甜甜的回億 ~甘い記憶~

 煜瑾を囲んで、恭安楽と羽小敏も、この上なく美味しい楊シェフの用意したランチをたっぷりと食べ、添えられていたスイーツも楽しんだ。

「煜瑾ちゃん。今日は疲れたでしょう?お腹もいっぱいになったことだし、少しお昼寝をしてはどうかしら?」

 恭安楽の提案に、茅執事や胡娘は大きく頷いて同意した。

「お昼寝ですか…?」

 ちょっと不満そうな煜瑾に、小敏が間に入った。

「眠くないなら、横になって動画とか観るのはどうかな?」

 にこやかで柔らかい笑みの小敏に、ついつい煜瑾も心を許してしまう。まさに「人タラシ」と呼ばれる小敏の本領発揮だ。

「眠くないですけど…、お兄さんと動画を観るなら…」
「やだな、煜瑾。『お兄さん』じゃなくて、小敏って呼んでよ。ボクら、仲良しなんだよ」

 小敏の言葉に、戸惑う煜瑾は、ちらりと「おかあさま」の方を見た。恭安楽は、それでいいとばかりに首を縦に振った。「おかあさま」の許しを得た煜瑾と小敏は、ベッドで並んでゴロンと転がり、スマホで動画を観始めた。

「ほら~この猫見てよ~」
「ふふふ。カワイイですね~」

 2人は仲良くクスクス笑いながら動画を楽しみ始めた。そのリラックスした様子に安心した胡娘は王運転手の手を借り、運んできたランチを片付け始め、恭安楽と茅執事は、今夜から明日にかけての予定について話し合っていた。

「失礼します」

 夕方近くになって、2人の女医が煜瑾の病室を訪れた。

「遅くなりました。唐煜瑾さんの担当をする郭です。専門は脳外科です。こちらは精神科の袁先生です」

 郭医師は50代後半と思える、グレイヘアの短髪で、バイタリティ溢れた一目で有能だと見えた。後ろの袁医師はもう少し若く、人の心に寄り添う仕事だけに、穏やかで、長い黒髪を後ろに束ねた知的な印象だった。

「搬送されて以降、あらゆる検査をしました。外科的、内科的に外傷。異常はありません」

 硬い表情でそう言った郭医師は、そのまま袁医師を振り返った。それを受けるように、袁医師は穏やかに薄く微笑んで口を開いた。

「唐煜瑾さん。病院の決まりなので、お名前をフルネームで、それと年齢を言ってもらえますか?」
「はい!」

 小敏とたっぷり遊んで、ご機嫌な煜瑾は、屈託ない笑顔で返事をした。

「唐、煜瑾、13歳。秀英中学1年生です!」

 元気で朗らかな煜瑾の答えに反して、周囲の人間は沈痛な表情になった。本当に煜瑾の記憶は13歳で止まっているのだと、いやが上にも確認させられたからだ。

「すでにご承知とは思いますが、このように記憶障害が出ています。これには適切な治療法がありませんので、長い入院の必要などはありませんが、今夜一晩、念のためにお泊りいただきます」

 痛々しい現実に、煜瑾以外は胸を痛めた。


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