甜甜的回億 ~甘い記憶~
「大丈夫。私以外の鑑定員は『北京』の著名な先生方です。私の意見など形ばかりのものですよ」
「でも…」
そんな文維の楽観的な発言では、心から信じられない煜瑾の憂いは拭われない。
「せめて、上海でのお仕事なら…。お兄さまが助けて下さると思うのですが…」
上海だけでなく、全国でも有数の富豪であり、名門である唐家の次男である煜瑾だ。けれど日頃は唐家の権威に頼るようなことはしない。心が清らかで、純粋な煜瑾は、いつも慎ましく、控えめで、謙虚であり、実家を利用するようなことは考えないのだ。
けれど、愛する人のためであれば、経済界だけでなく広く影響力を持つ兄の唐煜瓔に頼ることも辞さない、一途な煜瑾だった。
そんな恋人に笑顔を取り戻したいと、文維は必要以上に明るく煜瑾に話しかけた。
「私は、北京で良かった、と思っているんです」
「え?どうしてですか?」
驚きを隠せない煜瑾は、ただでさえ大きな目を、さらに大きく見開いて文維を見つめた。その黒々とした深い色の瞳が、文維は好きだった。
「上海で、煜瑾に心配を掛けたり、煜瓔お兄さまにご迷惑をおかけしたりするよりは、北京であれば、お爺さまがいらっしゃいます」
「『お爺さま』?」
余裕を見せる文維に、煜瑾はきょとんとあどけない表情をした。
そんな可愛い恋人を労わるように、文維は煜瑾を抱き寄せて、いつも2人で横たわる大きなベッドの端に、並んで腰を下ろした。
「母の父、恭家のお祖父さまですよ」
文維の母、恭安楽の実家は北京の名家で知られている。清朝時代から続く家柄だが、これまで中央政府に在籍した公的な記録はない。長い歴史の中、常に裏側で大業をなしてきたフィクサーが「恭家」であった。
中でも恭安楽の父は、世界中を飛び回り、「私人」として外交を重ね、表には出ない成果を発揮してきたと言われている。その「力」は、決して公に知られることはないが、今でも現政権への影響力がある。
「何かあったとしても、北京にはお爺さまや、小敏のお父さまである、羽厳の伯父さまもいらっしゃいますからね。きっと力になって下さいますよ」
「羽家の伯父さま!」
煜瑾は大好きな親友の父であり、文維の伯父でもある羽厳の名にようやく明るい表情になった。軍の上層部に所属し、その人格も認められた有能な将軍である。
その名の通りに厳格で、冷淡な態度の軍人だが、1人息子の小敏は溺愛しており、有能な甥の文維も気に入っているため、2人には甘い顔を見せることも多い。
そんな息子の親友であり、甥の最愛の相手である唐煜瑾にもまた、初対面こそ冷ややかな態度であったものの、煜瑾の純真で素直な人柄を一目で見抜いた羽厳はすぐに心を許した。
険しい人柄の軍人であっても、煜瑾の天使の魂は優しく溶かしてしまうのだ。
今や、煜瑾は羽厳伯父のお気に入りであったし、煜瑾もまた羽厳を慕っていた。
「でも…」
そんな文維の楽観的な発言では、心から信じられない煜瑾の憂いは拭われない。
「せめて、上海でのお仕事なら…。お兄さまが助けて下さると思うのですが…」
上海だけでなく、全国でも有数の富豪であり、名門である唐家の次男である煜瑾だ。けれど日頃は唐家の権威に頼るようなことはしない。心が清らかで、純粋な煜瑾は、いつも慎ましく、控えめで、謙虚であり、実家を利用するようなことは考えないのだ。
けれど、愛する人のためであれば、経済界だけでなく広く影響力を持つ兄の唐煜瓔に頼ることも辞さない、一途な煜瑾だった。
そんな恋人に笑顔を取り戻したいと、文維は必要以上に明るく煜瑾に話しかけた。
「私は、北京で良かった、と思っているんです」
「え?どうしてですか?」
驚きを隠せない煜瑾は、ただでさえ大きな目を、さらに大きく見開いて文維を見つめた。その黒々とした深い色の瞳が、文維は好きだった。
「上海で、煜瑾に心配を掛けたり、煜瓔お兄さまにご迷惑をおかけしたりするよりは、北京であれば、お爺さまがいらっしゃいます」
「『お爺さま』?」
余裕を見せる文維に、煜瑾はきょとんとあどけない表情をした。
そんな可愛い恋人を労わるように、文維は煜瑾を抱き寄せて、いつも2人で横たわる大きなベッドの端に、並んで腰を下ろした。
「母の父、恭家のお祖父さまですよ」
文維の母、恭安楽の実家は北京の名家で知られている。清朝時代から続く家柄だが、これまで中央政府に在籍した公的な記録はない。長い歴史の中、常に裏側で大業をなしてきたフィクサーが「恭家」であった。
中でも恭安楽の父は、世界中を飛び回り、「私人」として外交を重ね、表には出ない成果を発揮してきたと言われている。その「力」は、決して公に知られることはないが、今でも現政権への影響力がある。
「何かあったとしても、北京にはお爺さまや、小敏のお父さまである、羽厳の伯父さまもいらっしゃいますからね。きっと力になって下さいますよ」
「羽家の伯父さま!」
煜瑾は大好きな親友の父であり、文維の伯父でもある羽厳の名にようやく明るい表情になった。軍の上層部に所属し、その人格も認められた有能な将軍である。
その名の通りに厳格で、冷淡な態度の軍人だが、1人息子の小敏は溺愛しており、有能な甥の文維も気に入っているため、2人には甘い顔を見せることも多い。
そんな息子の親友であり、甥の最愛の相手である唐煜瑾にもまた、初対面こそ冷ややかな態度であったものの、煜瑾の純真で素直な人柄を一目で見抜いた羽厳はすぐに心を許した。
険しい人柄の軍人であっても、煜瑾の天使の魂は優しく溶かしてしまうのだ。
今や、煜瑾は羽厳伯父のお気に入りであったし、煜瑾もまた羽厳を慕っていた。