生まれ変わったら猫でした。
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私は今日も塀の上でリラックスしていた。いつものルーティン、昨日のようにたまに珍しいことも起きるから、猫生も案外悪くない。
ひんやりとした夜の風は気持ちが良くて欠伸が出た。ふわぁ、と口を開けて欠伸をし、前を見れば、そこには無惨が立っていた。
「(!?!?)」
え!? この人何しに来たの!?
なぜ今日もここに来たのだろうか? 何か探し物でもあるのか。
昨日今日と無惨と会うと、なんだかレア度が低くなったような気がした。鬼殺隊がいくら探しても見つからないくらいの、星7キャラなのに……。
無惨は昨日と同じように、こちらに手を伸ばしてきた。
しかし昨日と違うのは、その手が若干震えているところと、爪が尖っていないところだ。
何がしたいんだろう……、と思いつつ此方も昨日と同じ行動で対応した。
ぺろ、と舌が無惨の手に触れた瞬間、無惨がとんでもないスピードで私から離れた。あまりに速すぎて、動きを見切ることが得意な猫の目でも姿を追えなかった。そしてそのまま、無惨はばたりと地面に倒れ伏した。
「(……????)」
いや何が起こった? なんで鬼の始祖が地に伏してるんだ。
もしかすると自分の唾液には、かの鬼の始祖を殺せるくらいの毒性があるのかもしれない、と割と本気で考えた。(そんなことは流石に有り得ないだろうが)私は鬼を滅ぼすためのキーパーソン……ならぬキーニャーソンなのだろうか。
暫くして、むくりと無惨が起き上がった。毒の分解が完了したのか?
起き上がった無惨は自らの服についた塵を払っている。これからどう動くのか、と様子を伺っていると、無惨は此方に歩み寄ってきた。
こ、これ本気で殺される? 毒をお見舞いしちゃったから……?
私がぷるぷると恐怖に震えていれば、無惨は私の脇に手を差し、私を持ち上げ腕の中に抱えた。ふわり、と肌心地の良い布の質感と微かに甘い香りがした。
「鳴女」
琵琶の音が鳴り響いた。
え? と思った頃にはもう遅かった。景色が淡く月明かりが差す夜から、沢山の部屋……? が蔓延るへんてこな場所へと変化していた。橙色の光が其処彼処から漏れ出している。その様子はさながら、前世で行ったことのある提灯が沢山あったお祭りの風景のようだ。
ここは──無限城?
まさかの鬼の根城へ連行。うーん、普通にまずくない?
不安がりつつも、前世でも見たことのないようなその不思議な光景に目が釘付けになった。こちらから見て天井の場所に部屋があったり、襖があったりと、どういう構造なのか中々興味をそそられる。
連れてきた張本人である無惨に目を向ければ、大きな手のひらで頭を撫でてきた。鬼である筈のその手に、思わず安心感が溢れた。そしてその顔は心なしかどこか自慢げだ。
「気に入ったか? 今日から此処がお前の帰るべき場所だ」
喋った!!! と初めて聞く声に感動した。何気に会ってから一回も喋らなかったからだ。(集落の皆は話しかけてくれていたが、普通は猫に一人で話しかける人は少ないことに後から気づいた)それと、ナチュラルに聞き流しそうになったけど、“帰るべき場所”? ここが? 本当ですか!!
「そして、お前の名前はなまえだ」
なんと、これはびっくり。前世の名前と同じだ。偶然なのだろうか。
立ったままの無惨は未だ私の頭を撫でている。……かの残虐で傲慢な鬼の首魁の手だとはとても思えなかった。
これからは彼が一応の主人であるため、呼び方も改めよう。今まで呼び捨てしてすみませんでした無惨さま。
吾輩は猫である、名前はなまえ。
この度野良猫から家猫に昇格しました。
3(定住生活に進化!)