这个夏天我们并肩走~この夏ボクらは並んで歩こう~

 文維に引き留められ、小敏は不満な顔をして振り返った。

「あ!あれを見て!」

 玄紀が指さした先は「紅蘭亭」だ。
 よく目を凝らして見ると、凝った造りの美しい飾り窓の端に違和感があった。

「え?」

 沈着冷静なはずの文維までもが、思わず声を上げた。

「あれって…」

 閉まっているはずの飾り窓から、真っ白…というより妙に青白く、細い腕が伸びていた。

「まさか…あの方がそんな…」

 誰にも聞こえないような声で文維が呟くが、誰より近くにいた煜瑾には聞こえてしまう。

「誰のことです、文維公子?」
「……」

 だが包文維はそれには答えず、煜瑾の手を引き、腕に抱えるように抱き寄せ、空いた手で小敏の腕を掴んだ。

「戻りましょう、小敏」
「でも、文維兄上…」

 恐い物見たさなのか、小敏が不気味な腕の方を振り返ると、先ほどとは違っていることに気付いた。

「見て、腕が手招きしてる。こっちへおいでって言ってるみたいだ」

 まるで魅入られたかのように、小敏はジッと腕から目を離さない。文維が気が付くと、玄紀までもが虚ろな目をして手招きをする腕を見詰めている。

「小敏?どうしたのです?あんな気味の悪い物なんて見てはいけない」

 文維の腕の中で守られていた煜瑾が、不安に駆られて声をかける。

 その時だった。

「そこにいるのは、誰だ~!」

「わ~っ」「ぎゃ~っ!」

 暗闇に低く、良く響く男の声がして、小敏と玄紀は声を上げると、文維にしがみ付いた。2人に囲まれ、ビクリと身を震わせた煜瑾をしっかり抱き留め、文維は眉根を寄せ、思わずポツリと零した。

「誰だ?」

 文維は四阿を見据えたが、あの白い腕は消えていた。
 そして、すぐに我に返ると震えあがる3人に叱咤する。

「すぐに逃げろ!今来た道を戻るんだ!」

 そう言って文維は小敏の背中を押した。その勢いで小敏は玄紀の手を引いて駆け出す。それから文維も煜瑾を抱き抱えたまま走り出した。

 振り向くことなく、少年たちは雑木林の細い一本道を駆け抜ける。

 だが、確かに来た時は一本道で、すぐに開けた馬場が見えるはずなのに、行けども行けども月光の射さない暗い道が続く。

「小敏!」

 文維がハッと気づくと、前を走っていたはずの小敏と玄紀の足音が消えていた。


 


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【終幕故事~エンディング~】

※文維&煜瑾ED 全4話 完結
※玄紀&小敏ED 全3話 完結
※恭王殿下ED 全3話 完結
※紅蘭夫人ED 全16話 完結

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