紅蘭夫人エンディング
地面に横たわりながら、私は夢を見ていた。
遠い昔、私用で石蒜鎮を通りがかった袁参将軍は、近くの山に人食い虎が出ると聞いた。
困っている村人を放っておけず、袁参将軍は単身、その人食い虎が出ると言う山へ入っていく。
そこに居た虎は、自分も元は人間だったと言い、人を人とも思わぬ慢心した心が、いつしかその姿まで獣に変えたのだと言う。
人を喰らわずにおれない獣の性に苦しむ人虎は、袁参将軍に命乞いどころか、苦しみから解放されるよう、命を奪ってくれと頼み込んだ。
そして、袁参将軍はその望みをかなえ、以来、人虎は白虎となって将軍を戦場で守護するようになった。
白虎と言う神獣に守られ、戦場で勇猛に戦った袁参将軍は、その死後、その功績によって昇仙し、天界にての修行ののち、石蒜鎮の山月廟に祀られ神格化された。
そして、その後とある戦場で、16歳の初陣にして将軍を守るために命を落とした美少年・羽牧を、袁参将軍は見出す。
命がけの忠誠心とその若さと美貌を惜しんだ袁参将軍は、羽牧を神仙に召し上げ、将軍の麾下に置いた。
以来、羽牧は青衿君と名を与えられ、袁参将軍の右腕として、石蒜鎮の山月廟に身を置き、将軍を手伝いながら人助けと言う修行を続けている。
羽牧の母・包氏は、わずか16歳で戦場に向かった愛息が戦死したと知り、その驚きと悲しみに次男を早産し、その無理がたたって命を落とした。
羽牧を思う母の愛、そして母を知らずに生まれ育つ羽小敏への心残りから嘆き悲しんでいた包氏を憐れんだ西王母さまが、彼女を仙女として召し上げ、同じく神仙となった羽牧こと青衿君と再会を果たしたという。
そんな、どこまでが夢で、どこまでが彼らの昔語りなのか分からない幻想の中、私は遠くに、顧参緯の姿を見たような気がした。
「参緯さま…」
手を伸ばすが、届かない。
かの人は、遠くにいて微笑むばかりだ。
誰かが言った。
「涼国の王都を守る城隍は、王族の魂を喰らわねばならぬ」
そうだった。
順親王の時も、王族の死は王都でしか許されないのだ。そして、その魂は、王都の安寧を守るため、永遠に王都に封じられるのだと気かされた。
順親王も、顧参緯も、永遠に王都にいるのだ。
土地神である城隍の一部となって、王都各地の城隍廟に永遠に閉じ込められているのだ。
私はまだ幸せだ。
このたび袁参将軍に仙女として召し抱えられることとなり、陰の気で出来た幽鬼の体から解放される。
袁参将軍の山月廟が治める範囲内とは言え、これまでのように夜だけでなく、昼でも自由に出歩くことができる。
袁参将軍の戟に貫かれた体が、溶けるように消えて行くのが分かる。
私が袁参将軍に仕える仙女として相応しくないとなれば、このまま体も魂も塵となり消えてしまうだろう。
だが、私は心から反省し、袁参将軍に仕え、山月廟が治める地に住む子供たちと母親たちを守り、助ける存在となりたいと願っている。この願いは必ずや聞き遂げられ、私は昇仙するに違いない。
4人の公子たちの夏休みは、終わりを告げた。
秋になり、廷振王子は夢のお告げによって、「紅蘭亭」を「紅蘭廟」に作り直したという。
~紅蘭夫人ED 完結~
遠い昔、私用で石蒜鎮を通りがかった袁参将軍は、近くの山に人食い虎が出ると聞いた。
困っている村人を放っておけず、袁参将軍は単身、その人食い虎が出ると言う山へ入っていく。
そこに居た虎は、自分も元は人間だったと言い、人を人とも思わぬ慢心した心が、いつしかその姿まで獣に変えたのだと言う。
人を喰らわずにおれない獣の性に苦しむ人虎は、袁参将軍に命乞いどころか、苦しみから解放されるよう、命を奪ってくれと頼み込んだ。
そして、袁参将軍はその望みをかなえ、以来、人虎は白虎となって将軍を戦場で守護するようになった。
白虎と言う神獣に守られ、戦場で勇猛に戦った袁参将軍は、その死後、その功績によって昇仙し、天界にての修行ののち、石蒜鎮の山月廟に祀られ神格化された。
そして、その後とある戦場で、16歳の初陣にして将軍を守るために命を落とした美少年・羽牧を、袁参将軍は見出す。
命がけの忠誠心とその若さと美貌を惜しんだ袁参将軍は、羽牧を神仙に召し上げ、将軍の麾下に置いた。
以来、羽牧は青衿君と名を与えられ、袁参将軍の右腕として、石蒜鎮の山月廟に身を置き、将軍を手伝いながら人助けと言う修行を続けている。
羽牧の母・包氏は、わずか16歳で戦場に向かった愛息が戦死したと知り、その驚きと悲しみに次男を早産し、その無理がたたって命を落とした。
羽牧を思う母の愛、そして母を知らずに生まれ育つ羽小敏への心残りから嘆き悲しんでいた包氏を憐れんだ西王母さまが、彼女を仙女として召し上げ、同じく神仙となった羽牧こと青衿君と再会を果たしたという。
そんな、どこまでが夢で、どこまでが彼らの昔語りなのか分からない幻想の中、私は遠くに、顧参緯の姿を見たような気がした。
「参緯さま…」
手を伸ばすが、届かない。
かの人は、遠くにいて微笑むばかりだ。
誰かが言った。
「涼国の王都を守る城隍は、王族の魂を喰らわねばならぬ」
そうだった。
順親王の時も、王族の死は王都でしか許されないのだ。そして、その魂は、王都の安寧を守るため、永遠に王都に封じられるのだと気かされた。
順親王も、顧参緯も、永遠に王都にいるのだ。
土地神である城隍の一部となって、王都各地の城隍廟に永遠に閉じ込められているのだ。
私はまだ幸せだ。
このたび袁参将軍に仙女として召し抱えられることとなり、陰の気で出来た幽鬼の体から解放される。
袁参将軍の山月廟が治める範囲内とは言え、これまでのように夜だけでなく、昼でも自由に出歩くことができる。
袁参将軍の戟に貫かれた体が、溶けるように消えて行くのが分かる。
私が袁参将軍に仕える仙女として相応しくないとなれば、このまま体も魂も塵となり消えてしまうだろう。
だが、私は心から反省し、袁参将軍に仕え、山月廟が治める地に住む子供たちと母親たちを守り、助ける存在となりたいと願っている。この願いは必ずや聞き遂げられ、私は昇仙するに違いない。
4人の公子たちの夏休みは、終わりを告げた。
秋になり、廷振王子は夢のお告げによって、「紅蘭亭」を「紅蘭廟」に作り直したという。
~紅蘭夫人ED 完結~
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