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異国を走れば厄介に当たる


「……誤解?が解けたようで何よりだな。次はこれからどうするか、だが」
 二人のやりとりを黙って見ていたオリヴェールが、今後のことを考えようと先を促す。
 少なからずギャングとイザコザを起こしてしまった手前、堂々と行動するのも憚られた。イグナシオの情報が流れ、移動中に狙われないとも限らない。最初はオリヴェールがイグナシオを住んでいる集落まで護衛を兼ねて送っていこうと提案したが、それはトーマスによって止められる。
「……オーリ、君は自覚があるのかないのか知れないが……めちゃくちゃ目立つ容姿をしているからな? 高身長で色白な上に美形の金髪碧眼のまんま王子様みたいなのが南米の砂漠に立つなんて不自然極まりないし、とにかく違和感がすごい。探している人間はここですよって教えているようなものだぞ?」
 つまりすごく目立つのでそれはやめたほうがいい、とトーマスは畳みかける。なんだといきなり失礼な、という気持ちを込め、無言でトーマスに向けて鋭い視線を突き刺していると、その後にイグナシオが続く。
「……トーマスサンの言う通りだと思いマス。オリヴェールサン、きっと太陽に勝てないデス。日焼けどころか、火傷デス」
 イグナシオは本気で心配しているらしく、無下に睨みつけるようなことはできず、オリヴェールは項垂れながら、心配してくれてありがとうよ、と小さく呟くに留めた。
 つまり、イグナシオは一人で集落まで帰ることになる。二人の心配をよそに、一人で出てこれたから一人で帰れます、と胸を張った。
「それに、山に入れば問題なくなりマス。追いかけられても、相手が動けないはずデスから。逃げ切れマスよ」
 標高が上がることで、追手が高山病の症状で減速するだろう、とイグナシオは説明する。と、同時にもしオリヴェールが同行していたら、逆にピンチになるかもしれないことを指摘した。オリヴェールは悔しいかな、その通りだと理解する。


 イグナシオがアメリカを離れるため、再びトーマスの運転で空港へやってきた。
 空港で三人は固い握手を交わし、また会おうと約束をする。

 飛び立つ飛行機に手を振りながら、思い出したようにトーマスが呟いた。

「そういえば、イグナシオへ取材した内容についてなんだけど」
「あ」

 オリヴェールは本題について全く取材できていなかったことをここで思い出した。
 結局のところ、イグナシオが本当に当時のスペイン侵攻を逃げ延びた少数民族の末裔なのか、なにもわからないままだった。
 また会おうと約束したからその時でいいだろう、とオリヴェールは苦し紛れに答え、トーマスは飛行機を見送ったまま空を見つめていた。
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