世界一優しい私の主治医

サナの呼吸がようやく安定し、深い眠りについたのを見届けてから、ククイはリビングへと戻ってきた。
デスクの上のノートパソコンを開くと、画面にはナリヤ校長からの着信待機画面が表示されていた。ククイが通信を繋ぐと、画面の向こうのナリヤは、すでにいつものアロハシャツではなく、真剣な面持ちで彼を待っていた。

『ククイ博士、サナちゃんの様子はどうだい?』

「……すみません、オーキド校長。今は薬が効いて眠りにつきました。熱はかなり高いですが、呼吸は落ち着いています。授業を急に中断してしまい、本当に申し訳ありませんでした」

ククイが頭を下げると、ナリヤは小さく首を振った。

『謝る必要などどこにもないさ。むしろ、今回リモート授業を試験的に試してみて、私も本当の意味で理解できたよ。サナちゃんの病状が、いかに一刻の猶予も許さず、いつでも油断ならないものかということをね』

ナリヤの言葉に、ククイはわずかに視線を落とした。普段は快活なククイだが、サナの命の脆さに直面するたび、一人の守護者としての重圧がその肩にのしかかる。

『だからこそ、ククイ博士。君に改めて伝えておきたくてね。……これからも、スクールのことは一切心配しなくていい』

ナリヤは画面越しに、真っ直ぐな、そして包容力に満ちた眼差しをククイに向けた。

『これまでも、サナちゃんの看病で君が学校に来られない時は、私が代わりに君のクラスの教壇に立ってきた。そして、それはこれからも同じだ。アローラの若き命を育む場を守るのが私の役目なら、今、目の前で命と戦っているサナちゃんを支える君を助けるのも、私の大切な役目なんだよ』

「校長……」

『君は優秀な研究者であり、素晴らしい教師だ。だが、今はサナちゃんにとって、唯一無二の主治医であり、家族なんだ。だから、学校のことは私や他の教師たちに、遠慮せずすべて頼りなさい。君が一人で背負い込む必要はどこにもないんだルカリオ(ルカリオ)』

最後に少しだけいつもの調子を交えて微笑んだナリヤの優しさに、ククイの胸の奥の強張りが、すっと解けていくようだった。

「……ありがとうございます、オーキド校長。お言葉に甘えて、しっかり頼らせてもらいます」

『うむ、それでいい。サナちゃんがまた少しでも元気になって、画面越しにでもあの笑顔を見せてくれる日を、私もスクールのみんなも、いつでも楽しみに待っているからね』

通信が切れた後、ククイは静かになったリビングで、そっと息を吐いた。
独りではない。アローラの仲間たちが、自分とサナを支えてくれている。
ククイは再びロフトへの梯子を見上げ、大切な少女の眠る部屋へと、静かに足を向けた。
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