生まれ変わったら猫でした。
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と、昔はそんな風に難しく考えていた時もあったなあ。
今の私はというと、宣言通り完全に猫ライフを満喫している。
お母さん(猫)は私に一通りの事を教えた後、どこかへと消えてしまった。えっこれだけ? 放任主義なの? と思いつつも今まで一人で頑張ってきた。
しかしぶっちゃけた話をすると、お母さんの教えてくれたことは半分も実践していない。狩りも教わったが、今の私は専ら人間に食べ物を貰い生きている。集落の人々は親切で、食べ物をくれるし、私に構ってもくれる。……たまに子供達が尻尾を掴んだり突っ込んでくるのは少し苦手だけど。それでも、やっぱり人と関わるのは楽しかった。
***
月が空に上がり、涼しい夜風が体を撫でる。
今日も私は集落の人々に食べ物を貰い、寝床へと歩みを進めていた。
しかし最近は、少し寄り道をしていた。寝床への通り道にある空き家、その塀の上で夜風に当たりながらぼーっとするのが最近のマイブームなのだ。
身軽に塀の上へと上がり、前足を腹の下にしまい込み香箱座りをした。
涼しい夜風が毛を撫でる、ああ今日もぐっすり眠れそうだ。もっと風を感じたい、とゆっくり目を閉じて視界を閉ざした。
そうして過ごしていて、ふと目を開けると、目の前に見知らぬ人間の男が立っていた。
まるでホラーゲームのような展開に私はとても驚き、思わず飛び跳ねそうになったが、なんとか持ち堪えた。男は何も言わずそこに立っている。
背後にキュウリを置かれた猫ってこんな感じなのかな……。
男はこの時代ではあまり見慣れない洋装で、集落でもこのような人間は見たことがなかった。きっと他所から来た人なのだろう。男は黒くうねった髪を持ち、瞳は紅梅色で、その瞳孔は──まるで猫のように鋭かった。
既視感のあるそれに、私は久々に前世を思い出した。
え、あれって無惨じゃない?
その男は、前世で見たアニメのキャラクターに酷似していた。だとすると、もしかしてここって過去というよりは──。
「…………」
その男はこちらをじっと見つめた後、徐に手を伸ばしてきた。その爪は青く、これまた猫のように鋭かった。
え、えっ!? 何する気なの!? 死ぬのはいやだ、私まだ猫ライフ満喫したい──!
いきなり訪れた死の予感に気が動転した私は、目の前に迫った手をぺろりと舐めるという、意味不明の行動をしてしまった。
すると、目の前の男──無惨はぴしりと固まり、動きを止めた。
お、これ許された? と期待を持って目の前の無惨を見遣ると、ばっちり目が合った。
これは……逸らしたら負けだ!! と謎の対抗心を燃やしつつ、無惨を見つめていれば、彼はかざしていた手を下ろした。
そしてそのまま、琵琶の音と共に目の前から消えた。消えたのだ、それはもう跡形もなく。
……うわ〜〜! 今の鳴女ちゃんの血鬼術!? なんかこの世界の片鱗見れて嬉しい……! 鬼側だけど!
アニメのキャラクターに会うという奇跡を起こした(無惨に見逃された方がよっぽど奇跡といえるが)私はテンションが爆上がり、尻尾がふるふると揺れているのが自分でも分かった。
とはいえ、もう鬼である彼らと会うことは二度とないだろう。鬼と人の争いは猫には関係ないし。でもできることなら、死ぬ前に鬼殺隊にも会ってみたいなぁ、なんて。
さあ、もう今日は寝よう。とてもいい夢が見れそうだ。
2(一夜の奇跡)