甜甜的回億 ~甘い記憶~

 しばらく唐家に滞在することになった恭安楽は、煜瑾がお昼寝している間に、身の回りの物を自宅に取りに戻ることになった。茅執事の計らいで、唐家の専属運転手である王さんがハンドルを握る、唐家の最高級のロールスロイスに乗って移動することができた。
小敏もまた、自宅に帰る前に、叔母に付き合って包家へと向かっていた。

「ねえ、叔母さま。早ければ明日の夜には文維が北京から帰ってくるよ。この状況、いつ、どうやって伝えるつもり?」

 煜瑾の恋人である包文維は、今はまだ北京にあって、この現状を知る由もなかった。何よりも煜瑾を大切に思う文維だからこそ、恋人が事故にあったことを知ったら、仕事も何もかもを投げうって、上海に戻ってくることだろう。そのことを心配して、誰も知らせなかったのだ。
 明日、上海に戻るなり愛する煜瑾の変わりようを知った時の、文維の動揺を想像して、小敏は心配だった。

「そうねえ。まあ、文維が何か言ってくるのは間違いないでしょうから、その時に考えましょう」
「叔母さまらしいけど、そんな行き当たりばったりでいいのかなあ?文維の混乱ぶりが目に浮かぶよ」

 文維の実母にも関わらず、恭安楽は、まるで他人事のように気楽に答えた。そんな、いつも楽観的な叔母が、小敏には頼もしく思えた。さすがは大好きな叔母さまだ、と小敏はにやりとした。

「ま、成り行きにまかせましょう。文維に会った瞬間に煜瑾ちゃんの記憶が戻るかもしれなくてよ」

 明るく、陽気にそう言って、鼻歌を歌いながら、恭安楽は自宅への車窓を楽しんだ。

「まさに叔母さまの生き方は、ケ・セラ・セラだね~」
「何とかなるって思っていたら、たいていは何とかなるものよ。明日のことなんて、分からないわ」

 包家のある高級公務員のための、セキュリティの良いマンションの前で王運転手は車を停めた。

「用意をしている間に、小敏を長風まで送っていただけない?小敏は、また明日、改めて唐家にいらっしゃい」

 叔母の指示に、小敏は不服そうに唇を尖らせる。だがそれは色白で童顔の小敏には可愛らしく見せる作戦で、この甘えた仕草で、ほとんどの人間は小敏の言いなりになるはずだった。

「え~、ボクも唐家にお泊りしたいのにな~」
「私だけでもあちらにはご迷惑よ。この上、あなたまでなんて、ダメです」
「煜瑾だって喜ぶと思うよ」

 最後の一押しとばかりに、親友の名を持ち出した小敏だったが、お得意のカワイイお顔も効果が無かった。

「明日来れば同じことでしょう?」

 あっさりとそう言って、恭安楽はいそいそと自宅に戻った。

 自宅では、数日分の着替えや身の回りの物を簡単にキャリーバッグに詰めて、ちょっとした旅行気分で恭安楽は楽しんでいた。





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