いかけた。





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