甜甜的回億 ~甘い記憶~

 検査を終えて、病室に戻って来た煜瑾が車椅子に乗っていることに、恭安楽はショックを受けた。あまりに痛々しく、可哀そうでならない。

「まあ…、煜瑾ちゃん…」

 涙ぐんでいる恭安楽に、小敏は慌てて駆け寄ろうとした。だが、その時、小敏には思いもよらない光景を目の当たりにする。

「おかあさま!」

 煜瑾は、なんの迷いもなく、恭安楽を見つけて嬉しそうにそう叫んだ。

「おかあさま、お迎えに来てくださったのですね!煜瑾は、ちょっと不安だったんですよ」

 あまりに無邪気で愛くるしい煜瑾の笑顔に、恭安楽は心から安堵した。

「ああ、煜瑾ちゃん!私のことを覚えていてくれたのね」

 感激した恭安楽が、車椅子の上の煜瑾を抱きすくめた。そんな「母」の行動が大げさなように思えた煜瑾は、嬉しそうにほほ笑みながら答えた。

「煜瑾が、おかあさまを忘れるはずありません!」

 それでも、満足そうに母に抱かれ、煜瑾はいつになく幸せそうに見えた。

「ああ、良かったこと。とっても心配しましたよ」
「心配かけて、ごめんなさい、おかあさま」
「いいのよ、煜瑾ちゃん。怖かったでしょう?可哀そうに」

 車椅子を押してきた男性看護師と、病室で待っていた梁看護師が手を添えて煜瑾を立たせ、特別室のホテルのように寝心地の良いダブルベッドへと煜瑾を誘導した。

「ううん。怖くはなかったです。でも気が付いたら病院にいたので、びっくりしました。早くおかあさまに会いたかったです」

 にこやかな煜瑾に恭安楽だけでなく、茅執事もいつもの鉄面皮を崩し、口元に笑みが浮かんでいた。
 その間に、ペットボトルの飲み物を抱えた小敏が割り込んできた。

「煜瑾…?叔母さま?」

 ベッドの端に座り、茅執事に世話をされていた煜瑾が、慌てた様子の小敏を不思議そうに見た。

「あ、さっきの方ですね。おかあさまのお知り合いだったのですか?」

 屈託のない煜瑾の言葉に、恭安楽と羽小敏は驚きのあまり同時に叫んでいた。

「え?煜瑾ちゃん?小敏のことを覚えていないの?」
「え?叔母さまのこと覚えてるの?」

 2人の動揺した様子に、煜瑾のほうが驚いて、ただでさえ大きな黒い瞳を、ますます見開き、じっと小敏を見つめた。

「???以前にお会いしましたか?」

 正直な煜瑾の態度に、煜瑾の記憶障害をすっかり理解した小敏は、大好きな親友を驚かせることの無いように、何とかその場を繕い始めた。

「ええ~っと、ボクは、その~恭安楽叔母さまの親戚で、煜瑾の従兄だよ」

 いつもと変わらない、愛想の良い、人好きのする笑顔で小敏が言うと、煜瑾は明らかに戸惑っていた。

「そうなのですか⁉ ごめんなさい…覚えていなくて…」





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