甜甜的回億 ~甘い記憶~

「どうしたの、叔母さま?」

 電話を終えた、叔母である恭安楽の顔色が変わったことに、一緒に煜瑾とランチをするはずだった羽小敏が待ち切れずに声を掛けた。

「煜瑾に何かあったの?」
「…ええ。事故に遭ったとかで、今すぐに病院へ行きましょう」

 落ち着こうと努める恭安楽だが、顔色は青ざめている。自身も不安になる小敏だが、すぐに気を持ち直し、力強く声を掛けた。

「叔母さま。レストランはボクがキャンセルするから、急いでタクシーに乗ろう」

 浦東の五つ星ホテル内のレストランでのランチを予定していた小敏たちだったが、急いで待ち合わせのホテルのロビーを飛び出した。

 恭安楽が、唐家の茅執事から聞いた病院は、同じ浦東地区にあった。タクシーに乗れば、宝山地区の唐家から来る茅執事よりも先に到着する距離だ。

「煜瑾ちゃんは、いい子ですもの。きっと大丈夫!」

 恭安楽は、そんなふうに根拠のないことを呟いたが、なぜか羽小敏もまた同じ確信を持っていた。

「煜瑾は天使だからね。きっとなんともないよ」

 口ではそう言いながらも、2人は互いの手をしっかりと握り合い、励まし合っていた。

 茅執事が自身でハンドルを握り、浦東地区で一番新しい大規模総合医療センター「レイモンド医療センター」に到着すると、すでにホテルのロビーのような受付前に、恭安楽と羽小敏がいつになく深刻な表情で、唐家ご自慢の有能な執事を待っていた。

「包家の奥様、煜瑾坊ちゃまは?」

 日頃は礼節を重んじる執事とは思えぬほど、挨拶もそこそこに単刀直入に切り出した。

「それが…」

 困ったように、恭安楽と羽小敏は顔を見合わせ、残念な口調で茅執事に告げた。

「私たちは家族では無いから、面会できないって言われたの」
「そんな…」

 煜瑾がどれほど恭安楽を「母」と慕っているかよく承知している茅執事は眉を寄せた。

「あなたは唐家の人間だと証明できるのでしょう?早くなんとかしてちょうだい」

 動揺を隠そうともせず、恭安楽は茅執事に命じた。
 言われるまでもなく、茅執事は受付に向かい、身分証や運転免許証で宝山区にある唐家に住み込みで働いていることを証明した。

「分かりました。すぐに担当者をお呼びします。警察の方もお待ちなので一緒になると思います」
「構いません。できるだけ早くに、煜瑾ぼ…いえ、煜瑾さまのご様体が分かる方とお話させていただきたい」

 深刻な茅執事の様子に同情したわけではなかろうが、受付の女性はテキパキといくつか電話をかけた。

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