紅蘭夫人エンディング
私の小物たちが小敏に追いつき、絡みついた。
「あれ?」
小敏は、異変に気付いたのか、急に足を止めた。
けれど、安承伯爵の公子と手を繋いでいたために、小敏の体がフラリと傾いだ。
「今だわ!」
私は、小敏の足首を掴んだ。
そのまま、小敏は地面に倒れてしまうが、これでもう私からは逃げられ無い。
私だけでなく、小物の幽鬼たちが集まって、小敏を掴んで逃すまいとする。
私の小敏の強い陽の気は、陰の気が強い者たちにとっては心地よく、力を与えられるものなのだ。
「文維兄上たちの足音が聞こえない…」
小敏が、恭王の孫や梁寧侯弟とはぐれてしまったことに気付いたようだ。
「文維兄上と煜瑾が来ないのは変だよ」
「ま、まさか!幽霊に捕まったのでは?」
不安そうな子供たちの傍に、我も我もと幽鬼の姿を留めない妖かしまでが、私の手の中にある小敏の周囲に集まって来る。
その気配を感じるのか、安承伯爵家の公子は震えながら、小敏の腕に掴まり、ギュッと身を寄せた。
小敏は駆けてきた暗闇を見詰め、玄紀はこの先に続く暗闇を見詰め、2人とも途方に暮れていた。その闇の中から、魔物が嬉しそうに見つめていることも知らず…。
「ほら、小敏。皆あなたが好きなのよ。あなたはイイ子だから皆に好かれているの」
私は、決して離すまいとギュッと小敏の足を握る手に力を込めた。
「皆に好かれ、愛され、今日からここで一緒に暮らしましょうね」
その時、小敏はその可愛い顔を歪めた。
「どうしよう…2人が捕まって『紅蘭亭』に連れて行かれてたら…。ボクのせいだ。ボクが幽霊を見たいなんて言ったから…」
そう言うと思い詰めた小敏は、膝を抱えて、シクシクと泣き出してしまった。
なんと心優しく責任感のある子供だろう。
私は小敏の陽の気の強さに加え、心の美しさに魅了されてしまう。
この魂の美しい子は、私の愛し児。決して放さない。
「イヤだなあ、泣かないで…。泣かないで下さい、小敏兄様…」
そう言って慰めようとする安承伯爵家の公子もまた、涙で一杯になっていた。
私が見守る中、2人は抱き合ったまま、泣いていたのだが、しばらくすると疲れが出たのかウトウトとし始めた。
「そうですよ。眠っておしまいなさい。深く、深く眠って、私の許へおいでなさい」
魔力による眠りに落ちれば、小敏とその友人は、私の物になる。もう、日の光の届く世界へは戻れなくなるはずだった。
「さあ、こちらへいらっしゃい」
私が掴んだ足首から這い上がり、小敏を抱きかかえようとした、その時だった。
「ひっ!」
私の腕に、白い鞭のようなものが巻き付いた。
強い力で引っ張られ、私は小敏から引き剥がされてしまう。
「無礼な!何者か!」
カッとなった私が腕に巻き付く者を確かめると、鞭だと思ったのは、金の目を持つ白く細い蛇だった。
私の怒りに、好戦的になった白蛇が鎌首をもたげた。
振り払おうとするが、ただの白蛇ではないらしく、今までまとわりついていた幽鬼や邪鬼などが溶けるように消えていき、私の力も弱まっていく。
「邪魔をするな!」
私は小敏の足を掴んでいた手を放し、白蛇を掴んで捨てようとした。だが、それは叶わなかった。
「きゃあ~!」
小敏を掴んでいた手を放したとたん、鞭のように絡んだ白蛇が強い力で引き上げられ、私は気が付くと西の庭園の上空まで飛ばされていた。
「あれ?」
小敏は、異変に気付いたのか、急に足を止めた。
けれど、安承伯爵の公子と手を繋いでいたために、小敏の体がフラリと傾いだ。
「今だわ!」
私は、小敏の足首を掴んだ。
そのまま、小敏は地面に倒れてしまうが、これでもう私からは逃げられ無い。
私だけでなく、小物の幽鬼たちが集まって、小敏を掴んで逃すまいとする。
私の小敏の強い陽の気は、陰の気が強い者たちにとっては心地よく、力を与えられるものなのだ。
「文維兄上たちの足音が聞こえない…」
小敏が、恭王の孫や梁寧侯弟とはぐれてしまったことに気付いたようだ。
「文維兄上と煜瑾が来ないのは変だよ」
「ま、まさか!幽霊に捕まったのでは?」
不安そうな子供たちの傍に、我も我もと幽鬼の姿を留めない妖かしまでが、私の手の中にある小敏の周囲に集まって来る。
その気配を感じるのか、安承伯爵家の公子は震えながら、小敏の腕に掴まり、ギュッと身を寄せた。
小敏は駆けてきた暗闇を見詰め、玄紀はこの先に続く暗闇を見詰め、2人とも途方に暮れていた。その闇の中から、魔物が嬉しそうに見つめていることも知らず…。
「ほら、小敏。皆あなたが好きなのよ。あなたはイイ子だから皆に好かれているの」
私は、決して離すまいとギュッと小敏の足を握る手に力を込めた。
「皆に好かれ、愛され、今日からここで一緒に暮らしましょうね」
その時、小敏はその可愛い顔を歪めた。
「どうしよう…2人が捕まって『紅蘭亭』に連れて行かれてたら…。ボクのせいだ。ボクが幽霊を見たいなんて言ったから…」
そう言うと思い詰めた小敏は、膝を抱えて、シクシクと泣き出してしまった。
なんと心優しく責任感のある子供だろう。
私は小敏の陽の気の強さに加え、心の美しさに魅了されてしまう。
この魂の美しい子は、私の愛し児。決して放さない。
「イヤだなあ、泣かないで…。泣かないで下さい、小敏兄様…」
そう言って慰めようとする安承伯爵家の公子もまた、涙で一杯になっていた。
私が見守る中、2人は抱き合ったまま、泣いていたのだが、しばらくすると疲れが出たのかウトウトとし始めた。
「そうですよ。眠っておしまいなさい。深く、深く眠って、私の許へおいでなさい」
魔力による眠りに落ちれば、小敏とその友人は、私の物になる。もう、日の光の届く世界へは戻れなくなるはずだった。
「さあ、こちらへいらっしゃい」
私が掴んだ足首から這い上がり、小敏を抱きかかえようとした、その時だった。
「ひっ!」
私の腕に、白い鞭のようなものが巻き付いた。
強い力で引っ張られ、私は小敏から引き剥がされてしまう。
「無礼な!何者か!」
カッとなった私が腕に巻き付く者を確かめると、鞭だと思ったのは、金の目を持つ白く細い蛇だった。
私の怒りに、好戦的になった白蛇が鎌首をもたげた。
振り払おうとするが、ただの白蛇ではないらしく、今までまとわりついていた幽鬼や邪鬼などが溶けるように消えていき、私の力も弱まっていく。
「邪魔をするな!」
私は小敏の足を掴んでいた手を放し、白蛇を掴んで捨てようとした。だが、それは叶わなかった。
「きゃあ~!」
小敏を掴んでいた手を放したとたん、鞭のように絡んだ白蛇が強い力で引き上げられ、私は気が付くと西の庭園の上空まで飛ばされていた。